うつむく心に寄り添って、笑顔を咲かせるお手伝い――「安心してつながる場所」から広がるアピアランスケアの未来

スマイルハート合同会社 代表 鈴木 浩子氏

医療用ウィッグを必要とする方が、安心して相談し、自分らしく過ごせる場所をつくりたい。その想いから誕生したのが、スマイルハート合同会社です。完全個室・完全予約制のプライベートサロンで、医療用ウィッグの販売やメンテナンスだけでなく、一人ひとりの不安や悩みにも寄り添っています。本記事では、鈴木浩子氏に、事業への想いや経営の原点、そして地域全体で支えるアピアランスケアへの展望について伺いました。

一人ひとりに寄り添うプライベートサロンという選択

――現在の事業内容について教えてください。

当社は、ウィッグユーザーの方が安心して過ごせる「寄り添いのサロン」として、完全個室・完全予約制のマンツーマンサロンを運営しています。医療用ウィッグの販売をはじめ、お客様の目の前でウィッグのお直しやメンテナンスを行いながら、お話をじっくり伺うスタイルです。1~2時間ほど、一対一でゆっくり過ごしていただけるため、周囲の目を気にすることなく、安心して過ごせる空間づくりを大切にしています。

――他社にはない強みはどのような点でしょうか。

医療用ウィッグが広く知られるようになった一方で、購入後に安心して相談できる場所は、まだ多くありません。実際には、装着方法やサイズ調整、脱毛後の頭皮や髪の変化など、ウィッグを購入してから困ることがたくさんあります。しかし、人目を気にせず、悩みや不安を話せる場所は少ないのが現状です。

そうした現状を知り、「ないのであれば自分でつくろう」と考え、このサロンを立ち上げました。スマイルハートは、ウィッグを販売するだけの場所ではありません。購入後も安心して相談でき、メンテナンスを受けながら長く通い続けられる、「安心してつながる場所」でありたいと考えています。それが、スマイルハートならではの強みだと考えています。 

美容師としての経験が導いた新たな使命

――この仕事に携わるようになったきっかけを教えてください。

美容師として6年間勤務していましたが、手荒れが悪化し、薬剤によるアレルギーを発症してしまいました。美容師として働き続けることが難しくなり、今後の仕事を考えていた時に、偶然ウィッグ会社のCMを目にしました。そのまま応募したことが、この業界へ入るきっかけです。

その後、オーダーメイドウィッグの会社で11年間勤務し、さらに別の販売会社へ転職して12年間勤務しました。医療用ウィッグを必要とする患者さんと多く接する中で、販売だけでは解決できない悩みが数多くあることを実感しました。もっと一人ひとりに寄り添える場所をつくりたい。その想いが、独立への大きな原動力となりました。 

――会社の理念やビジョンを教えてください。

病院の待合室で、多くの患者さんがうつむいたまま、ウィッグを気にしている姿を目にしたことが、今でも忘れられません。うつむいているのは顔だけではなく、心までうつむいてしまっているように感じました。だからこそ、私たちは「うつむく心に寄り添って、笑顔を咲かせるお手伝い」という想いを大切にしています。

ウィッグは、ただ隠すためのものではありません。その人らしく、安心して毎日を過ごすための一つの選択肢です。そして、安心して悩みを話し、必要な時にいつでも戻って来られる場所でありたいと考えています。それが、スマイルハートの目指す姿です。

安心できる空間と、自分らしさを支える取り組み

――サロンづくりで大切にしていることを教えてください。

誰にも見られない安心感を大切にしながらも、閉鎖的にならない空間づくりを意識しています。路面店ですが、お客様が来店されるとカーテンを下ろし、外からは見えないようにしています。

一方で、自然光が入るため、店内は明るく開放感のある空間になっています。お客様からいただいた植物や小物も飾られており、落ち着いた雰囲気の中で過ごせると好評です。

来店される方の中には、ご家族にもウィッグを外した姿を見せていない方が少なくありません。だからこそ、ご来店いただいた瞬間に安心してウィッグを外し、自然体で過ごしていただける場所でありたいと考えています。

――現在は、ほかにどのような事業に取り組まれていますか。

スマイルハートのほかに、「スマイルクローバー」という工房も運営しています。そこでは、治療前にカットしたご自身の髪を活用し、「和毛(にこげ)」という、お持ちの帽子の内側に装着して使用できるウィッグを製作しています。自分の髪を再び身につけられることで、より自然に、安心して過ごせる選択肢を提供しています。

また、治療前にカットした髪を、未来の自分へ贈る取り組みを「マイドネーション」、愛称を「マイドネ」と呼んでいます。大切な髪を捨てるのではなく、未来の自分を支える贈り物としてつないでいく。それが、和毛とマイドネーションに込めた想いです。

地域全体で支えるアピアランスケアを目指して

――今後取り組みたいことを教えてください。

これからは、アピアランスケアに携わる人を、地域全体で増やしていきたいと考えています。ウィッグだけでなく、スキンケアやネイル、運動など、それぞれの専門家が連携し、患者さんを支えられる地域づくりを目指しています。そのために現在、アピアランスケアの知識を持ち、治療前から治療後までお客様の隣を歩く「伴走美容師」の育成にも力を入れています。

医療機関、行政、美容師、地域の専門家がつながり、患者さんが安心して暮らせる地域を増やしていくことが、私たちの目標です。その第一歩として、勉強会や交流会の開催、公式LINEを活用したネットワークづくりにも取り組んでいます。

将来的には、長野県北信地域から「アピアランスケア特区」という地域モデルをつくり、その仕組みを全国へ広げていきたいと考えています。私たちが地域のハブとなり、患者さんやご家族、医療機関、行政、美容師、地域の専門家をつなぐことで、「安心してつながる場所」が地域全体へ広がっていくことを願っています。

ワクワクする気持ちが未来を動かす

――最後に、読者へメッセージをお願いします。

経営者を目指す方や独立を考えている方には、ワクワクする気持ちを大切にしてほしいと思います。落ち込むことや立ち止まる時間もありますが、その中から、またワクワクできる種を見つけることが、前へ進む力になります。

そして、一人で抱え込まず、良き理解者や仲間とのつながりを大切にしてください。人とのつながりや地域とのつながりは、自分自身を支え、新しい可能性を広げてくれます。

スマイルハートも、「安心してつながる場所」として、これからも、一人ひとりに寄り添い続けながら、地域の皆さんとともに笑顔の輪を広げていきたいと思っています。

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