地域の良いものをITで届ける――くろぶた.ねっとから広がる鹿児島への貢献
株式会社コレクトプラン 代表取締役 神薗 俊一氏
少人数で事業を運営しながら、「くろぶた.ねっと」を中心にWebサポートやネットワークシステムなどを手がけています。約20年前、鹿児島ではまだインターネット通販が十分に広がっていなかった中、地域の良い商品を全国へ届けたいという思いから通販サイトを立ち上げました。現在は鹿児島のIT人材不足という地域課題にも目を向け、地元で技術者が育ち、活躍できる環境づくりにも関わっています。本記事では、事業の現状や創業の背景、これまでの歩み、鹿児島のIT産業への思い、今後の展望について伺いました。
鹿児島の魅力をITで届ける
――現在、どのような事業を中心に展開していますか。
現在は3人で事業を行っているため、できることには限りがあります。その中で中心になっているのが「くろぶた.ねっと」です。もう20年ほど続けている事業で、現在はこちらをメインに運営しています。
そのほか、Webのサポートやネットワークシステムなどにも取り組んでいます。CRMについてもオープンソースを活用し、企業向けにサポートできる形ではありますが、リソースの兼ね合いもあり、今はなかなか十分に手が回っていない状況です。
以前取り組んでいた「おくやみ情報」については、現在は参加される方が限られており、今後続けるかどうかを検討している段階です。
――「くろぶた.ねっと」を始めた背景を教えてください。
約20年前の鹿児島では、ITやインターネットを使った販売がまだ遅れていると感じていました。鹿児島には黒豚や黒牛、鶏など多くの畜産品がありますが、良い商品をつくっていても売れずに困っている事業者が多くおりました。そこで、通販サイトを通じてそうした事業者を応援できないかと考えたことが始まりです。当時はネット通販そのものが今ほど一般的ではなく、最初は何週間も注文が入らないこともありました。半年ほどで「どうしようか」と考えるほど厳しい時期もありましたが軌道に乗り始めたのは3年ほど経ってからでした。
その後、県の補助金を活用して人を雇い、広告を出すなどしながら少しずつお客様が増えていきました。加工食品をつくる方々も「もっと売りたい」という思いを持っていて、勉強会を開くと50人ほど集まることもありました。
挑戦を重ね、故郷鹿児島へ
――ITの仕事に進んだきっかけを教えてください。
高校卒業後は関東の大学へ進みました。大学では経済学部でしたが、就職した会社では電算室に入り、そこでさまざまなことを学びながら仕事をしていました。
もともと大学ではフェンシングをしていて、就職した会社でも競技を続けました。奈良県で国体が開催された際には、奈良に本店がある会社だったこともあり、東京で採用された後に奈良へ異動しました。そこでメンバーにも恵まれ、国体で優勝することができました。その後、本格的に電算室の仕事に携わるようになりました。
関東のリーグ戦では最多勝利を取ったこともあります。当時は今よりも競技人口が少ないスポーツでしたが、自分にとって大きな経験になりました。
――その後、鹿児島へ戻られたのですね。
東京にある会社から関西へ転勤し、その後27歳で退職して鹿児島へ帰りました。若い頃は東京にも住んでいたため、地方に対して不便さを感じることもありましたが、年齢を重ねる中で鹿児島の良さも感じるようになりました。
現在はリモートでも仕事ができるようになり、鹿児島にいながら横浜の会社に勤めている人も周囲にいます。東京で会社を起こした後、地元に支社や営業所をつくり、鹿児島に貢献しようとする方も増えていると感じています。
鹿児島のIT人材を未来へ
――鹿児島のIT業界では、どのような課題を感じていますか。
大きな課題は人材です。高度な開発ができる人や研究職を目指す学生は、大企業や都会の企業へ就職するケースが多くあります。鹿児島は中小企業が多いため、各社の中で一人、二人と人材を育て、プログラミングができる若手が成長していく形が中心だと思います。
私は鹿児島の情報サービス産業協会の理事もしており、ITやAIの技術者をどう育てていくかという話し合いにも関わっています。地元の企業としては、鹿児島で育った人材にできるだけ地域に残ってもらいたいという思いがあります。
――AI人材を育てていくためには、何が必要だと考えていますか。
やはり環境だと思います。鹿児島ではもともとIT人材自体が少なく、本格的に研究したい学生は東京や大阪などを目指します。その気持ちはよく分かりますが、事業者としては地元に残ってくれる人がもう少し増えてほしいと考えています。
大学でもIT系の学部を新しく設ける動きがあるようで、地元に残る学生が多い大学でIT人材が育っていけば、鹿児島の企業にとっても大きな力になると思います。
ITでつなぐ鹿児島のこれから
――今後、どのようなことに取り組んでいきたいですか。
鹿児島は農業産出県なので、県全体としても農業に大きなウエイトを置いています。私自身も、その分野をITの立場から何かフォローできないかと考えながら活動しています。
鹿児島は南北に長く、人の往来が簡単ではない地域でもあります。だからこそ、ネットやシステムを活用することでできることはあると思っています。AIを含めたDXが進めば、鹿児島ならではの仕組みやシステムが生まれる可能性もあるのではないでしょうか。
――これからの会社について、どのような可能性を感じていますか。
当社のWebサイトでは、まだAIに関する取り組みをほとんど打ち出していないため、AIに関する相談はそれほど多くありません。今後は、そうした部分もアピールしていく必要があると感じています。
一方で、くろぶた.ねっとは20年近く続けてきました。立ち上げ当初は非常に厳しかったものの、検索で上位に表示されるようになり、公的な機関からサイトを紹介してもらったことなども重なり、少しずつ安定していきました。コロナ禍でも、自宅でより良いものを食べたいという需要があり、販売は続きました。
これまで鹿児島の良い商品をインターネットで届けてきた経験を生かしながら、これからも地域の産業をITの側から支えていければと考えています。