「いいペース」で働ける人を増やす――Epaceが実践する、顧客の自走まで見据えたマーケティング支援

株式会社Epace 代表取締役 佐藤 駿介氏

株式会社Epaceは、SNSマーケティングやインフルエンサーのキャスティングから事業を始め、現在は顧客の事業課題に応じたデジタルマーケティング支援を展開する企業です。個別施策の運用にとどまらず、上流から課題を捉えた提案を行っています。本記事では、代表の佐藤駿介氏に、事業づくりの考え方や組織運営、今後の展望などについて伺いました。

顧客の課題から逆算し、最適な施策を提案する

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

当社では、SNS運用やWeb広告、インフルエンサーマーケティング、記事制作などを中心に、企業のデジタルマーケティングを支援しています。特定の施策を請け負うだけではなく、お客様の目的や事業課題を踏まえ、上流の戦略設計から施策の実行、改善まで一気通貫で支援している点が特徴です。

また、マーケティング支援に加えて、ネイルサロンや飲食店、インテリア関連などの自社事業も展開しています。2019年の創業以来、デジタルマーケティング支援と自社事業の両輪で成長を続け、直近では年商9億円を超える規模となりました。

――御社の強みはどのような点にありますか。

強みは、大きく3つあります。

1つ目は、お客様の課題に合わせて最適な施策を提案できることです。

例えば、SNS運用のご相談をいただいた場合でも、課題を整理した結果、広告やSEO、Webサイト、CRM、採用設計など、別の施策を優先すべきだと判断することもあります。

私たちが大切にしているのは、特定の施策を売ることではありません。お客様の事業成果から逆算し、その実現に必要な打ち手を組み立てることです。

2つ目は、マーケティングの内製化まで支援している点です。

戦略やKPIの設計、施策の実行にとどまらず、担当者の育成、運用フローの構築、ノウハウの言語化まで支援しています。お客様自身で判断・実行できる領域を増やし、長期的に成果を生み出せる体制をつくることを重視しています。

株式会社ハイスピリットが展開するスマホケースブランド「DEMIU」では、デジタルマーケティング戦略の設計やMeta広告、Google広告、TikTok広告などの広告と並行して、広告運用組織の立ち上げと内製化を支援しました。その結果、約1年で広告運用の内製化を実現し、支援期間中はROAS500%超を維持しました。

3つ目は、自社でも事業を運営していることです。

ネイルサロンや飲食店、インテリア関連事業などを自ら手がけ、集客や売上だけでなく、採用や育成、店舗運営、収益管理など、事業成長に伴う課題を当事者として経験してきました。デジタル施策による効果もあり、全ての事業で年1000万円以上利益の出るような黒字経営ができていると自負しています。

自ら事業のリスクを負っているからこそ、施策単位ではなく、事業者と同じ目線に立った提案ができることも当社の強みです。

これまでには、Instagramアカウントを立ち上げから10万人規模まで成長させ、売上を5倍以上にして1年間で内製化まで支援した事例のほか、不動産領域にで資料請求単価を約70,000円から3,000円に改善し、YouTube経由で1年で12件の売買案件が成約した実績もあります。自治体や大手企業への支援実績もあり、各業界で培った知見をお客様ごとの事業課題に合わせた提案へと活かしています。

「いいペース」で働ける人を増やすことが、創業の原点

――会社の理念には、どのような思いが込められていますか。

「いいペース」で働ける人を増やすことが、創業時からの変わらない当社のミッションです。

ここでいう「いいペース」とは、単に無理をせず働くという意味ではありません。一人ひとりが好きなことや得意なことを活かし、それぞれの強みを補い合いながら、自分らしく力を発揮できる状態を指しています。

この考えの原点にあるのが、私自身が大学1年生のころに個人事業主として活動した経験です。映像クリエイターやエンジニアをはじめ、さまざまなスキルを持つ人と出会う一方、能力がありながら、働く環境や仕事の進め方が合わず、本来の力を十分に発揮できていない人も多く目にしました。

そうした人たちが、自分の強みを活かしながら働ける環境をつくりたいと考えたことが、Epaceという社名と現在のミッションにつながっています。

――経営者になったきっかけも、その考えが出発点だったのでしょうか。

そうですね。ただ、もともと経営者になること自体を目標にしていたわけではありません。

大学時代にライターや営業代行、SNSマーケティングなどさまざまな仕事を経験するなかで、異なる強みを持つ人たちが互いに補い合うことで、より大きな価値を生み出せると実感しました。

それぞれが自分に合った形で活躍できる場所をつくり、その考えを事業として継続的に実現していくため、大学2年時にEpaceを創業しました。

誠実さを軸に、自分の意見を持てる組織へ

――経営判断で大切にしている価値観を教えてください。

特に大切にしているのは、「誠実さ」「感謝」「互いに価値を与え合える関係性」の3つです。

売上規模や予算の大きさ、市場の成長性だけで案件を判断することはありません。当社が本当に価値を提供できるか、成果に向けて率直に議論できる関係か、双方が長期的に成長できるかを重視しています。

そのため、お客様のためにならないと判断した施策をそのまま受注することはありません。必要に応じて別の選択肢をご提案したり、率直に意見をお伝えしたりすることも、私たちの責任だと考えています。

短期的な売上を優先するのではなく、取引先の企業姿勢や担当者の考え方まで含め、互いに誠実に向き合い、長期的に価値を生み出せる関係を築くことを大切にしています。

――組織運営では、どのようなことを意識していますか。

立場に関係なく、違和感や反対意見を率直に伝え合える組織づくりを意識しています。

経営者や役員の判断が、常に正しいとは限りません。現場に近いメンバーだからこそ、お客様のニーズや施策の変化を捉えられることもあります。そのため、一人ひとりが自分なりの考えを持ち、より良いと思う方法を提案できることが重要です。

当社には、リモートで働くメンバーや業務委託として関わるメンバーも多くいます。細かく指示されるのを待つのではなく、自ら考えて行動し、判断に迷ったときや問題が生じたときにはすぐに相談する。そうした自走とコミュニケーションを両立できる環境を大切にしています。

――採用で重視していることは何でしょうか。

採用で最も大切にしているのは誠実さです。現時点でのスキルだけで判断するのではなく、素直に学び、新しい知識を吸収し続けられるかどうかを見ています。

特にマーケティング領域は変化が速く、AIをはじめ新しい技術も次々と登場しています。そのため、分からないことを素直に認めて学べること、ミスが起きた際にごまかさず誠実に向き合えること、そして、お客様の成果を自分ごととして捉え、主体的に行動できることを大切にしています。

スキルは入社後にも伸ばせますが、誠実に人や仕事と向き合う姿勢は、当社がお客様と長期的な信頼関係を築くうえで欠かせないものだと考えています。

属人化を減らし、より大きな価値を届けられる会社へ

――現在感じている課題を教えてください。

現在の課題は、事業の成長速度に合わせて、組織や仕組みをどのように成長させていくかということです。

現状では、私や一部のメンバーの経験や判断に依存している部分もあります。今後さらに多くのお客様を支援し、安定して高い価値を提供し続けるためには、誰が担当しても一定水準以上の価値を提供できる状態をつくらなければなりません。

そのため、採用や育成に加えて、暗黙知の言語化、業務フローの標準化、評価制度、品質管理の仕組みづくりを進めています。

一方で、すべてを自社だけで抱えることが正解だとも考えていません。自社だけでは十分な価値を提供することが難しい領域については、その分野のプロフェッショナルと連携し、それぞれの強みを生かすことが重要です。

――今後、どのような事業展開を目指していますか。

マーケティング支援では、単発の施策を請け負うだけではなく、事業課題の整理や戦略設計といった上流から、施策の実行、改善、組織づくり、内製化まで一気通貫で支援する案件を増やしていきたいと考えています。

大手広告代理店やコンサルティング会社に依頼されるような規模の案件でも、戦略だけを提示して終わるのではなく、実行段階まで深く入り込み、現場で成果が出るところまで伴走できることが当社の価値です。

同時に、飲食、美容、インテリアなどの自社事業もさらに成長させ、新しい事業を立ち上げていく方針です。

自社事業で得た実践的な知見を再び自社事業に活かす。こうした循環を、今後さらに強くしていきたいと考えています。

マーケティング支援と自社事業の両輪を成長させながら、それぞれの人や企業が持つ強みを生かし、「いいペース」で働ける人を増やすというミッションにつながる事業を、これからも着実に広げていきたいです。

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