身体から組織を変える――現場に入り込み、“健康経営”で企業と人を支えるLoopの挑戦
株式会社Loop 代表取締役 田代 涼氏
株式会社Loopは、作業療法士としての専門性を活かし、“健康経営”の観点から企業の課題解決に取り組む企業です。単なる施術やアドバイスの提供にとどまらず、企業の現場に入り込み、経営層と従業員の双方に働きかけることで、組織そのものの変革を目指している点が特徴です。本記事では、腰痛による労働損失といった社会課題にも向き合いながら、企業と働く人々の双方に価値を提供する同社の取り組みについて、代表の田代涼氏に詳しく伺いました。
目次
現場に入り込み、企業の課題を身体から解決する“健康経営”支援
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当社では、“健康経営”を軸として、企業における課題解決に取り組んでいます。
この事業の背景にあるのは、「腰痛による労働損失が大きな経済的影響を与えている」という社会的な問題です。当社では、こうした課題に対して、単にアドバイスや情報の提供、一時的な施術を行うだけでは根本的な解決にはならないと考えています。
そのため当社では、企業のなかに入り込み、経営者や管理者が描く未来像と、そこで働く従業員の実態を結びつけながら現場で支援を行うことを重視しています。現場では、作業が日々の動作や身体に対してどのような影響を及ぼしているかなどを細かく見極め、「どの動きに注意すべきか」「避けられない作業にどのように対処するか」といった具体的な改善策を提示します。さらに、現場の声をていねいに吸い上げたうえで、実行可能な解決策を導き出すことを大切にしています。
――他社にはない強みはどのような点にありますか。
特徴的なのは、単なる外部支援ではなく、企業の一員のように関わる点です。経営層だけでなく、現場レベルにも深くコミットし、企業独自の取り組みとして仕組み化していきます。
また、そうした取り組み自体を企業の強みとして発信し、採用活動や離職防止につなげていくところまで支援している点も大きな特徴です。当社では、健康経営を単なる福利厚生ではなく、経営戦略の一部として機能させていくところを目指しています。
“問題が起こる手前”で救いたい――作業療法士としての原点と転機
――この道に進まれたきっかけについてお聞かせください。
作業療法士を目指したきっかけは、高齢化社会の進行と医療・介護分野の人材不足が社会問題として取り上げられていたことでした。人の生活や人生に寄り添う仕事に魅力を感じ、資格取得を志しました。
作業療法は、身体機能の回復だけでなく、その人の生活や価値観、社会との関わりまでを支援する領域です。病気や怪我を経験した方が再び社会に戻る、あるいは新たな形で生活を築くための支援に強い意義を感じ、この仕事を選びました。
――現在の事業に至った背景は何だったのでしょうか。
作業療法士として病院で勤務するなかで、「病気や怪我になる前にできることがあるのではないか」という想いが強くなっていきました。治療の現場ではすでに不調を抱えた人と向き合うことになりますが、その前段階で予防できる可能性に気づいたのです。
そこで着目したのが、日常の大半を過ごす「職場」でした。多くの人が一日の中で長い時間を費やす職場環境にアプローチすることで、私自身の専門性をより広く社会に活かせると考え、現在の事業をスタートしました。「自分の経験や知識をどのように活かすか」という問いから始まった挑戦でもあります。
健康・リスク管理・経営戦略が連動する――専門家ネットワークで平時から備える即応体制
――組織運営で大切にしていることを教えてください。
現在は、作業療法士や理学療法士をはじめ、産業医、産業保健師、キャリアコンサルタント、臨床心理士、管理栄養士、トレーナーといったコメディカル領域の専門職に加え、保険の専門家や中小企業診断士までを巻き込んだ多職種ネットワークを構築しています。
組織として重視しているのは、社会情勢や経営環境の変化に対し、いかなる課題にも即座に対応できる「平時からの備え」です。従業員の心身の健康や働きやすさはもちろん、経営戦略や制度設計、万が一のリスク管理まで、多様なプロフェッショナルが平時から有機的につながっているからこそ、クライアント企業の現場に合わせた最適なソリューションを迅速かつ包括的に届けることができます。
――メンバーとの関わり方で意識していることはありますか。
単なる個別の受発注関係ではなく、異なる専門性を持つプロフェッショナル同士が知見を共有し合い、多角的な視点で課題解決にあたれる協働関係を大切にしています。日頃からコミュニケーションを深め、チームとしての連携力を高めておくことこそが、有事の対応スピードと支援の厚みを生み出します。
多様な専門人材がそれぞれの強みを最大限に発揮できるプラットフォームをさらに発展させ、企業とそこで働く人々の持続的な成長を力強く支えていきたいと考えています。
――経営において大切にしている価値観を教えてください。
最も大切にしているのは、「正直であること」です。あいまいな表現や姿勢ではなく、自分の言葉に責任を持ち、誠実に向き合うことを意識しています。特に起業してからは、その姿勢が信頼や評価につながることを強く実感しています。
また、作業療法士の分野において起業する人材を増やしたいという想いもあります。新たな挑戦をする人が増えることで職域も広がり、業界全体の価値向上につながると考えています。
生活にフォーカスした新たな挑戦と、広がる可能性
――今後の展望について教えてください。
今後は、職場に加えて「生活」にフォーカスした取り組みを広げていきたいと考えています。仕事だけでなく、就労後の時間―子育てや介護、趣味といった生活全体にまで目を向けることが重要だと感じているためです。
具体的には、自然環境を活用したリフレッシュの場づくりや、リトリート、デジタルデトックスといった取り組みを進めています。単なる気分転換ではなく、その意味や効果を理解したうえで日常に戻ることで、よりよいパフォーマンスにつながる循環を生み出したいです。
また、障害のある方への旅行支援にも取り組んでいく予定です。これまでの支援経験を活かし、より多くの人が安心して移動や体験を楽しめる環境を整えていきたいと考えています。インバウンドも視野に入れた展開を準備しており、国内外に向けた新たな価値提供を目指しています。
さらに、作業療法士という職種の可能性を広げることも大きなテーマです。従来の医療現場にとどまらず、企業や地域社会など多様なフィールドで活躍できる職域を創出し、雇用の拡大につなげていきたいと思っています。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
新しいことに挑戦し、ワクワクするような取り組みをしている経営者の方と出会いたいと考えています。単に事業内容を知るだけでなく、「この人と何か一緒にやりたい」と感じてもらえるような関係性を築いていきたいです。そうした想いに共感していただける方々とつながり、新たな価値を共に創出していけることを期待しています。