テレビを通じて高齢者と家族をつなぐ――技術を生かした「見守り」のかたち
有限会社エヌ・エム・エス 代表取締役 岩井 生ニ氏
有限会社エヌ・エム・エスは、長年にわたりサーバーの保守管理やシステム開発などに携わってきました。現在、特に力を入れているのが、高齢者向け見守りシステム「みるモニ」。市販のテレビを活用し、離れて暮らす家族とのコミュニケーションや見守りを支える仕組みを自社で開発しています。本記事では、代表取締役の岩井氏に、創業の背景や事業の変遷、「みるモニ」に込めた考え、今後の可能性について伺いました。
目次
無線機からコンピューターへ、時代の変化を見据えて創業
――現在の事業につながる、創業の背景を教えてください。
もともとは無線機の業界にいて、アメリカのモトローラの無線機などを販売していました。その後、コンピューターが登場して世の中が変わり始めたことで、「これからはコンピューターの分野にシフトするべきだ」と考えるようになったんです。
勤めていた会社にもかなり提案しましたが、会社全体の業態をすぐに変えるのは難しいものです。当時はコンピューター関連で大きな利益が出ていたわけでもありませんでしたから、仕方のない部分もありました。そこで円満に退社し、自分で会社を立ち上げたのが始まりですね。単純に、私自身がコンピューターを面白いと感じていたことも大きかったと思います。
――創業後は、どのような事業を手掛けてきたのでしょうか。
40年ほど前から、サーバーの保守管理を中心に取り組んできました。クライアントのパソコン導入や保守も含め、企業のシステムを支える仕事です。
ただ、企業のシステムがクラウドへ移行するにつれて、従来の仕事は少しずつ減っていきました。「このままではいけない。何か新しい目玉をつくりたい」と考えて開発したのが、医療関係の受付システム「Epica(エピカ)」です。その中で培ったデジタルサイネージの技術を別の用途に生かせないかと考え、現在の「みるモニ」へとつながっていきました。
操作はボタン一つ、高齢者に負担をかけない見守りシステム
――「みるモニ」は、どのような仕組みなのでしょうか。
市販されているテレビにつなぎ、テレビの状態を24時間確認できる仕組みです。動体検知や室内の温度確認ができるほか、スマートフォンから送ったメッセージをテレビ画面に表示できます。
例えば、耳の不自由な方に「電話してね」と伝えたいとき、家族がスマートフォンからメッセージを送ればテレビに表示されます。高齢者側の操作は基本的にボタン一つです。メッセージを確認したらボタンを押してもらうことで、家族のスマートフォンに「受け取った」という通知を返せます。
高齢者の方がスマートフォンを自在に操作することを前提にしたシステムではありません。だからこそ、できる限り簡単に使えるものにしたかったんです。機械本体だけでなく、Webサイトや管理部分、AndroidとiPhoneのアプリまで自社で開発しています。
――開発後も機能を追加されているそうですね。
5年ほど前から提供していますが、料金は当初から変えていません。一方、機能はアップデートを重ねているため、現在の商品は当初とはかなり違うものになっています。
例えば留守モードを設定しておけば、外出中に家の中で人を検知した際、テレビ画面をつけて警告を表示し、スマートフォンへ通知する防犯機能もあります。また、室内が暑くなった際にはテレビの電源を入れ、エアコンの使用を促すような表示もできるようにしています。
「監視」ではなく、必要なときにそっと見守る
――サービスをつくる上で大切にしていることはありますか。
見守りだからといって、何でも細かく把握できればいいとは考えていません。「みるモニGPS」も、あえて位置をピンポイントで把握する仕組みにはしていないんです。
家にいるのか、外出したのか、だいたいどの辺りまで移動したのかが分かる程度にしています。自分自身でも、常に「ここにいる」と正確に把握されたら嫌ですからね。見守られる側が「監視されている」と感じて、機械を外したくなってしまっては意味がありません。
顧客情報についても、Web上にそのまま載せるような仕組みにはしていません。便利さだけを追求するのではなく、使う方の気持ちを考えながら設計しています。
――利用者からの反応で、印象に残っていることはありますか。
2年、3年、4年と長く使ってくださる方もいます。ご本人が亡くなられたり、施設に入られたりして機器が返却されることもあるのですが、その際に「ありがとうございました」と手紙を添えてくださる方が結構いらっしゃるんです。
「親にこんなことがあったときに役立ちました」と書いていただくこともあり、あれは本当にうれしいですね。そうした声をいただくと、やっぱりこの事業はやめられないなと思います。
災害時や孤独死対策にも、見守り技術の可能性を広げたい
――今後、「みるモニ」をどのように広げていきたいですか。
今後重要になると考えているのが、災害時の情報伝達です。本来、災害情報を早く届ける必要があるのは、足腰の悪い方や高齢者の方ではないでしょうか。しかし、携帯電話を持っていない方には情報が届きにくいこともあります。
「みるモニ」は、緊急時にテレビの電源を自動で入れて、画面上にメッセージを表示できます。例えば津波の危険があるとき、「公民館へ避難してください」といった情報を地域の高齢者へ届ける。テレビを見ていないときでも電源を入れて表示できることには、大きな意味があると思っています。
また、一人暮らしの高齢者が多い住宅で各部屋に導入できれば、孤独死のリスクを減らすことにもつながるかもしれません。実際、不動産関係の方から話をいただくこともあります。
技術的には、利用者から「こういうことに使いたい」「こんな機能ができないか」という声があれば、対応できることはまだまだあります。ただ、良いものをつくったからといって、それだけで売れるわけではありません。そこが難しいところですね。
「みるモニ」は私自身も好きな商品ですし、使ってくださるお客様にも本当に恵まれています。発信することには苦戦していますが、必要としている方に少しでも知ってもらい、安心につながる仕組みとして役立ててもらえたらうれしいですね。