「やりたい」を仕事につなげ、一人ひとりの可能性を形にする――i-TAKが目指す“家族的支援”
株式会社i-TAK 代表 今泉 拓人氏
2024年1月に創業した株式会社i-TAKは、就労支援を通じて、一人ひとりの「やりたい」を仕事につなげる取り組みを行っています。理念に掲げるのは「家族的支援」。利用者と職員を家族のように捉え、できることを増やすだけでなく、それぞれがやりたいことを仕事として形にしていくことを大切にしています。自社製品の開発や店舗運営にも取り組み、将来的には利用者の自社雇用も目指しています。今回は、代表の今泉拓人氏に創業の背景や事業への想い、今後の展望について伺いました。
大切な人との別れを原点に、福祉の道へ
――創業の経緯と、社名の由来を教えてください。
これまで福祉事業の運営側として仕事をしてきましたが、24歳までの間に、大切な友人を病気や事故、火事、自殺などで亡くしました。なかでも24歳のときに幼馴染を自殺で亡くしたことが、自分にとって一番大きな出来事でした。
その方は幼馴染であり、兄のような存在でもありました。バスケットボールを始めたきっかけも、進学先を決めたことも、その人への憧れがあったからです。その方の自殺をきっかけに、身の回りで同じようなことを起こしたくない、精神的な部分で悩みを抱える方々を自分のところで雇用したいという思いを持つようになりました。
そのためには会社が必要です。いきなり障害者雇用を始めることは難しいので、まずは就労支援の仕事に移り、そこで学んだ上で2024年に独立しました。
――社名にはどのような意味が込められていますか。
「株式会社i-TAK」は、今泉拓人という自分の名前を残すところから考えました。自分を支えてくれた親や周囲の方々への感謝を大切にしたいという思いがあります。「i」は遠目から見ると人の顔と体のようにも見えます。そして「TAK」はデンマーク語で「感謝」という意味です。
人に感謝できる会社、感謝し続ける会社にしたいという思いを込めています。また、就労支援B型の事業所は「CANOW~かなう」という名前です。「Can」と「Now」を組み合わせ、できることを今ここでかなえていくという意味を込めました。
「家族的支援」で、一人ひとりのやりたいを仕事に
――御社の強みについて教えてください。
私たちの理念は「家族的支援」です。職員も利用者も含めて、関わる全員を家族だと思って接しています。だからこそ、お互いに言いたいことを言える関係性をつくれることが強みだと思っています。
利用者さんに対して、必要なことをきちんと伝えることもありますし、利用者さんからも「こうしてほしい」と率直に言ってもらえる。信頼関係があるからこそできることだと思います。
――具体的には、どのような仕事を提供しているのでしょうか。
一般的には3~4種類ほどの作業を用意して振り分ける事業所が多いと思いますが、私たちは利用者さん一人ひとりの「やりたい」を仕事につなげることを大切にしています。絵を描きたい、木工作業をしたいという希望があれば、それを仕事にできないか考えて、実際に仕事を取ってきます。
もともと持っていたコミュニティを活用することもありますし、新規で飛び込みながら「こういう部材が欲しい」「こういう仕事が欲しい」と営業することもあります。家族のためなら、恥をかいても構わないと思っています。物の価値以上に、一人ひとりの価値を大切にしているので、その人の「やりたい」を仕事にしたほうが、より良いものが生まれると考えています。
福祉の枠を超え、ブランドとして成長する
――現在、どのような商品開発に取り組まれていますか。
林業で山に捨てられてしまう木材を買い取り、コースターや表札などに加工するエコ商品をつくっています。地域や地域外の温泉施設などに置かせてもらい、販売もしています。
さらに現在は店舗も構え、マフィンや30センチのホットドッグなど、自社フードやドリンクの開発にも取り組んでいます。マフィンは「恐竜の落とし物」という商品名で、三笠市の恐竜や化石のイメージを取り入れています。形が崩れてしまっても「恐竜の落とし物なら、いろいろな形があって面白い」と考えることで、食品ロスを防ぐ工夫にもつなげています。
――今後、どのような展開を考えていますか。
将来的には利用者さんの自社雇用を実現したいです。そのためにも、就労支援や福祉というイメージを前面に出すのではなく、会社自体をブランド化していきたいと考えています。
例えば、現在つくっている商品を美容室などに卸したり、お店ごとのオリジナルグッズをつくったり、他の方とコラボレーションして新しい店舗をつくったりすることも考えています。そこで利用者さんを雇用できれば、働き続ける場所を増やしていけます。
会社を大きくすること自体が目的ではありません。利用者さんが増えて、今の場所だけでは受け入れきれなくなったから次の店舗をつくる。あくまで「利用者さんのために大きくする」という考え方です。
「一生懸命やった失敗は、とことん支える」
――経営判断で大切にしている価値観を教えてください。
基本的に「ダメ」はないと思っています。「こういうことをやりたい」という話があれば、それが利用者さんのためになるのか、地域やお客さんのためになるのかを考えます。
そして、やりたいと思ったのであれば、とことんやってみてほしい。一生懸命やった上での失敗なら、とことん責任を持ちます。ただ、生半端な気持ちでやった失敗は怒ります。挑戦することそのものは、どんどん応援したいと思っています。
――今後の課題についてはいかがでしょうか。
人数が増えてくると、職員同士の意見が食い違ったり、わだかまりができたりすることもあります。今後も「一家族」のような関係をどう維持していくのか、そのコミュニケーションの取り方が課題です。
すべては自分が軸だと思っています。自分の芯をしっかり持って、スタッフや利用者さんたちに伝え続けることが必要です。人間なので「今日は言わなくてもいいかな」と思うこともありますが、そこで諦めずに言い続けることが、自分自身の課題だと感じています。
みんなの生活が潤う組織を目指して
――会社として、今後実現したい目標を教えてください。
僕がいるから会社があるのではなく、利用者さんや職員がいるから会社があり続けると思っています。だからこそ、ここで働いていることで生活が成り立つような組織をつくりたいです。
賃上げなどを通じて、職員の家庭や生活環境をより良くしていく。それができれば、スタッフのモチベーションが上がり、支援の質も向上し、利用者さんのモチベーションにもつながると思っています。
そのためにも、利用したいと思ってくれる方のための枠を確保し、来てくれた方が困らないように仕事を確保していく。そして、一人ひとりの「やりたい」を仕事につなげていきたいです。
利用者さんも職員も、みんなが家族です。家族のためにできることを一つずつ増やしながら、それぞれの「やりたい」を形にしていきたいと思っています。