100年の歴史を礎に、次の時代へ――芝浦工業大学が描く未来への挑戦

学校法人芝浦工業大学 理事長 鈴見 健夫氏

2027年に創立100周年を迎える学校法人芝浦工業大学。長い歴史の中で「社会に学び、社会に貢献する技術者の育成」という建学の精神を大切にしながら、時代の変化に応じた教育改革を進めてきました。2020年に理事長に就任した鈴見健夫氏は、民間企業で培った経験も生かし、大学のブランド力向上や国際化、多様性の推進など、次の100年を見据えた取り組みを力強く進めています。今回は、学校法人の歩みや教育理念、今後の展望についてお話を伺いました。

100年の歴史と「社会に学び、社会に貢献する技術者」の育成

――学校法人の歩みや教育理念について教えてください。

本学は2027年に創立100周年を迎えます。1927年に有元史郎先生が東京高等工商学校として創設したことが始まりで、当初は建築工学科・土木工学科・商業学科の3学科からスタートしました。その後、商業学科に代わって電気工学科を加え、東京高等工学校として発展してきました。戦後の大学改革を経て新制大学となり、現在まで歩みを続けています。

創立以来、一貫して大切にしているのが「社会に学び、社会に貢献する技術者の育成」という建学の精神です。実学主義教育を徹底し、教職員全員が共通の理念を持って教育に取り組んでいます。

――芝浦工業大学ならではの強みをどのようにお考えですか。

本学は理工系大学として、日本トップレベルを目指していかなければならないと考えています。そして国内だけでなく、国際的にも高く評価される大学になることが重要です。世界中から優秀な学生に集まってもらえる大学を目指し、そのための環境づくりを進めています。

スーパーグローバル大学として培った取り組みも、その大きな土台です。現在は東南アジアにサテライトオフィスを設置し、優秀な留学生の受け入れを進めています。また、日本語ができなくても英語で学び、英語で卒業できるコースを整備し、在学中には日本語も学べる環境を用意しています。卒業後は日本企業への就職支援も行い、日本と世界をつなぐ人材育成を目指しています。

民間企業で培った経験を大学経営へ生かす

――これまでのご経験は現在の大学経営にどのように生かされていますか。

私は卒業後、65歳まで民間企業で仕事をしてきました。大企業とその関連会社の両方を経験し、規模の異なる組織運営を学べたことは非常に大きな財産です。

また、卒業生組織である校友会活動にも長年携わってきました。関西での活動をきっかけに大学との関わりが深まり、その後は副会長を10年、会長を10年務めました。全国の卒業生と交流を重ねてきたことで、卒業生が大学に何を期待しているのか、どのような意見を持っているのかを直接知ることができています。その声は現在の大学運営にも大いに役立っています。

――経営判断の軸となる価値観を教えてください。

以前勤めていた会社では、30年以上前からダイバーシティやインテグリティなどを重視する企業文化が根付いていました。その考え方は今も私の根幹にあります。

大学でも多様性の推進は非常に重要だと考えています。女子学生を増やすこと、地方出身の学生を増やすこと、そして海外から優秀な留学生を迎えること。この3つは、多様性を実現するための重要な取り組みです。奨学金制度も活用しながら、多様な学生が集う大学づくりを進めています。

組織づくりで大切にしている「謙虚さ」と「感謝」

――組織運営で特に大切にされていることは何でしょうか。

私がいつも教職員に伝えているのは、「謙虚さ」と「感謝の気持ち」を持って仕事をしてほしいということです。この姿勢は組織づくりの基本だと思っています。

また、本学では教職協働だけでなく、学生も加えた「教職学協働」という考え方を進めています。教員・職員・学生が一体となって大学をより良くしていくことが大切です。

理事会の構成にも特徴があります。教員、職員、外部有識者がそれぞれ3分の1ずつを占める体制としており、職員の発言力も重視しています。多様な立場の意見を取り入れながら大学運営を行うことが重要だと考えています。

――採用や人材育成ではどのようなことを重視されていますか。

一緒に働きたいと思うのは、明るく責任感のある人です。ただ、短い面接だけですべてを見極めることは難しいので、入職後の教育が非常に重要になります。

そのため、人事制度も見直しながら、入職した職員が将来管理職として活躍できるよう育成していく意識で取り組んでいます。

次の100年へ向けた挑戦

――これからの大学づくりについてどのような展望をお持ちですか。

理工系分野で学ぶ女性をさらに増やしたいと考えています。女性の視点は技術開発や商品開発にも欠かせません。本学では全学生に対する女子学生比率30%以上を目指しており、地方出身学生の比率についても25%程度まで増やすことを目標にしています。

また、日本の大学は国際化の面でまだ課題があると感じています。その中で本学は、より国際的な大学へ発展していかなければなりません。

海外から優秀な留学生を受け入れ、その学生が将来、日本で活躍したり母国で教育者となったりすることで、本学とのつながりが次の世代へ広がっていくことを期待しています。10年後、20年後を見据え、今から種をまき続けることが大切だと思っています。

さらに、大学のブランド力向上にも取り組んでいます。その一環として箱根駅伝本戦出場を目指した強化も進めています。100周年という節目の年までに本大会出場を果たせるよう、大学全体で力を合わせて取り組んでいるところです。

誠実さを忘れず、新しい景色に出会う時間

――最後に、お休みの日の過ごし方を教えてください。

以前はゴルフを楽しんでいましたが、現在は腕をけがしているため少し休んでいます。

今の楽しみは旅行です。一人でまだ訪れたことのない場所へ出かけることもありますし、出身地である北海道には夏によく足を運びます。冬には温泉へ出かけることもありますし、昔から通っている居酒屋でゆっくり過ごす時間も大切なリフレッシュになっています。

経営判断で最も大切にしているのは、誠実に仕事へ向き合うことです。そして、日本の発展にはものづくりが欠かせません。その思いを胸に、社会に貢献できる技術者を育成し、芝浦工業大学の新しい100年を築いていきたいと考えています。

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