幸せをまとうエプロンから、心を動かすアートへ――感性を信じて歩む芦屋ル・タブリエの挑戦
有限会社芦屋ル・タブリエ デザイナー・オーナー 小西 恵子氏
有限会社芦屋ル・タブリエは、「幸せのエプロン」を中心に、身につける人の気持ちが華やぐ商品を生み出してきました。現在、デザイナー・オーナーの小西恵子氏が新たに力を注いでいるのがアート制作です。家庭に幸せな時間を届けたいという想いは、エプロンからアートへと形を変えながら受け継がれています。本記事では、事業を始めた背景や今後の展望などについて伺いました。
家庭に幸せな時間を生み出す「幸せのエプロン」
――現在の事業内容について教えてください。
当社では、これまで「幸せのエプロン」を中心に、さまざまな商品を制作してきました。
エプロンは、単なる作業着ではありません。家庭で過ごす時間を明るくし、家族がキラキラ、ワクワクできる時間をつくるものです。
例えば、家族が帰宅したときに、普段着の上からエプロンをまとい、「おかえり」「お茶でも入れようか」と声をかける――そうした何気ない場面にこそ、幸せな時間があると思うんです。その想いから、日常に華やかさを加えるラグジュアリーなエプロンをつくりました。
――エプロンづくりでこだわった点は何でしょうか。
「家庭に幸せな時間を届けること」を第一に考え、デザインから素材まで徹底的にこだわりました。当時はシンプルで機能性を重視したエプロンが主流でしたが、娘に似合う華やかでかわいいエプロンをつくりたいと思ったんです。
大量生産ではなく、生地や縫製にもこだわりました。海外の生地や上質な素材を使用し、オリジナルの生地をプリントしてもらうこともありました。その結果、料理教室の先生や生徒の方々を中心に支持が広がり、テレビや百貨店からも声をかけていただくようになるなど営業活動に力を入れなくても自然と事業が広がっていきました。
諦めていた夢を思い出し、デザイナーの道へ
――デザイナーや経営者になられたきっかけを教えてください。
実は、20歳のころにはデザイナーになりたいという想いを抱いていたのですが、母から「それで生活するのは難しい」と言われ、一度は諦めたんです。その後はさまざまな仕事を経験し、飲食店を25年間経営しました。
しかし、娘の結婚が決まったとき、ふと「私はデザイナーになりたかった」と、忘れていた夢を思い出しました。専門的に服飾を学んでいたわけではありませんが、ファッションが好きで、モデルを経験したことなどもあったため、紹介していただいた方のもとで約3カ月間学んだのち、飲食店で長年エプロンを着てきた経験を活かしてエプロンづくりを始めました。
――経営判断では、何を大切にしていますか。
自分の感性や直感に正直であることです。仕事の話をいただいたときは、会社の考え方や商品を見て、自分が好きだと感じるかどうか、一緒に仕事をしたいと思えるお相手かどうかを重視してきました。
違和感を抱えたまま仕事をしても、うまくいかず、自分自身もしんどくなるでしょう。多くのオファーをいただきましたが、感性が合わないと感じたケースはお断りしてきました。まずは自分の気持ちに素直になることが、私の判断の軸です。
正直に伝え、相手の考えを引き出す
――スタッフとのコミュニケーションで意識していることは何ですか。
正直に向き合うことです。ただし、一方的に伝えるのではなく、まずは相手の意見を引き出したうえで、相手が受け入れやすい言葉を選び、お互いの考えをすり合わせるようにしています。
結論を急がず、一緒に考える姿勢も大切です。そのため、食事やカフェなど、リラックスして話せる環境を選ぶことも少なくありません。肩の力を抜いて対話できる場だからこそ、本音が引き出され、よりよいアイデアや信頼関係につながると考えています。
――今後、一緒に働きたいのはどのような方ですか。
重視しているのは、正直さと前向きな姿勢です。外見ではなく、その人の考え方や人柄、仕事に向き合う姿勢が自然と表情や雰囲気に表れているかどうかを確認しています。
経験やスキルは、最初から完璧である必要はありません。周囲のサポートを受けながら自ら成長しようとする意欲があれば十分です。海外からのオファーや個展の予定も増えているため、今後は事業をともに支えてくれるアシスタントを迎えたいと考えています。
考える前に、自分の心で感じる
――経営をするうえで大切にしている考え方を教えてください。
「思考は現実化する」といわれますが、私はまず「考える」のではなく、「感じる」ことが大切だと思っています。好きか嫌いか、やりたいかやりたくないかを自分の心で感じ、そのあとで、どうすれば実現できるかを考えるのです。
また、自分がしたいことを周囲に伝えることも大切です。「こんなことがしたい」「こういう人と出会いたい」と発信すると、誰かが人や機会をつないでくれます。私自身も、想いを言葉にすることで多くの出会いに恵まれてきました。
――休日はどのようにリフレッシュしていますか。
芦屋の街を散歩したり、自然の中へ出かけたりしています。芦屋川の水のなかを歩くのも好きです。
一方で、神戸や東京へ出かけ、ファッションや靴、お店の空間を見ることも大切にしています。気になったお店に入り、商品や空間に触れながら、「こういう場所では、こういう気持ちになる」と自分自身で体験しています。
自然と都会の両方に触れることが、感性を磨く時間になっています。
自然の素材を活かし、アートを世界へ
――現在取り組んでいるアートについて教えてください。
エプロンの仕事は一区切りと考え、現在はアート制作に力を入れています。エプロンの販売は業者の方に任せ、自分は絵を描くようになりました。心がしんどいときには楽しい絵を描けませんので、自分自身がワクワクした状態で制作することが大切です。
作品には、麻などの自然な素材や日本らしい素材を取り入れています。できる限り本物の素材を使い、シンプルで、見た人がキラキラ、ワクワクできる作品をつくりたいと思っています。
――最後に、今後の展望についてお聞かせください。
今後は個展を開き、海外にもアートを届けていきたいです。一方で、海外の方からメッセージやオファーをいただく機会も増えているのですが、英語でのやりとりや、海外へ提出する書類、プロフィールの作成には課題も感じています。世界へ作品を届けるために、必要な手続きや発信方法も学んでいかなければなりません。
私が大切にしているのは、「キラキラ」「ワクワク」「ラブラブ」「アゲアゲ」「スマイル」の5つです。そして、エプロンにもアートにも共通しているのは、人を幸せにしたいという想いです。
これからも自分の感性を信じ、見た人の気持ちや空間を明るくできる作品を生み出しながら、世界へ活動を広げていきたいと思っています。