デザインを“見た目”で終わらせない――経営に伴走するブランディングへの挑戦

合同会社マークス・ブランディング 代表 本間 恭介氏

合同会社マークス・ブランディングは、企業の課題解決をデザインやブランディングを通じて支援する会社です。「制作物をつくること」が目的ではなく、経営に寄り添う伴走型の支援を大切にしています。本記事では、創業の経緯や経営で大切にしている価値観、今後描く展望について伺いました。

企業の本質に寄り添うブランディング

――現在取り組まれている事業について教えてください。

私たちは夫婦二人で運営している会社です。私はディレクターとしてお客様へのヒアリングや企画立案を担当し、妻はデザイナー兼コーダーとしてデザイン制作からWebサイトの構築まで手がけています。パンフレットなどの紙媒体をはじめ、Webサイトや写真撮影、映像制作まで、印刷以外は基本的に社内で完結できる体制を整えています。

制作物ごとに依頼先を分ける必要がないため、企業が伝えたい内容を一貫した形で表現できます。企画段階から制作まで同じ視点で伴走し、その企業らしさを形にしていけることが、私たちの特徴です。 

――会社として大切にしている理念やビジョンを教えてください。

地方では今でも、「デザインは見た目を整える仕事」という認識が根強く残っています。しかし、本来のデザインは、企業の理念や強み、事業の方向性を伝えるために欠かせないものです。

私たちは「何をつくるか」ではなく、「なぜそれをつくるのか」という目的から一緒に考えることを大切にしています。経営者の想いや企業理念、事業の方向性を丁寧に整理し、その企業にとって本当に必要な手段を提案していきます。

ホームページや会社案内も、どの情報を優先して伝えるべきかを上流工程から一緒に整理しています。デザインを経営の視点から支援していることが、私たちならではの強みだと思っています。

課題解決を追い求めて独立

――経営者になられたきっかけを教えてください。

もともとは高崎市内の制作会社で、ホームセンターのパッケージデザインをはじめ、企業の採用ツールやホームページ、会社案内、映像制作などのディレクションに携わっていました。

仕事をするなかで強く感じていたのは、「何かを作ってほしい」という依頼に応えるだけでは、本質的な課題は解決できないということです。制作物はあくまで手段であり、その先にある目的や課題を理解してこそ、本当に価値のある提案ができると思っていました。

ちょうどブランディングという考え方が広がり始めた時期でもあり、企業の上流から関わり、経営やマーケティングまで含めて支援したいという想いが強くなりました。その実現を目指し、2015年に独立しました。

もう1つ大きなきっかけになったのが、53歳で亡くなった父の存在です。父は亡くなる前に「人生に後悔はない」「幸せだった」と話していました。その姿を見て、自分もやりたいことに挑戦しなければ後悔が残ると思い、起業を決意しました。

――経営判断で大切にしている価値観を教えてください。

創業当初から、利益だけを追い求める会社にはしないと決めていました。もちろん事業を続けるための利益は必要ですが、それ以上に、お客様の価値や魅力を高めることを何より重視しています。

私たちの支援によって企業の価値が高まり、その結果として私たち自身の価値にもつながっていく。そうした循環を築くことが理想です。

私自身が大切にしているのは「誠実・謙虚・礼儀」の3つです。お客様だからといって誤った判断に合わせるのではなく、違うと思うことはきちんとお伝えする。それも誠実さの1つだと思っています。お互いを尊重し、対等な立場で課題解決に向き合う姿勢を、常に心がけています。

志を共にする仲間と未来へ

――組織づくりについてのお考えを教えてください。

会社を立ち上げた当初から、基本的には夫婦二人で事業を続けていく方針でした。現時点でも、その考えは変わっていません。

ただ、今後は外部企業との協業が増えたり、事業の幅が広がったりする可能性もあります。そうしたタイミングが来れば、同じ志を持つ方に加わっていただくこともあると思います。

これまで社員を募集したことはありませんが、「働かせてほしい」という問い合わせをいただく機会はあります。群馬県内には商業デザインを体系的に学べる環境が限られていることもあり、将来的には若い世代が実践的に学べる場としての役割も担えたらと思っています。

――一緒に働く人に求めることは何でしょうか。

まずは会社の理念に共感していただけることが前提です。

デザイン業界というと、自分の作品や作風を表現するイメージを持たれることもありますが、私たちが手がけているのは商業デザインです。目的は企業の課題を解決し、その先の成果につなげることにあります。

そのため、自分のデザインを前面に押し出すのではなく、企業ごとに最適な表現を考えられる人が理想です。自分のスタイルにこだわるのではなく、課題解決に向けて柔軟に提案できる方と一緒に仕事ができたらと思います。

経営に伴走するデザインへ

――今後挑戦していきたいことを教えてください。

企業の支援に携わるなかで感じているのは、多くの経営者が求めているのは経営や採用、売上などの課題解決であり、一般的に認識されているデザインとの間には、まだ大きな距離があるということです。その経営とデザインの橋渡しをしていくことが、私たちの目指す姿です。

だからこそ今後は、制作会社という立場にとどまらず、企業の経営や情報発信、採用活動まで継続的に支援する「伴走型」のデザインアドバイザーやコーチングに挑戦したいです。

制作物が必要な時だけ相談を受けるのではなく、定期的に企業と対話を重ねながら、WebサイトやSNS、採用資料などを継続的に改善していく。そんな伴走型の支援を目指しています。

――その実現に向けた課題と取り組みについて教えてください。

最大の課題は、地方企業において「デザインが経営にどのような価値をもたらすのか」という認識が、まだ十分に浸透していないことです。そのため、SNSはもちろん、経営者が集まる団体やネットワークを通じて、デザインが経営や組織づくり、情報発信にどのように役立つのかを発信していきたいと思っています。

また、自社だけでなく、経営支援を行う企業や組織とも連携し、それぞれの専門性を生かして地域企業を支援していきたいです。経営とデザインをつなぐ存在として、地域企業の価値向上に貢献していきたいですね。

家族と写真が育む感性

――休日のリフレッシュ方法について教えてください。

休日は、小学一年生の娘と一緒に自転車で出かける時間を大切にしています。最近は街を巡りながらシールを集めたり、帰り道にカフェへ立ち寄ったりするのが親子の楽しみです。

仕事でも写真撮影をしていますが、プライベートではフィルム写真を趣味として続けています。写真展に出展したり、写真仲間の展示を見に行ったりすることも多く、そうした交流が良い刺激になっています。

仕事とは少し違う視点で写真と向き合う時間が、新しい発想や感性を育む大切なリフレッシュになっています。そうした感性も大切にしながら、これからも企業の価値を高めるデザインに取り組んでいきたいですね。

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