サッカーを通じて人を育てる――スポーツの杜が目指す、一人ひとりの可能性を伸ばす環境づくり
一般社団法人スポーツの杜 代表理事 服部 洋一氏
子どもたちの個性を伸ばす指導を続ける一般社団法人スポーツの杜。サッカーの技術だけでなく、人間性を育むことを軸に活動しています。その原点には、「子どもたちの未来を支えたい」という強い想いがあります。本記事では、代表理事の服部洋一氏に、クラブの特徴や設立の経緯、組織づくり、今後の展望について伺いました。
目次
可能性を信じ、一人ひとりを育てるクラブづくり
――現在取り組まれている活動や、チームの特徴について教えてください。
サッカークラブの運営を通じて子どもたちの成長を支える活動に取り組んでいます。
特徴は、セレクションを行わず、一人ひとりの個性や可能性を大切にしていることです。以前、ナショナルトレセンで指導に携わり、選ばれなかった多くの子どもたちがいることを実感しました。それぞれに良さがあるのだから、その力を伸ばせる環境をつくりたい。そんな想いからクラブを立ち上げました。
指導で大切にしているのは、苦手な部分を無理に克服させるのではなく、その子が持つ長所をさらに伸ばすことです。また、サッカーの技術だけでなく、人間性を育むことも大切にしています。年代に応じた関わり方を意識し、社会で活躍できる人材を育てています。
中学生年代では進路サポートにも力を入れています。卒業生が指導者として戻り、後輩を育ててくれていることも、人を育てるという考え方が受け継がれている証だと感じています。
――クラブの理念やビジョンについて教えてください。
理念として掲げているのは「人材育成」です。サッカー選手として活躍する子もいれば、一般企業へ就職したり、自分で事業を始めたりと、それぞれが違う道を歩んでいきます。どんな道を選んだとしても、その土台となる人間性がしっかり育っていなければ、本当の意味で社会で活躍することは難しいと思います。
そうした考えから、中学生年代では進路サポートにも力を入れています。全国の高校とのつながりを活かし、一人ひとりの性格や学力、サッカーの特徴を踏まえながら、本人の希望も尊重して進学先を提案しています。
サッカーを教えることだけが私たちの役割ではありません。子どもたちが将来、社会に出て活躍できるよう、一人の人間として成長を支えていくことを使命に活動しています。
人生の転機が導いた、人を育てるという使命
――代表理事になられたきっかけを教えてください。
もともとは20年間サラリーマンとして働き、生産現場や品質管理、営業など、さまざまな仕事を経験してきました。
大きな転機になったのは、自身が病を患ったことです。命を救ってもらったことで、「人はいつか命が尽きる」ということを初めて実感しました。
また、国民体育大会で女子サッカーのスタッフを務めていた際、仕事の都合で一試合だけ帯同できなかったことがありました。その試合後、選手たちから「なぜ試合に来てくれなかったのか」と声をかけられ、自分を必要としてくれている子どもたちがいることに気付かされたんです。
命を救ってもらったからこそ、これまでの経験を子どもたちのために活かしたいと思うようになりました。そして、自分を必要としてくれる子どもたちの存在が、その想いを後押ししてくれたんです。それが法人設立を決意したきっかけでした。2013年にNPO法人を立ち上げ、翌年からサッカークラブの活動をスタートしました。
――経営判断の軸となっている価値観を教えてください。
独立を考えていた頃、多くの経営者の方に相談したのですが、皆さんから共通して言われたのが「まず行動しろ」という言葉でした。考え込む前に一歩踏み出し、行動しながら修正していけばいい。その考え方は、今でも私の判断の軸になっています。
できない理由を探すのではなく、「どうすればできるのか」を考えることを大切にしてきました。何事もまず動いてみることで見えてくるものがありますし、その姿勢はスタッフだけでなく、子どもたちにも伝えています。
挑戦する前から諦めるのではなく、自分で方法を考え、一歩踏み出してほしい。そうした積み重ねが成長につながると信じています。
信頼を育むコミュニケーションが組織を強くする
――スタッフとのコミュニケーションで大切にしていることを教えてください。
日頃から大切にしているのは、報告・連絡・相談を欠かさないことです。こちらからも「今日はどうだった」「何か困ったことはなかった」と積極的に声をかけ、その日に起きた課題はできるだけその日のうちに解決するよう心がけています。
LINEや電話も活用しながら、こまめに情報を共有しています。そうした日々の積み重ねが、より良い指導環境につながると思っています。
――どのような人と一緒に働きたいと考えていますか。
私が求めているのは、「仕事ができる人」よりも「周りに気を遣える人」です。自分一人で成果を出すのではなく、保護者や選手、スタッフなど、周りに気を配りながら支えられる人と一緒に働きたいですね。
知識だけで物事を語るのではなく、自ら現場で行動し、周囲をサポートしながらリーダーシップを発揮できることも大切です。子どもたちを育てる組織だからこそ、スタッフ自身が率先して動き、周りを支えられる存在であってほしい。そんな人と一緒にクラブをつくっていきたいと思っています。
スポーツを起点に、未来を支える仕組みを広げる
――今後挑戦していきたいことについて教えてください。
現在はサッカーを軸に活動していますが、将来的には「スポーツ」「医療」「食」「学」の4つを柱に、成長を支える体制をつくっていきたいと思っています。
すでに専属の整形外科医と理学療法士と契約し、保護者やスタッフが相談できる体制を整えています。また、栄養セミナーを開催するなど、食への取り組みも始めました。今後は学習面でのサポートも含め、少しずつ形にしながら、安心して成長できる仕組みを充実させていきたいですね。
――今後の課題や取り組みについて教えてください。
一番の課題は資金面と人材です。現在は大会運営を含め、多くの業務を担っているため、一度に手を広げてしまうと、すべてが中途半端になってしまう恐れがあります。だからこそ、他団体とも連携しながら、一歩ずつ着実に取り組みを進めています。
この一年はホームページをリニューアルし、SNSなど情報発信にも力を入れてきました。ホームページからの問い合わせも以前より増えています。今後も広報活動を充実させながら、より多くの子どもたちと出会える環境をつくっていきたいですね。
子どもたちの未来を思い描くことが、日々の原動力
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
正直なところ、休みらしい休みはほとんどありません。それでも、子どもたちやサッカーのことを考えながら、「次の練習ではこうしてみよう」「この試合ではどう指導しよう」と考える時間が、自分にとっては一番の活力になっています。どんな時間を過ごしていても、頭のなかには子どもたちのことがあります。
これからも一人ひとりの成長に寄り添いながら、「かっこいい大人」が育っていく環境を広げていきたいですね。