日本の金融リテラシー向上を目指して――元外為ディーラーが描く金融教育と経営支援の未来

合同会社大義経営研究所 所長 平田 啓氏

外国為替ディーラーとして世界の金融市場の最前線で活躍し、その後は金融教育や経営コンサルティングの分野で独自のキャリアを築いてきた合同会社大義経営研究所の平田啓氏。日本全体の金融リテラシー向上や組織づくりにも強い問題意識を持ち、活動を続けています。今回は、これまでの歩みや事業の強み、そして今後実現したいビジョンについて伺いました。

プロの投資家として培った経験を金融教育へ

――現在取り組まれている事業の特徴や強みを教えてください。

私自身の強みは、もともと機関投資家の一員としてプロの投資家の世界にいたことです。1993年に通貨オプションを扱うブローカーとして金融業界に入り、その後はニューヨークへ渡り、ウォールストリートで勤務しました。世界の金融市場の現場で経験を積んだことが、現在のコンサルティングの土台になっています。

帰国後はメガバンクや金融情報サービス企業での経験を重ねる中で、FXブームを目の当たりにしました。プロでも簡単には利益を出せない世界が個人へ開放されていく状況に危機感を覚えたことが、金融教育に取り組むきっかけでした。

関西大学大学院では外国為替論の講師も務めていたため、「誰かが金融教育を担わなければならない」という思いが強くなり、金融教育を軸とした事業を立ち上げました。その後、金融機関向けセミナーや顧問業務を通じて、資産運用だけでなく経営コンサルティングにも活動領域を広げてきました。

原点にあるのは「日本の国力向上」

――理念やビジョンにはどのような想いが込められているのでしょうか。

私の原点は、日本の国力向上にあります。

アメリカで人種差別を経験したことが、人生の大きな転機になりました。その悔しさからボストン大学でMBA留学中にアジア国際関係学という授業を受講して戦前の日本の歴史や文化について深く知る機会を得ました。その結果、日本人としての誇りを強く持つようになり、「日本のために何か貢献したい」という思いが芽生えたのです。

ビジョンとして掲げているのは、「物心ともに豊かな人と社会をつくること」です。

アメリカで生活していた頃、日本の金融教育が極めて不足していることを痛感しました。日本では十分な知識がないまま金融商品を選んでいるケースも少なくありません。金融への関心は高まっている一方で、体系的な教育が追いついていない現状に課題を感じています。

そのため現在は、一般の方への啓蒙活動だけでなく、将来的には金融専門職大学のような教育機関の創設も視野に入れています。世界で通用する金融プロフェッショナルを育成できる環境を整えることで、日本社会に貢献していきたいと考えています。

経営支援で大切にしている「人と組織」

――経営コンサルティングではどのような点を重視されていますか。

金融コンサルティングという定量的なアプローチに加えて、日本人らしい美しい組織作りを実現する定性的な経営コンサルティングにも従事しています。

日本企業、外資系企業、海外組織などさまざまな環境で働いてきた経験から、日本人ならではの強みや課題を数多く見てきました。その中で、「強い組織をどう作るか」というテーマに強い関心を持っています。

実際に経営者団体の運営にも携わっており、多くの経営者と共に組織づくりに取り組んできました。経営者同士が集まる組織は、それぞれが強い意思を持っているため決して簡単ではありません。しかし、その中で成果を上げることができた経験は、自分自身のマネジメント能力を象徴する大きな財産になっています。

今後はこうした経験を研究として体系化し、日本の未来を担う世代へ残していきたいと考えています。

KPTを軸にした組織づくり

――強く美しい組織作りで大切にしていることを教えてください。

組織運営では「KPT」を重視しています。

KPTとは「Keep」「Problem」「Try」の頭文字を取ったフレームワークです。まず良かったことを共有する「Keep」から始め、その後に改善点である「Problem」、最後に次の挑戦である「Try」を話し合います。

特に大切にしているのが最初の「Keep」です。改善点ばかりを話していると、組織の雰囲気は暗くなり、自信も失われてしまいます。まずは良かったことを共有し、お互いを認め合うことで自己肯定感を高める。その上で課題と向き合うことが重要だと考えています。

この考え方は仕事だけでなく、家庭での子育てにも取り入れています。自分の良かった点を振り返り、課題を見つけ、それをどう改善するかを自ら考える習慣は、人の成長に大きく役立つと感じています。

――どのような人と一緒に働きたいと考えていますか。

採用や人材育成で重視していることは二つあります。

一つは「人生のどん底をどう乗り越えたか」です。困難な経験と、それを克服した過程には、その人の人間性や価値観が表れると考えています。

もう一つは、「社会人として最も大切なことは何か」という問いに対する考え方です。その答えには、その人が持つ常識や判断基準が表れます。

スキルや経験だけではなく、人としての在り方を大切にしたいと考えています。

金融教育と強く美しい組織づくりを未来へ

――今後の展望について教えてください。

将来的には大学院の博士課程に進学し、これまでの経験や知見を体系的にまとめて世の中に残したいと考えています。

研究テーマとして関心を持っているのはマネジメントです。日本人が日本人らしい強く美しい組織を作るために何が必要なのか。海外経験や経営経験を通じて得た知見を研究し、後世へ伝えていきたいと思っています。

金融教育の普及、金融プロフェッショナルの育成、そして日本人らしい強く美しい組織づくり。そのすべてを通じて、日本の未来に価値を残していくことが、平田氏の描く大きな挑戦です。

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