3Dスキャンと観光資源を掛け合わせ、地域に新たな選択肢を
合同会社あっぷしゅにっと 共同代表 寺井 尚之氏・石本 悠樹氏
合同会社あっぷしゅにっとは、「3Dスキャン」「観光資源活用」「多文化共生」を事業の柱に掲げ、地域の魅力発信と地方創生に取り組む企業です。3Dスキャンの技術と、海外で培った観光分野の知見を掛け合わせ、外国人旅行者にも伝わりやすい地域資源の活用や情報発信を目指しています。本記事では、代表の寺井尚之氏に、事業を立ち上げた背景や同社ならではの強み、今後の展望などについて伺いました。
3つの領域を掛け合わせた独自の事業
――現在の事業内容について教えてください。
当社では、「3Dスキャン」「観光資源活用」「多文化共生」の3領域を事業の柱としています。それぞれの分野に特化した企業は存在しますが、3つを融合したサービスを一貫して提供している点が当社ならではの強みです。
近年は3Dスキャンと観光資源を組み合わせた取り組みも増えていますが、多文化共生の視点まで取り入れ、一体的に事業を展開している企業は多くないと考えています。
――事業を始めた背景をお聞かせください。
私は約12年間ドイツで暮らし、寿司職人としてキャリアを積んできました。日本で半年ほど経験を積んだのちにドイツへ渡り、ヘッドシェフや観光地のレストラン、ホテルなどで経験を重ねました。
さまざまな国籍や価値観を持つ人々と働くなかで、仕事は単に収入を得るためのものではなく、自分がやりたいことや得意なことを活かせる場であるべきだと考えるようになりました。
一方、日本では、人材や産業、教育機会が都市部へ集中し、地方の活力が失われつつあります。その結果、地方で働き続けたい人であっても選択肢が限られ、都市部への流出が進んでいます。こうした構造的な課題を解決し、地域に新たな価値を生み出すことで地方創生につなげたいと考え、事業を立ち上げました。
海外経験と技術を地域の力に変える
――なぜ3Dスキャンと観光資源を選ばれたのでしょうか。
共同代表の石本はエンジニアで、3Dスキャンの技術を持っています。私自身もWebデザインに携わった経験があり、デジタル分野の基礎知識がありました。そこで、石本の技術と、私がドイツで培った観光分野の経験を組み合わせ、事業化することにしました。
地方には魅力的な観光資源が多くありますが、外国人旅行者向けの案内や受け入れ体制が十分でない地域もあります。3Dスキャンと海外で得た視点を活かし、地域の魅力を分かりやすく伝えることで、地方創生につなげていきたいと考えています。
――石本氏とは、どのように出会われたのですか。
私がドイツで生活していたころ、メタバースと呼ばれるバーチャル空間のSNSで出会いました。
交流を重ねるなかで、日本の働き方や社会課題について意見を交わすようになりました。石本も同じ問題意識を持っていたことから、「一緒に事業を立ち上げよう」という話になり、それぞれの専門性を活かした現在の事業につながっています。
決めつけず、理解しようとする姿勢を大切に
――経営判断で大切にしていることは何でしょうか。
目先の利益だけで判断せず、その背景にある構造や長期的な影響まで考えることを大切にしています。経済合理性や市場性は重要ですが、それだけを基準に意思決定することには違和感があります。
ドイツやヨーロッパでの生活を通じて、日本の社会や働き方を外側から見る機会を得ました。その経験をもとに、なぜ現在の仕組みが生まれたのか、歴史的な背景も踏まえて判断しています。
また、石本とも意見を交わしながら、表面的な出来事だけでなく、その根本にある課題や構造を捉えることも重視しています。
――コミュニケーションで意識していることを教えてください。
相手を決めつけず、まずは理解しようとする姿勢を大切にしています。すべてを理解することよりも、相手を理解しようと努めることが重要だと考えています。
海外では、ドイツ語も英語も日本語も通じない人と働く機会がありました。その経験から、コミュニケーションは言葉だけで成り立つものではないと実感しています。表情や視線、声のトーン、ボディランゲージなども含め、伝える努力と相手の意図を汲み取る姿勢を常に意識しています。
教育を通じて子どもたちの選択肢を広げたい
――今後、挑戦したいことについてお聞かせください。
将来的には、教育や福祉の分野にも科学技術や新しい働き方の考え方を取り入れ、事業領域を広げていきたいです。なかでも、子どもたちの将来の選択肢を増やす取り組みに関心を持っています。
知らないことは、将来の選択肢を狭める要因になります。多様な仕事や価値観に触れる機会を提供し、「こういう世界もある」と知ってもらうことで、子どもたちが前向きに将来を描ける環境づくりに貢献したいと考えています。
――現在の課題は何でしょうか。
現在の課題は、「3Dスキャン×観光資源活用×多文化共生」という事業内容をわかりやすく伝えることです。新しい領域を組み合わせた事業のため、内容をご理解いただくまでに複数回の対話が必要になるケースも少なくありません。
一方で、事業の方向性をご理解いただければ、その後の提案は円滑に進むと感じています。地域の観光協会をはじめとする関係者と真摯に向き合いながらていねいに対話を積み重ね、着実に信頼関係と事業機会を広げていきたいと考えています。
当たり前を疑い、目指す未来につながる選択を
――仕事以外の時間はどのように過ごされていますか。
時間があるときは、ジョギングをしています。現在は30分・5kmほどを走ることが多いですが、以前はマラソンにも挑戦し、ドイツにいたころからロードバイクにも取り組んできました。
運動は以前から続けている趣味ですが、気持ちを切り替える大切な時間にもなっています。また、仕事とは異なることに取り組むことで視野が広がり、経営においても物事を多角的に捉える視点につながっていると感じています。
――最後に、経営を続けるうえで譲れないことを教えてください。
大切にしているのは、自分たちが目指す方向に沿った選択をすることです。すべてを単純に「やりたい」「やりたくない」で分けるのではなく、その先に実現したい未来があるかどうかを基準に判断しています。
また、誰かにとっての当たり前が、すべての人に共通するとは限りません。人それぞれの強みや違いを尊重し、自分に合った選択ができる社会をつくっていきたいと考えています。