ゲーム配信から逆算したIP開発で「奇跡」を設計するMIRAQLstudio

株式会社MIRAQLstudio 代表取締役 平賀 勉氏

株式会社MIRAQLstudioは、ゲームおよびデジタルコンテンツの企画・開発・プロデュースを手がける企業です。平賀氏は、役者や声優として活動した後、ゲーム業界でプロデューサー、プロジェクトマネージャー、ディレクター、プランナーなどを経験しました。現在は、VTuberをはじめとする配信文化への理解と、AIを活用した開発手法を組み合わせ、少ない投資で広がるコンテンツづくりに取り組んでいます。

ゲームの先にある展開まで、企画段階から設計する

――現在の事業内容について教えてください。

当社は、ゲームおよびデジタルコンテンツの企画・開発・プロデュースを行っています。「ゲーム」とだけ掲げていないのは、1本のゲームをつくって終わりではなく、オリジナルIPを育て、その先の展開まで考えているためです。

作品によっては、アニメやグッズ、リアルライブなどと連動できます。ただし、すべての作品を同じ方法で展開すればよいわけではありません。この世界観ならライブが必要、この作品なら特定のグッズが合うというように、企画の段階から広がり方を考えています。

俳優、声優、バーチャルタレントのマネジメントとプロデュースも事業内容に含めています。これは主に私自身の活動に関するもので、制作するコンテンツに自分の声を使うこともあります。役者としての経験とゲーム制作の経験を、1つの企画に活かしていく考えです。

――御社ならではの強みは何でしょうか。

私はVTuberや配信者の活動に関わってきたため、「配信しやすいゲーム」を企画できることが強みです。面白いゲーム、売れるゲーム、配信で映えるゲーム、視聴者が楽しめるゲームは、すべて同じではありません。

配信者が1人でゲームを遊びながら話し続けるには、自然に反応やツッコミが生まれる仕掛けが必要です。配信者が話しやすく、視聴者も一緒に楽しめる状態から逆算し、ゲームの企画やキャラクターを設計しています。

PC向けゲーム「NEKOHERO」も、その考え方から生まれました。ゲームには、個性の異なる51匹の猫が登場します。1匹だけで勝負するのではなく、51匹のうち1匹でも好きになってもらえれば、グッズやマスコットなどの展開につながる可能性があるという考えです。

「なければ自分でつくる」という思いが経営の原点

――経営者になったきっかけを教えてください。

私は20代前半に役者として活動していましたが、自分に合うオーディション情報や作品になかなか出会えない時期があったのです。それなら自分で作品をつくればよいと考え、脚本の執筆から映像編集、DVDのラベル制作、発送まで1人で行いました。

当時はブログを使い、制作の裏側も発信。そのブログ内のバナーに掲載されていた「ゲームクリエイター募集」の広告を見つけたことが、ゲーム業界へ進むきっかけです。

その後、大手企業で自社IPを活かした企画、スピンオフタイトルなど、多くの案件に関わりました。さまざまな職種を経験できた一方、企画者として自分の作品をつくりたいという思いは残っていました。そこで、役者時代の「なければ自分でつくる」という原点に立ち返り、自分の作品をつくる環境として株式会社MIRAQLstudioを設立しました。

――経営で大切にしていることは何ですか。

私は、リスクを負いすぎないことを大切にしています。役者時代には、貯金が10万円を下回るほど生活が厳しい時期がありました。その後、企業に所属して収入を得られるようになってから投資に取り組みましたが、大きな損失を出し、再び資金がほとんどない状態を経験しています。

2度の厳しい経験から、崖っぷちに立つような経営はしないと決めました。現在も、基本的に外部からの資金調達は想定していません。自分のスキルを提供して安定した収入を得ながら、その合間に低コストでIPをつくる2段構えです。大きな可能性=奇跡を目指しながらも、事業を継続するための土台は崩さない方針です。

固定費を抑え、AIとIPを活用する1人経営

――現在の組織体制について教えてください。

現在は、私1人で事業を運営しています。私は企画やアイデアを出すことを得意としているため、開発領域では現在契約している大手パートナー様と二人三脚で案件を回すスタイルをとっています。自身の企画力でプロジェクトを立案し、パートナー様で開発の実行を行い、複数の制作ラインを動かすことを実現しています。

上記の通り、固定的な人件費を負担することは避けています。複数の企画書を平行で作成し、保持しながら収益につながる案件を優先し、状況に応じて優先順位を変えています。

人を増やすことだけが成長だとは考えていません。まずはIPやキャラクターを生み出し、それらが収益をつくる状態を目指します。将来的に人を迎える場合も、仕事と収益の見通しを持った上で進める考えです。

――1人での制作をどのように進めていますか。

当社では、AIを積極的に活用しています。複数のAIを同時に動かすことで、1人でも一定の作業量を確保できるようになりました。

ただし、AIを使えば自動的に作品が完成するわけではありません。何をつくるのか、誰にどのような体験を届けるのかを考え、全体のコンセプトを設計する役割は人が担います。
AIを作業者として活用し、監修業務は自身で行うようにしています。

「広告費をかけなくても配信者に取り上げてもらいやすい企画」というコンセプトは、AIで考えることはまだ難しい状況です。様々な企画の中にこのコンセプトを取り込みながら明文化し、「ミラクル流」というアイデア発想法のメソッドとして展開を行い、1人だけの企画作業という属人化状態の脱却を中長期的には狙っていきたいと思っています。

エンターテインメントの力を、ゲーム業界の外へ広げる

――今後、どのような事業に挑戦したいですか。

「NEKOHERO」に続く2本目、3本目の開発には、すでに着手しています。ゲームにはさまざまなジャンルがあるため、特定の形式に絞るつもりはありません。ゲームではないものに自社IPを組み合わせ、新しいデジタルコンテンツを生み出す構想もあります。

そして、考えているのは、エンターテインメントの力を、企業や地域、社会の課題解決にも活かしたいということです。一般には知られていなくても、社会を支えている企業や仕事はたくさんあります。

ゲームやキャラクターを通じて、「こんな仕事があるのか」「魅力的な企業だ」と知ってもらうきっかけをつくれるはずです。観光PRや交通安全の啓発、シニア向けのアプリなど、エンターテインメントを入り口に認知や行動を変える提案をしていきたいと思います。

――リフレッシュや趣味について教えてください。

仕事と趣味の境目はあまりありません。土日もAIを動かしながら、テレビや動画を見て作業していることが多いです。行き詰まったときは、散歩をして頭を切り替えます。また、服を見ることも好きなので、百貨店へ出かけて買い物をすることもあります。

私は、ゲーム業界以外の方からの相談も歓迎しています。ゲーム及びデジタルコンテンツ開発で培った仕組み、チュートリアルとして楽しく学んでもらうことや、継続したくなる設計、キャラクターを起用して新しい接点を創出する手法などは別の領域にも応用できます。これからも業界の枠にとらわれず、エンターテインメントだからこそ生み出せる新しいアイデアと、奇跡のような体験を形にしていきます。

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