寄り添うデザインで価値をかたちに――変化する時代のなかで挑戦を続けるフリーランスデザイナー
samdesign 刀根 修氏
samdesignの刀根修氏は、グラフィックデザインを中心に、20年以上フリーランスとして活動するデザイナーです。紙媒体を主軸に数多くの制作に携わる一方で、時代の変化に合わせてWebデザインにも挑戦を続けています。本記事では、お客様に深く寄り添いながら、単なる制作にとどまらない提案を大切にする刀根氏に、仕事への想いや今後の展望などについて詳しく伺いました。
目次
寄り添う姿勢が生み出す、“本当に伝わるデザイン”
――現在の事業内容について教えてください。
現在は福岡市を拠点に、フリーランスのグラフィックデザイナーとして活動しています。独立から約20年、チラシやポスター、パンフレット、会社案内など紙媒体の制作を中心に、上場企業のIR資料や統合報告書など、企業の情報発信を支えるデザインにも携わってきました。お客様の意図をていねいに汲み取り、より伝わるデザインを提案することを心がけています。
一方で、業界では企業の情報発信が紙からデジタルへと移行し、印刷需要も大きく変化しています。こうした流れを受け、近年はバナー制作やWebデザインにも取り組み、対応領域を広げてきました。紙媒体で培った経験を活かしながら、媒体を問わず最適な表現を提案できるよう、日々新しい分野にも挑戦しています。
――仕事をするうえで大切にしていることは何ですか。
私が最も大切にしているのは、お客様に寄り添いながら、目的を共有して一緒にものづくりを進めることです。ご要望をかたちにするだけではなく、その先にある課題や目的まで考え、よりよい成果につながるデザインを提案したいと考えています。
制作では、ご依頼内容をそのままかたちにするだけでなく、「こうした見せ方もあります」と別の視点から提案することを心がけています。複数の選択肢を示しながら方向性をすり合わせることで、納得感のあるデザインへと仕上げていくのが私のスタイルであり、そうした姿勢を評価してくださるお客様と、長くお付き合いできることが理想です。
自分らしい働き方を求めて選んだ、独立という道
――フリーランスとして独立された経緯を教えてください。
独立を決意した最大の理由は、自分が納得できる環境で仕事に向き合いたいと考えたからです。もともと独立を目指していたわけではありませんが、以前勤めていたデザイン会社で世代交代があり、新しい経営体制の中で会社の方向性やコミュニケーションに違和感を覚えるようになりました。
社内の意思疎通が十分に図れない状況が続くなか、「このまま働き続けるよりも、自分の責任で挑戦したい」と考え、フリーランスとして独立しました。独立後は取引上の制約や資金繰りなど苦労も経験しましたが、自ら判断し、責任を持って仕事に向き合える現在の働き方にやりがいを感じています。
――お客様との信頼関係を築くために、心がけていることはありますか。
まず大切にしているのは、納期や見積もりを明確にし、お客様にご納得いただいたうえで制作をスタートすることです。納期を守ることはもちろん、こまめな連絡も欠かさず、当たり前のことを着実に積み重ねることが信頼につながると考えています。
制作では、早い段階でラフ案をご提示し、方向性を共有しながら進めるよう心がけています。完成間近で大きく修正するのではなく、最初に認識をすり合わせておくことで、より納得感のあるデザインへとつなげています。
――理想とするお客様との関わり方について教えてください。
代理店や印刷会社を通じた仕事も多く手がけていますが、今後はクライアントと直接コミュニケーションを取りながら、企画や制作の段階から伴走できる仕事を増やしていきたいと考えています。課題や目的を共有し、一緒に価値をつくり上げていく関わり方が理想です。
個人で活動しているため営業面には課題もありますが、案件ごとのお付き合いではなく、継続的に相談していただける関係を築いていきたいと思っています。価格だけで判断するのではなく、仕事への向き合い方や提案する価値を評価してくださるお客様とのご縁を大切にしていきたいですね。
信頼できる仲間と、よりよいものづくりを目指して
――どのような人と一緒に働きたいですか。
一緒に仕事をするのであれば、言われたことをこなすだけではなく、自分の考えやアイデアを積極的に発信できる方と働きたいです。たとえ試行錯誤があったとしても、自ら考え、最後まで責任を持って取り組む姿勢を何より大切にしています。
将来的には、ご縁のある方に仕事を引き継いでいただくことも視野に入れています。まずは実際の仕事を通じて互いを理解し、信頼を積み重ねながら、長く力を合わせていける関係を築いていければと思っています。
感性を磨き続けることが、次の提案につながる
――休日はどのように過ごされていますか。
休日はお酒を楽しんだり、映画を観たりしながら気分を切り替えています。時間があれば美術館へ足を運び、さまざまな作品や表現に触れることも少なくありません。
普段とは違う世界に触れることで、新たな発見や気付きが得られます。そうした積み重ねが、日々のデザインや提案にも自然と活かされているように思います。
変化を恐れず、新しいデザインの可能性へ
――今後取り組みたいことを教えてください。
今後は、これまで携わる機会の少なかった分野にも積極的に挑戦し、対応できる領域をさらに広げていきたいと考えています。特にWebデザインについては以前から学び続けており、時代の変化に対応できるよう知識や技術の習得にも力を入れています。
新しい分野だからといって最初から線を引くのではなく、実践を通じて経験を重ねながら着実に力を付けていきたいですね。紙媒体で培った経験を活かしながら、Webデザインにも少しずつ活動の幅を広げていきたいと考えています。
――今後に向けての課題はありますか。
現在の課題は、紙媒体を中心とした制作だけでは収益が安定しにくいことです。制作期間が長い案件も多いため、継続的にお客様をサポートできる仕事や、継続的な取引につながる仕事の進め方を模索しています。
また、オンラインで全国のお客様と仕事ができる環境が整ったことで、新たな可能性も広がっています。実際に県外の自治体関連の仕事に携わった経験から、地域にとらわれず価値を提供できる手応えも感じました。これからも新たなご縁を広げながら、活動のフィールドをさらに広げていきたいと考えています。
――誰もがAIを使えるようになった今後の対応と危機感
最近体験したことで危機を感じることがありました。
お客様がイメージをAIで作ったデザインに近付けて制作して欲しいというものでした。その作業は写真やイラストの選定や使用許可の有無、素材選びなど、いままでのデザイン制作以上に時間を費やすケースがありました。誰でもAIを使用して簡単にデザインができるようになることは仕方ないことだと思いますが、今後、人が作り出すアイデアは激減していくのでしょう。そうであれば時間はかかりますが、私をAIの代わりに使って貰えたら血の通ったデザインを提案したいと思います。
今後はAIにできないデザインを目指したいと思います。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
私は、お客様に寄り添いながら一緒に考え、よりよいものをつくることを何より大切にしています。時代の変化によってデザインの在り方も大きく変わっていますが、新しいことを学び続け、柔軟に挑戦する姿勢はこれからも変わりません。
一つひとつのご縁を大切に積み重ねながら、長く信頼していただけるパートナーとしてお役に立てれば幸いです。