「できない」と言わない姿勢で、理想の建築を形に――一人ひとりの想いに寄り添う設計
株式会社冨田秀雄建築アトリエ 代表取締役 冨田 秀雄氏
株式会社冨田秀雄建築アトリエは、住宅や別荘、店舗を中心に、お客様の想いやこだわりに寄り添った建築設計を手がける設計事務所です。大手住宅メーカーなどでは対応しきれないような個性的な要望にも柔軟に向き合い、素材やコストに制約がある場合でも、その条件の中で「最高のもの」をつくることを大切にしています。本記事では、代表取締役の冨田氏に、設計へのこだわりや仕事に対する価値観、これまでの歩み、今後の展望について伺いました。
目次
お客様の想いを形にする「町の診療所」のような設計事務所
――現在の事業の特徴や、強みについて教えてください。
言ってみれば「何でも屋さん」というか、「町の診療所」のような設計事務所でありたいと思っています。こんな風に暮らしたい、こんな家にしたいというようなお客様の夢を、丁寧に話し合いながら形にしていきたいですね。建築に携わって40年経ち、あらゆる用途の建物を設計してきましたので、どのようなご要望にもお応えできると思います。
――お客様からは、どのようなご依頼がありますか。
「いくら以上の建物でなければ設計しない」といった線引きはしていません。お客様の要望や気持ちを大切にして、意見や考えが合えば、ドアノブ一つのデザインを頼まれてもお受けします。
お客様が本当に何を求めているのかを考え、その人に合わせて柔軟につくっていく。それが自分の強みだと思っています。
技術者としての経験を経て、設計事務所を立ち上げる
――建築の道に進まれたきっかけや、設計事務所を始められた経緯を教えてください。
設計事務所を始める前は、竹中工務店で設計をしていました。20年勤務したのち、独立して現在の設計事務所を始め、もう20年になります。
最初は、自分の形やデザイン、自分自身のスタイルを売り込もうと思っていました。ただ、いろいろなお客様と出会う中で考え方が変わっていきました。
一見自分のスタイルと違う考えの人と出会っても、よくよく会話を重ねていくうちに、お互いのスタイルが融合し、自分のスタイルを超えた新しい考え方やデザインが生まれてくる場合があります。自分にフィルターをかけず、お客様と共に考えることで、どんどん自分の考えやスタイルも更新されてきたように感じます。
――経営や仕事をする上で、大切にしている考え方はありますか。
一番大切なのは、人間関係だと思っています。建物は私一人でつくるものではありません。建築主がいて、設計者がいて、工務店がいて、大工さんなど施工する人がいて、初めて完成します。
だから、建物に対する愛情をみんなで持つことが大切です。こちらが一生懸命取り組めば、その気持ちは工務店にも伝わり、そこから実際につくる人たちにも伝わっていく。みんなで気持ちを一つにして、いいものをつくることを大切にしています。
「できない」と言わず、みんなでいい建物をつくる
――一緒に仕事をする方々との関係で、大切にしていることはありますか。
一緒に仕事をしている施工関係の人たちは、「できない」と言わない人が多いです。
「こんなのはできない」と最初から決めつけるのではなく、まずできることを前提にして、どうしたらいいかを考える。そういう人たちと仕事をしています。
建築では、設計者だけが頑張っても良いものはできません。設計図面が良くても、実際につくる人の気持ちが離れていたら、そこに思いは入らないと思います。だからこそ、同じ方向を向いて仕事ができる人たちとの関係を大切にしています。
――お客様とのコミュニケーションでは、どのようなことを大切にしていますか。
お客様は、空間についてすべてを分かっているわけではありません。だから私は、自分自身がいろいろな建築を見て、実際に体感して、「これは本当に気持ちいいな」と感じたものを、自分なりの言葉や図面、模型などに置き換えて提案しています。
一方で、お客様のこだわりも大切にします。以前、服飾デザイナーの方の建物を設計したことがありますが、その方はボタン一つ、糸の色、チャックの色など細部にまでこだわりを持ってお仕事をされているが故に、建築についても同様のスタンスを持っておられました。設計には時間も労力もかかりましたが、ひとつひとつ丁寧に選び、作り込む大切さを再認識しました。
お客様が100%満足できるものをつくりたいという気持ちに応えながら、一緒に完成させていくことが大切だと思っています。
ご縁を大切にしながら、面白い仕事とのつながりを広げる
――今後の展望について教えてください。
私は自称建築オタクといってよいほど建築が大好きで、時間があれば建物見学をしております。その時感じた事をホームページのブログで紹介しており、その記事に共感してくださった方からのお仕事の依頼もあります。これからも建築のすばらしさや魅力をどんどん発信していきたいと思っているので、その記事を通して建築に興味を持ってくださる方がますます増えていくとうれしいですし、そこから新たなご縁が生まれたら喜びです。
紹介の仕事も沢山あります。20年以上前に自宅を設計した際に知り合ったプロの写真家の方から、何年も経ってから青森県むつ市の仕事を紹介していただいたこともあります。もともと縁もゆかりもない土地でしたが、人とのご縁が仕事につながりました。
――これから、どのような仕事を増やしていきたいですか。
建物づくりに一生懸命で、かつこだわりのあるお客様とつながって、その方が喜ぶ姿をこれからも見ていきたいです。完成した建物が楽しく使われ、その建物が120%活用されるのが私にとっての喜びですから。
建物が完成して、そこに住んでいる人の満足度が高ければ、そこから自然に広がっていくのではないかと思っています。できた建物を雑誌などに出して広げる方法もありますが、お客様によっては掲載したくない方もいます。だからこそ、人とのご縁を大切にしながら、これからも一つひとつの仕事に取り組んでいきたいですね。