本物を届けて、奇跡を信じる――ナボカルコスメティックスが挑む再成長の物語

株式会社ナボカルコスメティックス 副社長 松岡 功一氏

1970年代に発生した「化粧品公害」を原点に創業した株式会社ナボカルコスメティックス。創業以来、肌トラブルに悩む人々を支える化粧品づくりを続けてきました。一方で、市場環境の変化や経営上の課題により厳しい時期も経験しています。そんな中、会社の立て直しに入った副社長の松岡功一氏は、第2創業を掲げ、新たな挑戦を進めています。今回は、ナボカルコスメティックスの歩みや強み、再成長への取り組み、そして今後の展望について伺いました。 

肌トラブルに向き合い続けてきた化粧品メーカー 

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

当社は創業以来、エステサロン向けを中心に化粧品を提供してきました。創業の背景には、1970年代に起きた化粧品公害があります。当時、化粧品による健康被害が社会問題となり、「本当に安全な化粧品とは何か」を追求するために会社が設立されました。

小規模な企業としてスタートし、エステサロンと共に歩む形で成長してきました。一時期は現在の10倍ほどの売上規模があった時代もありましたが、エステ業界そのものが変化を繰り返しながら縮小傾向にある中で、当社もその影響を受けています。

――他社にはない強みはどのような点にありますか。

最大の特徴は、肌トラブルを抱える方々に選ばれ続けていることです。市場には次々と新しい商品が登場しますが、肌が弱いお客様となると、なかなか他に選択肢はありません。当社がいまだ倒産せずにすんでいるのは、「肌にやさしい」化粧品という強みがあるからです。ただ、それだけでは業績の復活につながりません。そこで注目したのが、生命の仕組み、つまり皮膚科学に立脚した新製品の開発であったり、業界が軽視してきた科学的な商品の紹介手法です。

たとえば、当社のロングセラーとなっている日焼け止め(UVブロック)。地味な商品です。SPFの値が25~30くらいで、目新しさはありません。そのSPFとは、肌の赤みが表れてくるまでの目安を示します。多くの日焼け止め製品が、肌から流れ落ちてしまうことを考えると、この値だけで製品を評価できないのです。当社の日焼け止めが海藻由来成分で肌に「へばりつく」点は、SPFに何も反映されません。だからこそ、一度当社の製品を使ったユーザーは離れない。この点を科学的に正しく示すことが、会社立て直しのポイントになりそうです。

生命の仕組みを理解した化粧品づくり

――商品開発で大切にしている考え方を教えてください。

私たちは、生命の仕組みを理解し、それを活かすことが化粧品づくりの基本だと考えています。

例えば保湿についても、単純に外側から水分を与えるという発想ではありません。そもそも人間の体の水分はその99%が腎臓経由で再利用されています。その水を外に逃さない。そのための油の膜こそが重要になります。本当に大切なスキンケアとは、油の膜を適切に保つことだったのです。「与える」のではなく「守る」。化粧品の役割とは、人体のもともと備わっている機能を補完すべきなのです。

私たちが直近で開発に成功した製品は、まさに肌のバリア機能の「油膜」を補完するものでした。肌の仕組みを理解し、自分の肌と向き合うことこそ、本当の意味でのスキンケアです。

技術の価値を信じて進める再建と挑戦

――現在取り組まれている挑戦について教えてください。

私は約3年前に経営再建のために当社グループへ参画しました。その一社が当社(ナボカル)です。その中で見えてきたこと。「経営は問題だらけだが、処方そのものは優れている」という結論です。創業者が信じてきた技術の土台は、今日的な観点から見ても正しいものでした。

そこで、その技術を世の中へ正しく伝える仕掛けづくりに着手しました。その一つが「ナボカル90」というYouTubeコンテンツです。90秒という短い動画で、皮膚科学や化粧品に関する知識をわかりやすく発信しています。ほぼゼロから、わずか半年で、累計73万回再生を超え、想像していた以上に多くの方が見てくださっています。広告費はわずかしか使っていません。

また、神戸大学の白井康仁教授とも連携しました。ヒト試験のエビデンスがある成分を、最初に投入していただけるのが当社です。それは教授からの期待の表れだと受け止めています。

その研究成果とは、「光老化」の対策成分です。市場では「日焼け止め」が一般的になっていますが、それでも紫外線は肌に届くわけです。この成分の重要性は無視できません。しかも肌老化の8割は「光老化」、つまり紫外線だと言われています。教授の知見は、今後、化粧品業界でも注目を集めるはずです。

人が戻ってくる会社を目指して

――組織づくりで大切にしていることは何でしょうか。

私が入社した当初、社員のモチベーションは決して高い状態にありませんでした。そこで各社員に尋ねました。「こんな難破船にいつまでいるのか」、と。実際にそれで退職した社員もいましたが、彼はその後「もう一度一緒にやりたい」と戻ってきました。

それはおそらく、何かが変わると感じたからでしょう。

現在はまだ業績が改善されたわけではありません。しかし、社外の方の反応が変わるのを見て、社員たちが会社の可能性を実感し始めています。「潰れそうな会社には見えない」「スタートアップ企業のような勢いを感じる」と言われたこともあります。それらの言葉が社員たちの自信につながり始めているのかもしれません。

これからも譲れない思い

――今後の展望と、最後に読者へメッセージをお願いします。

私たちはOEMの案件をひとつずつ捨てて、自分たちの技術や商品を前面に出した展開へと振り切っています。安く作る。手を抜いて作る。そんな仕事に嫌気を覚えたからです。せっかく長年培ってきた技術があるのだから、自分たちの名前で本物の商品を届けたいですよね。

今後も経営を続けるとしたら、絶対に手放せない言葉があります。

それは「奇跡を信じる」です。

厳しい状況にある会社だからこそ、技術を信じ、覚悟を決めて、挑戦を続ける。正しい知識と正しい技術を世の中へ届け、本当の価値としていく。その積み重ねが未来を変えていく、奇跡を起こすと信じています。

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