AIで運送業界の適正運賃を支える――現場経験から生まれた挑戦
合同会社Ai.SoLink 代表 澤 宏一郎氏
運送業界では、ドライバー不足や長時間労働、適正運賃の確保など、多くの課題が存在しています。合同会社Ai.SoLinkは、そうした課題を現場経験とAI技術を組み合わせて解決しようと取り組んでいる会社です。大型トラックドライバーとして働いてきた経験を持つ澤宏一郎氏は、業界を内側から知る立場だからこそ見えてきた課題に向き合い、運送会社の利益向上につながるサービスを開発しました。今回は、事業への想いや創業の経緯、今後の展望について伺いました。
目次
現場を知るからこそ生まれた、適正運賃を実現するサービス
――現在の事業内容と特徴について教えてください。
当社は運送会社に特化し、運賃を適正な価格へ引き上げるためのSaaSサービスを提供しています。
運送会社は荷主から運送依頼を受けますが、その運賃が本当に適正なのかを判断することは簡単ではありません。そこで、車両の固定費や人件費、経費などを入力すると、その運送に必要な原価を算出し、適正な運賃の目安が分かる仕組みを開発しました。根拠となる資料も作成できるため、運賃交渉の際にも客観的な資料として活用できます。
現在は業界全体でも「運賃を上げていく必要がある」という流れが強まっており、多くの運送会社から必要とされるサービスになっています。
――他社にはない強みはどこにありますか。
私も共同創業者も現場出身です。私は大型トラックのドライバーとして働いていた経験がありますし、共同創業者も運送業界をよく理解しています。
現場で実際に働いてきたからこそ、机上の理論ではなく、本当に必要なものをサービスへ落とし込めることが大きな強みです。業界の課題や現場の感覚を理解した上で開発できる会社は多くないと思っています。
「業界を変えたい」という想いから始まった起業
――起業を決意したきっかけを教えてください。
もともと会社を立ち上げたいという気持ちはありました。21歳の頃には個人事業主として軽貨物事業を始め、10~15人ほどのドライバーを抱えていた時期もあります。ただ、人の管理がうまくできず、その事業は思うようにはいきませんでした。
その経験も踏まえながら、自分の強みを改めて考えたとき、運送業界の知識とITの知識を組み合わせられる人は多くないと感じました。まったく違う業界で起業することは考えておらず、自分が最も価値を発揮できる分野で挑戦しようと決めたのです。
前職では共同創業者と一緒に社内でIT部署を立ち上げようと働きかけたこともありました。AIの活用が必要になると感じて提案しましたが、当時は理解を得られませんでした。休日だけで開発を進めるという選択肢もありましたが、それでは成長のスピードが遅くなると思い、退職して起業する道を選びました。
運送業界で働く人を守りたい
――サービスを開発しようと思った背景にはどのような想いがあったのでしょうか。
会社員だった頃、「友人を紹介してほしい」と言われることがよくありました。でも、当時の私はこの仕事を友人に勧めたいとは思えませんでした。
1日16時間近く働くこともあり、積み込み作業も大変です。私自身もヘルニアになった経験があります。その一方で、今は深刻な人手不足が続いています。
だからこそ、まずは運送会社の運賃が適正になり、利益が増え、ドライバーの給与が上がることが大切だと考えています。働く環境が改善されれば、この業界で働きたいと思う人も増えていくはずです。それが私が実現したいことです。
以前はバックオフィス向けのサービスも検討しましたが、運送会社が本当に求めているのは経費削減よりも売上向上だと気付きました。その試行錯誤を経て、現在のサービスへたどり着きました。
売上を伸ばし、その先の業界課題を解決していく
――組織運営で大切にしていることを教えてください。
現在は共同代表と営業担当を含めた少人数の体制ですが、これから人を増やしていく予定です。
採用で最も重視しているのは、人として信頼できるかどうかです。どれだけ技術が高くても、人間性に問題がある人は採用しないと決めています。個人で仕事をするのであれば問題ありませんが、組織ではチームワークが何より重要だからです。
社内でも、お互いを尊重する姿勢を大切にしています。意見を言うこと自体は歓迎していますが、相手へのリスペクトを持って伝えることを意識しています。相手にも考えや背景があることを理解し、その上でコミュニケーションを取ることが良い組織づくりにつながると考えています。
――今後の展望について教えてください。
まずは会社として売上を伸ばし、利益をしっかり残して人を増やしていきたいと考えています。
会社が成長していけば、今はまだ見えていない運送業界の課題もさらに見えてくるはずです。そのときには、新たな課題を解決するサービスも生み出していきたいと思っています。
会社を大きくすること自体が目的ではなく、事業を通じて業界全体の課題を少しずつ解決していきたい。その想いを持って挑戦を続けていきます。
筋トレと読書で心を整え、挑戦を続ける
――最後に、休日をどのように過ごしているか教えてください。
休日は筋トレをしたり、小説を読んだりして過ごしています。特に東野圭吾さんの作品が好きで、読書は気持ちを切り替える大切な時間です。
筋トレも週に2〜3回ほど続けており、体を動かすことで頭の中も整理できます。そうした時間を持つことで気持ちをリフレッシュし、新しい挑戦にも前向きな気持ちで向き合えています。
運送業界には、まだ多くの課題があります。だからこそ現場を知る立場として、本当に必要とされるサービスをこれからも生み出し、AIを活用しながら業界全体の未来につながる挑戦を続けていきたいと思っています。