人の可能性をデータで解き放つ――“予兆”を捉え、安全とパフォーマンスを支える仕組みづくり

株式会社enstem 代表取締役 山本 寛大氏

株式会社enstemは、スマートウォッチから取得した生体データを活用し、ノンデスクワーカー向けの業界特化型サービスを提供する企業です。心拍データから眠気や熱中症などの予兆を捉え、安全管理や健康維持を支援しています。その根底にあるのは、「人のポテンシャルをパフォーマンスに変える」という山本氏の想いでした。本記事では、その想いや経営における価値観、今後の挑戦について伺いました。

人の状態を可視化し、安全を支える事業づくり

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

当社では、スマートウォッチを活用し、従業員やドライバーの生体データを取得・分析するサービスを提供しています。

主に活用しているのは心拍データで、そこから眠気やヒヤリハット、熱中症などの予兆を検知できる仕組みです。異常が起きてから対応するのではなく、その前段階のサインを捉え、本人が適切な行動を取れる状態をつくることがコンセプトになります。

人の状態を理解し、より良いパフォーマンスにつなげるための支援を行っています。

――創業に至った経緯を教えてください。

元々30歳までには起業しようと決めていました。実際には27歳で起業したので、少し早まった形です。

きっかけは、大学時代の先輩から広告運用の支援を依頼されたことでした。個人では受けられない規模だったため、会社を設立したのが入口です。

当初は海外でスポーツ事業を展開する予定でしたが、コロナ禍によって事業継続が難しくなりました。そこで「身体が資本となる仕事」に着目し、さまざまな業界を調べる中で運送業と出会ったんです。

2024年問題や高齢化などの課題を知り、この業界に特化して取り組むことを決めました。結果として、リスクが高く社会的な需要も大きい領域だったことが、現在の事業につながっています。

――他社にはない強みや導入後の反響を教えてください。

最大の特徴は、事故が起きた後ではなく、その前の兆候を検知できる点です。

ドライブレコーダーなどは、問題が発生した後の記録や分析が中心になります。一方で当社は、事故や体調不良につながる予兆を把握し、未然防止につなげています。

導入企業からは、無事故期間の最長記録を更新したという声や、熱中症を防ぎながら夏を乗り越えられたという評価をいただいています。管理者が指示を出さなくても、アラートを受けた本人が自主的に休憩を取るようになった点も大きな変化でした。

「人のポテンシャルをパフォーマンスに変える」という使命

――社名やミッションに込めた想いを教えてください。

enstemという社名は、「縁」と「木の幹」を組み合わせた言葉です。ご縁という幹を少しずつ太くしていきたいという想いを込めています。

ミッションとして掲げているのは、「人のポテンシャルをパフォーマンスに変える」ということです。

これまで活用されてこなかった心拍データなどを通じて人の状態を理解し、それをより良い方向へ変えていく。その仕組みをデザインすることが、私たちの役割だと考えています。

――経営判断をする上で大切にしている価値観は何でしょうか?

当社の行動指針のひとつに「いい奴たれ」という言葉があります。

従業員、お客様、代理店、ユーザーなど、さまざまなステークホルダーに対して、自分たちは胸を張って良いことをしていると言えるか。その視点を大切にしています。

もちろん「良い」の定義は立場によって変わります。それでも、その判断軸から外れることはやらないという姿勢は変わりません。

――山本氏ご自身はどのような人でありたいと考えていますか?

人と同じ時間を共有することには意味があると思っています。

仕事で価値を返すことはもちろんですが、人として付き合える関係になれたらさらに良い。相手の出身地や家族構成を知り、必要であれば自分の持つ人脈や情報をつなぐこともあります。

そうした積み重ねによって、社会が少しでも良い方向に進めば嬉しいですね。

「いい奴たれ」が組織をつくる

――社内コミュニケーションで大切にしていることを教えてください。

「ありがとう」と「ごめん」を素直に伝えることです。

最終的な責任は経営者が負うものだと思っています。だからこそ、感謝や謝罪を率先して言える人でありたいと考えています。子どもに伝えるような当たり前のことですが、組織においても非常に重要なことだと信じています。

――一緒に働きたいと感じる人物像を教えてください。

スキルよりも愛がある人と働きたいと思っています。

頭の良さは後から身につく部分もありますが、最後までやり切れるかどうかは感情の力が大きい。好きだからこそ深く向き合えるし、困難も乗り越えられるのだと思います。

反対に、小手先だけで取り組んでいる姿勢は時間とともに見えてきます。熱量を持って向き合える人と、一緒に挑戦したいですね。

――人を見る上で重視している視点はありますか?

多角的な視点を持てるかどうかです。

自分の立場だけではなく、「会社としてはどうか」「事業としてはどうか」と視点を切り替えられる人は強いと思います。相手の立場からどう見えるのか、違う角度から見たらどう映るのか。そうした想像力を持てる人には、尊敬の気持ちを抱きます。

組織づくりと海外展開への挑戦

――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

まずは組織をより強くしていくことです。個人の力には限界があるので、組織として動ける体制をつくっていかなければなりません。

もうひとつの挑戦は海外展開です。創業当初から海外で事業をしたいという想いがあり、その取り組みも動き始めています。

組織が強くなれば国内事業もさらに盤石になりますし、海外での実績は会社の幹をより太くしてくれると考えています。

――現在感じている課題や改善したいポイントはありますか?

PDCAをより細かく回していくことです。

定量的な視点を持ちながら改善を積み重ねる。その精度はまだ高められると感じています。役職や役割が変わっても、本質は同じです。どこまでストイックに向き合えるかが、今後の成長を左右すると思っています。

「今を楽しむ」ことが経営を支える

――経営において譲れない価値観を教えてください。

「今を楽しむこと」です。

良いことも悪いこともありますが、すべて経験として楽しめている限り、悪い人生にはならないと思っています。経営そのものを楽しむ姿勢は、これからも変わらないでしょう。

――困難な状況でも挑戦を楽しめる理由を教えてください。

笑顔でいることだと思います。

問題が起きても、最終的には解決しなければなりません。それならネガティブに向き合うより、前向きに取り組んだ方がいい。明るく取り組んでいると、周囲も自然と前向きになってくれます。そうした空気づくりも大切な仕事のひとつだと感じています。

――休日のリフレッシュ方法を教えてください。

トライアスロンに取り組んでいるので、走ったり、子どもと遊んだり、遠くへ出かけたりすることが多いですね。

頭ばかり使っていると偏ってしまうので、身体を動かしてバランスを取るようにしています。経営者の仕事は判断することです。判断できる状態を維持するためにも、健康は欠かせないものだと思っています。

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