カンガルー肉を日本の食文化へ――バセル株式会社が挑む“代替不可能”な存在づくり
バセル株式会社 代表取締役 長友 信氏
バセル株式会社は、カンガルーの革と肉を専門に取り扱う企業です。主軸としているのは、カンガルー肉、いわゆるルーミートの普及。日本国内ではまだ一般的とはいえない食材を、いかに日本の食文化へ組み込んでいくのか。代表取締役の長友信氏に、事業への想いや経営の考え方、今後の展望について伺いました。
代替不可能な存在を目指して
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当社は、カンガルーの革と肉を専門に取り扱っています。日本国内で、この二つを組み合わせて事業展開している企業は、他にあまりないと考えています。
ホームページにはダチョウやワニの輸入販売についても記載していますが、それらはメイン事業ではありません。あくまで事業の主軸はカンガルーであり、特にカンガルー肉を日本の食文化に組み込んでいくことを目標にしています。
――御社の理念には、どのような想いが込められていますか。
会社の理念として大切にしているのは、「必要不可欠」であること、そして「代替が効かないもの」であることです。
世の中には多くのものがあふれていますが、本当に必要なものは限られています。不要なものを削ぎ落とし、消費者や社会、そして従業員にとって、なくてはならない存在になることを目指しています。何でも広げるのではなく、本当に価値のあるものに集中する姿勢を大切にしています。
カンガルー肉の可能性に惹かれて
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
私は創業者ではなく、2代目として1992年に代表に就任しました。もともとは知人の会社を手伝う形で関わったことが始まりです。
その中でカンガルー肉という食材に出会い、既存の家畜にはない機能性や栄養価に興味を持ちました。これは世の中に広めるべき食材だと感じたことが、事業に本格的に注力するきっかけになりました。
――経営判断の軸になっている価値観は何でしょうか。
大事にしているのは、シンプルさとミニマリズムです。無駄なことには手を付けず、必要なものに的を絞る。事業も生活も、できるだけシンプルにすることが重要だと考えています。
経営では、あれもこれもと広げるほど本質が見えにくくなります。だからこそ、何をやらないかを決めることも大切です。必要なものに集中し、目標に直結することへ力を注ぐ。その考え方が、事業を続けるうえでの基本になっています。
少人数体制で重要業務に集中する
――組織運営で意識していることを教えてください。
以前は5〜6名の体制で運営していましたが、コロナ禍を経て、さらに事業をスリム化しました。現在はパートスタッフ2名体制で運営しています。
少人数だからこそ、効率化を徹底することが重要です。パートスタッフにも責任ある仕事を任せることで、私は売上や利益の向上、カンガルー肉の認知活動といった重要業務に集中できる環境をつくっています。
――今後、一緒に働く人に求める姿勢はありますか。
これからパートナーや後継者となる人には、指示を待つのではなく、自分で考えて提案できる姿勢を求めています。
言われたことだけをこなすのではなく、「こうした方がいいのではないか」と考え、共に議論できる人が理想です。少人数の組織だからこそ、一人ひとりが能動的に動くことが大切だと思っています。
認知拡大の鍵は、飲食店での体験
――今後の展望や、現在向き合っている課題を教えてください。
カンガルー肉を日本の食文化に組み込むための流通の仕組みは、すでに構築されています。現在の最大の課題は、消費者にその存在を知ってもらうことです。
つまり、認知拡大が最も重要なテーマです。今回の取材も、その活動の一環だと考えています。まずは多くの方に、カンガルー肉という食材があることを知っていただきたいです。
――認知拡大に向けて、どのような取り組みを進めていますか。
飲食業界や卸業者と連携しながら、営業活動を進めています。イベントへの出展や、シェフ、オーナーとのコラボレーションを通じて、カンガルー肉を体験してもらう機会を増やしています。
新しい食材が広がるときには、まずレストランでの食事体験が起点になると考えています。パクチーのように、最初は飲食店で味を知り、そこから家庭での消費につながっていく流れがあります。カンガルー肉も同じように、まずは飲食店でおいしさを体験してもらい、その後に家庭での購入へつなげていきたいです。
カンガルー肉はミディアムレアでの調理が推奨されており、牛肉と同じような扱いが可能です。シェフがそれぞれの工夫でメニューを開発することで、消費者が味を知るきっかけが生まれると考えています。
目標に向けて生活もシンプルに整える
――お休みの日など、リフレッシュの仕方を教えてください。
週末はビーチバレーをしています。運動は仕事と並行して続けているリフレッシュの手段です。
私の価値観は、目標を定めたら、すべてのエネルギーと知識をそこに集約させるというものです。約40年間、シンプルで目標に直結するライフスタイルを実践してきました。日常生活でも無駄を省くため、海岸から車で3分の場所に住むなど、自分の目標を達成しやすい環境を整えています。
こうした生き方が、若い世代にとって少しでも参考になるのであれば、とても嬉しく思います。