教育現場を知る元教師だからできる支援――家庭と学校をつなぐ伴走型サポート
未来を育てる教育成長ラボ 代表 近藤 健氏
未来を育てる教育成長ラボは、いじめや不登校をはじめとする教育課題に対し、教員や保護者、学校管理者、子どもたちに寄り添う伴走型支援を行っています。23年間教育現場に立ち続けてきた近藤氏は、学校と家庭をつなぐ架け橋として活動を開始しました。本記事では、事業への想いや今後の展望について伺いました。
目次
23年間の教育現場経験を活かした伴走型支援
――現在の事業内容や支援の対象を教えてください。
学校や家庭、地域の教育課題に寄り添う伴走支援を行っています。
主な支援対象は、保護者の方や学校の先生、学校管理者の方です。いじめや不登校、学校生活の悩みなど、それぞれの立場や状況に応じた支援を心がけています。
また、保護者や学校関係者だけでなく、小中学生のお子さん自身も相談の対象です。悩みを抱えた子どもたちが安心して声を上げられる場所をつくりたいという想いから、子どもたちと直接つながれる環境づくりにも取り組んでいます。
――他にはない強みや特徴はどのような点ですか?
私の強みは、小学校の現場で23年間働いてきた経験です。
現在はスクールカウンセラーやフリースクールなど、不登校やいじめの支援に関わる方が増えています。一方で、学校の内部事情や先生方の立場、現場でできることとできないことを理解した上で支援に入れる人は多くありません。
教員として現場を経験してきたからこそ、保護者の不安と学校側の事情、その両方を理解できます。家庭と学校をつなぐ架け橋になれることが私の強みです。
――子どもや保護者の悩みは、昔と比べてどう変わりましたか?
変わらない部分もありますが、今の子どもたちは以前より難しい時代を生きていると感じています。
タブレット学習やAIの活用など、保護者世代が経験していない学びが増えたことで、家庭でのサポートが難しくなっています。その結果、学習につまずく子どもも少なくありません。
また、自己表現が苦手なままストレスを抱え込む子どもも増えており、以前は一部で見られた問題行動の低年齢化も感じています。
正解のない教育課題にどう向き合うか
――学校に行きづらい子どもに、大人はどう向き合うべきでしょうか?
「学校へ行けば何とかなる」と考えて無理に登校を促してしまうケースがあります。実際、それでうまくいくお子さんもいますが、全員に当てはまるわけではありません。
無理に連れて行こうとした結果、家で癇癪を起こしたり、親子関係が悪化したりすることもあります。不登校の対応には一つの正解がなく、その子の状態や気持ちによって必要な関わり方は変わります。
大切なのは、「困った時はいつでも話していいよ」という安心できる環境をつくることです。大人が待つ姿勢を持つことで、子ども自身が前を向こうとする力が少しずつ育っていくのだと思います。
――支援の際に大切にしている考え方を教えてください。
私は一方的に「こうすればいいですよ」と伝える支援はしたくありません。
まずは相談に来てくださった方が、今どんなことを感じていて、何に困っていて、どんな未来を望んでいるのかを丁寧に聞くことを大切にしています。
私は話すことが得意な方ではありませんが、学生時代から「人の話を聞くことだけはできるかもしれない」と思っていました。だからこそ、相談者の声を最後まで聞き取ることは、自分が最も大切にしている姿勢です。
――これまでの支援の中で印象に残っているエピソードはありますか?
先日、障がいの影響でトイレの悩みを抱える中学2年生の男の子から相談を受けました。思春期ならではの不安を抱えていたため、私はメッセージを重ねながら「同じ悩みを持つ人はいること」や「男の子向けの商品もあること」を伝えました。
その後、その子は実際に商品を購入し、トイレトレーニングにも前向きに取り組むようになりました。小さな安心感が次の一歩につながった出来事として印象に残っています。
子どもの未来を支える“大人の在り方”を問い続ける
――理念やビジョンについて教えてください。
私は、困った時に助け合える大人の社会をつくりたいと考えています。
保護者の方は悩みを抱え込んでしまうことが少なくありません。しかし、これからの時代は学校や地域のネットワークを活かしながら支え合っていくことが必要だと思っています。
そして、その姿を子どもたちに見せることも大切です。大人同士が助け合う姿を見ることで、子どもたちも「困った時は頼っていいんだ」と学べるはずです。
そうした社会をつくることが、未来の子どもたちのためになると信じています。
――23年間勤めた教職を離れ、起業を決意した理由を教えてください。
私は子どもが好きで教師になり、23年間教育現場で子どもたちと向き合ってきました。その一方で、悩みを抱える保護者や先生の多さにも直面し、子どもたちの未来を考えるなら、大人を支えることも必要だと強く感じるようになったんです。
困っている方は一つの地域だけでなく全国にいます。オンラインを活用しながら、時には直接会いに行き、一人でも多くの方に寄り添いたい。その想いが起業を決意した大きな理由でした。
また、社会人として折り返し地点を迎えた今だからこそ、新しい挑戦を通じて「大人の在り方」を追求していきたいと考えています。
誠実な対話と学び続ける姿勢を経営の軸に
――相談者とのコミュニケーションで意識していることはありますか?
まずは相手の話を聞き切ることです。
何に困っているのか、どんな気持ちでいるのか、どんな未来を望んでいるのか。その部分を理解しないままアドバイスをしても、本当の意味で寄り添うことはできません。
相談者一人ひとりの波長に合わせながら、一緒に答えを探していく姿勢を大切にしています。
――今後、一緒に働く仲間に求めることを教えてください。
同じ志を持っていることが何より大切だと思っています。
もちろん、自分にない強みを持っている方と働くことは刺激になります。ただ、事業として進んでいく以上、目指す方向が違ってしまうと支援の軸もぶれてしまいます。
相手を思いやり、相手の立場を考えられる方と一緒に歩んでいきたいと思っています。
支援を必要とする人へ、一人でも多く声を届けるために
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
今後はオンラインを活用しながら、支援の輪を広げていきたいと考えています。
一方で、直接会って相談に乗る機会も増やしたいと考えています。自治体や行政とも連携しながら、必要な方へ支援を届けていきたいです。
伴走を続けることで悩みは小さくなっていく。そのことを一人でも多くの方に伝えていきたいと思っています。
――現在の課題と今後の取り組みを教えてください。
私が今一番難しいと感じているのは、本当に支援を必要としている方へ存在を知ってもらうことです。
「子どもが学校に行きたがらない」と検索できる方は、自ら行動を起こせています。一方で、何をすればいいか分からず、悩みを抱え込んでしまう方も少なくありません。
そのため最近は、チラシのポスティングや地域活動にも取り組んでいます。市民活動センターへ登録し、相談会やセミナーの案内を行うなど、まずは「こんな相談先がある」と知ってもらうための活動を進めています。