「Maintainable(メンテナブル)」を軸に、目に見えない価値を社会へ伝えるクリエイティブ
フェバリット株式会社 代表取締役社長 内野 一郎氏
マーケティングやコミュニケーションデザインを手がけながら、「Maintainable(メンテナブル)」という考え方を事業の軸に据えるフェバリット。コピーライターとして培ってきた言葉の設計力を活かし、自治体や業界団体、民間企業などの課題と向き合ってきました。ビルメンテナンスの現場との出会いをきっかけに、社会を支える「目に見えない価値」を伝える活動へと領域を広げています。今回の取材では、現在の事業や大切にしている考え方、経営の軸、組織づくり、これからの挑戦について伺いました。
目次
「Maintainable(メンテナブル)」をクリエイティブの支柱に据える
――現在の事業内容について教えてください。
現在は、マーケティングとクリエイティブデザイン、特にコミュニケーションデザインを中心に仕事をしています。自治体や業界団体、民間企業などをお客様として、従来でいう広告宣伝や広報の領域に関わる仕事が中心です。
私はもともとコピーライターですので、言葉の設計からブランディングを考えることも少なくありません。外部のデザイナーの方と協業しながら、企画を形にしています。また、当社では「Maintainable® News」というメディアも運営中です。毎週1回、7本ほどのニュースを配信しています。
――「Maintainable(メンテナブル)」という考え方に至ったきっかけを教えてください。
きっかけは、ビルメンテナンスの世界との出会いです。全国ビルメンテナンス協会の月刊誌で編集長を務めることになったのですが、それまで私はビルメンテナンスという仕事をまったく知りませんでした。
編集する以上、現場を知らなければならないと考え、実際に求人を探してビル清掃の仕事を経験。そこで、こうした裏方の方々がいるからこそ、都市や建物、社会がきちんと営まれているのだと知り、大きな衝撃を受けました。
それまでは、商品やサービスの魅力を伝える仕事への関わりがほとんどです。しかし、この経験を通じて、目に見えない価値をもっと表に伝えたいという思いが強くなりました。それが、やがて「Maintainable(メンテナブル)」へとつながっていったのです。
――企業として大切にしている理念を教えてください。
私は、想像や創作は愛情だと思っています。お客様から課題をいただき、それに対する解決策を言葉やデザインとして形にしていくのが私たちの仕事です。
その際、相手の課題やお客様そのものに愛情を持って接しなければ、なかなか良い仕事にはなりません。人も企業も社会も愛していくということが、ビジョンであり、行動理念でもあります。
企業名の「フェバリット」も、もともとは自分の好きなことをやりたいという思いから付けました。一方で、お客様から「お客様の好きなことを形にしてくれるのでしょう」と言われたこともあります。
私たちが信じることと、お客様が大切に育てていること。その両方に愛情を持って形にしていくことが、フェバリットという名前にもつながっていると思います。
流行を捉えながら、本質を探求し続ける
――経営の道に進まれたきっかけは何だったのでしょうか。
フリーランスとして仕事を続けるなかで、個人でできることには限界があると感じるようになりました。
企業とのBtoBの仕事が多かったこともあり、こちらも企業という形を持たなければ、同じテーブルに着きにくいと感じた時期があったのです。そこで企業をつくろうと考え、経営の道に入りました。
――経営する上で大切にしている軸を教えてください。
本質を探求する姿勢です。私はバブルとその崩壊を経験し、広告やクリエイティブを生みだす企業が消滅していく姿も見てきました。私たちの仕事では、トレンドや時流を捉える必要があります。今何が流行しているのか、次に何が来るのかという予測も常に働かせていなければなりません。
けれど、探究者としての軸が移ろいやすい流行に振り回されてはいけません。お客様の本質を探り、そこに何が在るのかを常に考え続ける。その姿勢さえ変わらなければ、大きな変化があったとしても目標を見失うことなく、踏みとどまっていられると考えています。
同じ目線で向き合う、小さな組織ならではの関係性
――現在の組織体制について教えてください。
現在、社員は3人です。非常に小さな組織ですが、その分、外部のパートナーの方々と協業する機会が多くあります。
仕事に応じて、それぞれの専門性を持つ方と一緒に取り組みながら、企画を進めています。
――社内のコミュニケーションで意識していることはありますか。
同じ目線でものを考えることを大切にしています。当社は小規模な企業ですから、上や下という関係で構えて話すよりも、お互いが何を考えているのかを理解することのほうが重要です。
こちらも心を開かなければ、相手とわかり合うことはできません。立場にとらわれず、同じ目線で話す姿勢をできる限り崩さないようにしています。
自然と社会を「修理する」発想を、新たな事業へ
――新たに取り組もうとしている事業について教えてください。
ビルメンテナンスの分野で、特定技能外国人の方と企業をマッチングする仕事を始めようとしています。日本では人口減少と高齢化が進んでいる状況です。ビルメンテナンスの現場でも人材の確保が難しくなっており、今後はさらに厳しい状況になると考えています。
そこで、技術を持った海外の方を日本に迎え、企業とつなぐ仕事に取り組む予定です。まずはビルメンテナンスの分野に限定して始めたいと考えています。
――クリエイティブの役割は、今後どのように変わっていくと考えていますか。
広告やマーケティング、クリエイティブには、人の気持ちや行動を変える力があります。これまでは、その力を商品を買っていただくことや消費していただくことに向ける場面が多くありました。
しかし、これからは自然資本を回復させ、生物多様性を保全し、自然や社会を未来につなぐためにも、その力を使えるのではないかと思っています。そのためにはクリエイターが異なる分野にも積極的に参加し、異質な価値観をかけ合わせることが大切です。
歩くことと、生き物との時間が日々のリフレッシュに
――普段はどのようにリフレッシュされていますか。
歩くことですね。ウォーキングを楽しんでいます。また、猫を飼っているので、猫と触れ合う時間も大切にしています。休みの日に限ったことではありませんが、動物と触れ合うことはとても癒しになります。
――これからの社会に対して、どのような思いを持っていますか。
日本には森も川も海もあります。大切なのは、そうした自然環境を適切に手入れし、地球環境を修復し、長持ちするようにしていくことです。私は、ネイチャーポジティブとヒューマンポジティブの思想をかけ合わせ、みんなで取り組んでいければ、少しずつ良い方向に進んでいくのではないかと考えています。
1つの企業だけでできることではありません。競合企業であっても、必要なところでは手を取り合い、情報を共有していく。健全な競争は必要ですが、それと同時に、もっと一緒に取り組んでいくことも重要です。
「Maintainable(メンテナブル)」という考え方を育てながら、自然や社会を未来につなぐためにクリエイティブの力をどう活かしていくか。今後も、その可能性を探っていきたいと考えています。