編み物を通して、人と人をつなぐ――PALE ONEが届ける新しい毛糸の世界とものづくり
株式会社PALE ONE 田岸 佑理氏
株式会社PALE ONEは、韓国から毛糸や生地、資材などを仕入れ、オンラインショップや路面店舗、POPUPなどを通じて販売する会社です。淡い色味や柔らかな雰囲気、ラメ感などにこだわった毛糸を取り扱い、編み物を楽しむ人に向けて、毛糸そのものだけでなく、そこから生まれる作品を提案。アパレル業界での経験を経て起業した田岸佑理氏に、創業の背景や商品へのこだわり、今後の展望、そして編み物を通じた社会とのつながりについて伺いました。
新しい提案で、編み物の楽しみ方を広げる
――現在の事業内容について教えてください。
PALE ONEは「淡く儚い雰囲気で世界に一つだけのデザインに出会えますように」をコンセプトに、毛糸を中心としたハンドメイド関連商品の企画・販売を行っています。
韓国を中心にセレクトした毛糸だけでなく、オリジナル毛糸にも力を入れています。また、毛糸や資材の販売だけでなく、オリジナルの編み図や編み物を楽しむためのグッズ販売など編み物を軸とした幅広い事業を展開しています。
オンラインショップでの販売に加えて、埼玉県大宮にある路面店舗や全国各地でのPOPUPなど、お客様が実際に商品を手に取り、編み物の楽しさに触れられる場づくりにも取り組んでいます。
淡く儚いカラーや思わず手に取りたくなるような可愛らしい毛糸。デザインを考える時間、編む時間、完成まで楽しんでもらえるような、PALE ONEならではの毛糸や資材をお届けしています。
――他社との違いや、商品の強みはどのようなところでしょうか。
私たちはブランドのコンセプト、世界観を大切にしています。
PALE ONEの意味は、PALEが「淡く儚い」という意味、ONEには「一つだけの」という意味。そして、ONE=Firstを掛けて「初めての方でも手が伸ばしやすい」Shopを目指しています。
編み物が初めての方にも、気軽に手に取っていただけるような、可愛くて扱いやすい毛糸も取り揃えています。「編み物を始めてみたい」と思った方が、毛糸を選ぶところからワクワクできるように、色や素材、デザインにもこだわっています。
トレンド感のあるカラーやデザイン性の高い毛糸を取り入れることで、「編み物=手芸」という枠にとらわれず、ファッションやライフスタイルの一部として編み物を楽しむ新しい層にもアプローチしています。
編み物は、作品によっては一つ完成させるまでに1カ月ほどかかることもあります。「せっかく同じ時間をかけて編むのであれば、とびきり可愛い作品を編みたい」「自分だけのオリジナルのデザインや世界観に出会ってほしい」そんな想いを大切にしています。
アパレルでの経験から、編み物の世界へ
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
父が会社を経営している姿を身近で見てきたことが、企業を考えるきっかけとなりました。経営には様々な難しさや責任がある一方で、自分の考えや想いを形にし、多くの人に笑顔を届けていく姿をみて、「自分もいつか起業したい」という気持ちが芽生えました。そのために経験を積もうと考え、もともと好きだったファッションの業界を選びました。
アパレルの仕事をする中で、学びたいことを30歳までに学び、次の道に進もうと決めていました。退職した後に何をするかは具体的に決めていなかったのですが、その期間で目眩の病気を患いました。1年ほど療養している中で、何気なく始めた編み物でしたが、作品が少しずつ形になっていく楽しさや、自分で0からデザインを考え、完成に至るまでの過程に魅了され、いつの間にか編み物の虜になっていました。「自分で作る楽しさ」だけでなく、完成した作品を身に着けたり、大切な人に贈ったりできることにも魅力を感じ、編み物の持つ奥深さにどんどん惹かれていきました。
編み物にどんどん夢中になる中で、「こういう毛糸や、こんな商品があったらいいのに」と思うことが増えてきました。しかし、自分が思い描くようなものになかなか出会えず、「ないのなら、自分で作ってみたい」と思うようになったことから、毛糸や編み物についてより深く調べるようになりました。色や素材、質感など、毛糸ひとつにも様々な魅力があることを知り、もっと自分らしい形で編み物の楽しさを届けたいという想いがPALE ONEを始めるきっかけにつながっていきました。
――会社を立ち上げる際には、働き方についての思いもあったのでしょうか。
アパレルで働いていたとき、女性だけの職場にいたこともあり、女性が結婚や出産を機にキャリアを諦めるかどうかという選択を迫られている場面を多く見てきました。自分で会社を立ち上げるなら、女性が働き続けられるような会社にしたいという思いを持っていました。また、自分がこれまで働いてきた中で「こうなったらいいのに」と思っていたことを少しずつ取り入れているところです。例えば、体調が優れないときには無理をせず休めるように、スタッフ同士で支えあう環境を整えています。また、一般的な8時間勤務ではなく、1日7時間勤務を導入し、仕事とプライベートの両立を大切にできる働き方を目指しています。
2024年11月22日に個人事業主としてWebショップをオープンし、その後ポップアップを開催する機会にも恵まれました。たくさんのお客様に来ていただいたことで一気に広がり、2025年8月に法人化、2026年3月には埼玉県大宮に路面店舗をオープンし、現在はスタッフ7人で運営しています。
「買った後」まで提案できるブランドへ
――今後、力を入れていきたいことを教えてください。
まずは長く続けられる企業にするために、PALE ONEをまだ知らない新しいお客様に選んでいただけるような取り組みを考えていきたいです。
これまでは韓国の毛糸を直接仕入れて販売することが多かったのですが、最近は自分たちで染めを依頼し、「こういう色味にしたい」「こういう糸を一緒にミックスしたい」といった提案をメインで行っています。今後は、自社だけのオリジナル商品をどんどん増やしていきたいと考えています。
また、毛糸を販売するだけではなく、その毛糸で何を作れるのか、購入した後のところまで提案できるブランドでありたい。編み物は時間がかかるからこそ、「この毛糸でこんな作品が作れる」というところまで伝えていきたいです。
――組織づくりについてはいかがでしょうか。
組織づくりにおいては、小規模チームだからこそ、経験の浅いスタッフにも積極的に仕事を任せて、新しいアイデアを形にする機会を提供しています。また、AIの普及が進み、様々なことをAIに任せられる時代だからこそ、自分自身で考え、試行錯誤し、形にしていくことを大切にしてほしいと考えています。同じやり方を繰り返すのではなく、「もっとこうしたらお客様が喜んでいただけるのではないか」と常にお客様ファーストになり、スタッフ一人一人が考えることで、新しいアイデアや価値が生み出されると思っています。
商品の価値を伝え、ブランドを育てる
――現在向き合っている課題を教えてください。
一番の課題は、ブランド価値をしっかり定着させることです。毛糸は、低単価というイメージを持っている方も多く、実際に100円ショップなどでも購入できます。だからこそ、「この価格でも、こんなにかわいい作品が作れる」「既製品を買うのではなく、自分が作りたかったオリジナルのものを作れる」という価値をきちんと伝えていかなければいけません。
価格で競争するのではなく、品質やデザインで選んでもらえるブランドが目標です。そのためにも、インフルエンサーの方に商品を紹介していただいたり、自分たちのSNSでも発信したりとSNSを活用したPRに力を入れています。新規のお客様向けと既存のフォロワー様向けで発信内容を変え、どのくらいの発信力があり、実際にどのくらい購入につながったのかを分析しながら取り組んでいます。
また、編み物を通して、誰かの心が少しでも暖かくなるような活動にも取り組んでいます。その一つとして、病気を向き合う子供たちとその家族を支えるドナルド・マクドナルド・ハウスへの作品提供など、編み物を生かした支援活動を行っています。「編む」という時間や、ひとつひとつ心を込めた作品が、誰かの笑顔や支えにつながることを大切にしています。編み物を通して、人と人のつながりや社会への貢献にも繋げていきたいと考えています。
一人の時間と旅で、視野を広げる
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
休日は仕事から少し離れて、自分自身と向き合う時間を大切にしています。最近では、一人でフランス旅行に行きました。新しい場所や景色に触れることでリフレッシュすること、日常から離れて得た新しい感覚やインスピレーションを、また仕事やモノづくりにも活かしていきたいと思っています。
今後は、まずは長く続けられる企業を目指し、オリジナル商品を増やしながら、毛糸を買った後の楽しみまで提案できるブランドにしていきたい。これからも、編み物を通して人と人をつなぎ、「楽しい」「かわいい」と思える時間や笑顔を増やしていきたいと思っています。