受け継いだ文化を未来へ――三光院が守り続ける精進料理と比丘尼御所の文化

三光院 西井 香春氏

東京都内にある三光院は、精進料理を提供するお寺として知られています。精進料理を中心に、長く受け継がれてきた文化を伝えてきました。その背景には、尼門跡寺院で育まれてきた独自の料理と文化があります。本記事では西井氏に三光院の特徴や大切にしている価値観、文化を未来へつないでいくための考え方について伺いました。

尼門跡寺院に受け継がれた文化を、料理を通して伝える

――三光院はどのようなお寺なのでしょうか。

三光院は、精進料理をお出しするお寺として知られています。檀家のないお寺ですので、三光院にお見えになる方のほとんどが、精進料理を目的にいらっしゃいます。

日本の精進料理には、日本のお坊さんたちが作り上げてきた「御膳料理」と、中国のお坊さんたちが作り上げてきた「普茶料理」があります。三光院の精進料理は、一般的な精進料理とは少し違います。三光院でお出ししているのは、日本の料理ではありますが、もともと「比丘尼御所」で育まれてきた料理です。皇女の方たちがお入りになるようなお寺で受け継がれてきたもの、そこが大きな特徴だと思います。

――三光院ならではの強みは、どのようなところにありますか。

料理だけではなく、比丘尼御所にて受け継がれてきた文化そのものも大切にしています。

そうした文化をなるべく皆さんにお知らせしていくことも、私たちが取り組んでいることの一つです。料理を中心としながら、そこに息づいている文化をさまざまな形で紹介しています。

「望んでいたもの」との出会いが、歩みを進める原動力に

――三光院でお仕事をされるようになったきっかけを教えてください。

私が三光院に惹かれたのは、尼門跡寺院の文化をいろいろと受け継いでいるところでした。私自身も料理をしていますので、料理を通して、そうしたものを皆さんにお伝えできるようになったことに大きな意味を感じています。

――文化を広く知ってもらうためにどのような活動をされているのでしょうか。

門跡寺院という言葉自体、普段はなかなか触れることがない世界なので、一言でどういうものか説明するのは難しいと思います。だからこそ、時間がある限り、いろいろな方面から皆さんに紹介するようにしています。

多くの人に見ていただくことで、尼門跡寺院がどういうものなのか、少しでも分かっていただけたらと思い、2000年にはTBS系で「京都尼門跡」という1時間半ほどの番組を作っていただきました。

――物事を決断するとき、どのようなことを大切にしていますか。

本当に「これを望んでいた」と思えるものに出会ったときに動いています。私の場合は、まさにそういう気持ちになったときに、すっとこの世界に入り込むことができました。

「楽しく続ける」ことと、同じ感性を持つ人とのつながり

――お寺の運営に携わる方とのコミュニケーションで、大切にしていることはありますか。

現在、料理に関わっている人は10名ほどで、みんなで仕事をする上でも、楽しく取り組めたらと大切にしています。何事も、楽しくないと続かないと思っているからです。

一緒に働く方については感性を持っている人と働きたいと感じています。

受け継いできた料理と文化を、これからも長く

――今後取り組んでいきたいことを教えてください。

先代、そしてその前の初代から、何十年と続いてきたものがあります。精進料理を中心に、いろいろな文化的な活動をしていますが、長く続いてきたお寺の文化を東京で発信できることを幸せに感じています。その積み重ねを大切にしながら、これからも続けていきたいと思っています。

今は、本当に皆さんに関心を持っていただけるようになりました。皆さんが集まって、帰られるときのお顔が素晴らしく、今はとても満足しています。

――お寺を運営する中で、これだけは譲れないという思いはありますか。

三光院はみんなのお寺として運営しています。宗教法人は物凄く税制優遇がされています。それはなぜなのか?特定の一族が家業として仏教を維持していくためなはずはありません。

三光院を守るということは、名前とか法人格を守るということではなく、これまでの、そして現在の御縁の人たちが大事にしてきたものを、敬意を持って次世代に繋いでいくことだと覚悟しています。

自然と向き合う時間が、何よりのリフレッシュ

――お休みの日など、どのようにリフレッシュされていますか。

三光院にお見えいただければ分かると思いますが、自然がたくさんあります。一日中、窓の外を見ていると、葉っぱの色が朝と、その後の時間で刻々と変わっていきます。

そのくらい自然というものは楽しいものです。どこかに行きたいというより、時間があれば三光院の外にある自然と向き合うことが、私は一番好きですね。

――最後にこれまでの歩みやこれからの活動を通して、大切にされている考え方を教えてください。

私は、目の前にあるものに最大限向き合う人間なんです。あまり先のことを考えるというよりも、今、目の前にあるものにしっかり向き合う。それが自分には合っているのだと思います。

三光院がこれまで積み上げてきた料理や文化を大切にしながら、目の前にあるものと丁寧に向き合っていく。その姿勢を、これからも続けていきたいと思っています。

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