オリーブ栽培の新たな標準をつくる――オリビアスメソッドと農福連携への挑戦

合同会社オリビアス 代表 山本 哲史氏

山本氏は30年以上にわたり、経営コンサルタントとして新規事業開発や中小企業の経営革新支援等に携わってきたなかで、人生の次のテーマとして目を向けるようになったのが「食」でした。農業を学ぶなかで出会ったのがオリーブ。このオリーブに事業機会を見いだしたことが、合同会社オリビアス設立につながりました。独自開発の「オリビアスメソッド」を軸に、オリーブのわい化栽培や農福連携、人材育成などの取り組みを進める山本氏に、オリーブの事業化の背景や将来の展開などについて伺いました。

「なぜできないのか」を問い直し、オリーブ事業を立ち上げる

――長く経営コンサルタントとして活動されてきたなかで、なぜ農業に取り組むようになったのでしょうか。

50代になった頃、還暦が見えてきて、「この先、自分は何をするのか」と考えるようになりました。

経営コンサルタントは、相手の課題を考え、知識やノウハウを提供しながら、相手が目指す方向へ進めるよう支援する仕事です。ただ、自分が年齢を重ねたときに、それをいつまで続けられるのかという思いもありました。

そこで関心を持ったのが「食」です。年齢を重ねても、最後まで関心が残るのは食ではないかと考えました。食料自給率や農業人口の減少にも目が向き、加工や流通より、食の川上にあたる「生産」に興味を持つようになったのです。

その後、農業の学校に1年間通いました。実際に学んでみると、農業は経験則だけの世界ではなく、非常に論理的です。植物がどのように育ち、どうすれば実をつけるのかには理由があり、そこが面白いと感じました。

――そのなかで、オリーブを事業にしようと考えた理由を教えてください。

農業を学ぶなかでオリーブと出会い、本格的に調べ始めたのです。すると、ほかの果樹と比べて、オリーブは栽培技術が十分に体系化されていないのではないかと考えました。

小豆島には長い栽培の歴史があります。ただ、その方法を気候や土壌環境の異なる全国各地にそのまま当てはめても、うまくいかないことがあるのです。地域ごとに試行錯誤している状況でした。

また、オリーブは一般的に、植えてから実がつくまで5年ほどかかると言われています。事業として考えると、5年間売上がないのでは参入しにくいのが実情です。一方で、国内にはオリーブオイルの大きな市場があり、そのほとんどを輸入に頼っています。

そこで私は、「5年かかるなら2年や1年にできないのか」「そもそもなぜできないのか」と考えました。できない理由を1つずつ分解し、改善策を考えながら検証してきたのです。

これは、コンサルタントとしての経験が大きいと思います。既存の常識をそのまま受け入れるのではなく、「なぜそうなのか」と疑問を持つことを大切にしてきました。私は、誰もやっていないこと、つまり0から1にするところに価値を感じています。

農福連携を「作業支援」で終わらせず、商品価値につなげる

――農福連携に取り組むようになった背景を教えてください。

私の長男には知的に障がいがあり、現在は就労継続支援B型の事業所で働いています。以前から、努力した分だけきちんと収入につながる仕事をつくれないかという思いがありました。

福祉事業所のコンサルティングをした経験もあります。ただ、それだけでは形として残りにくいと感じたのです。そこで、自分で事業をつくる必要があると考えるようになりました。

オリーブには、植え付けや栽培、収穫、加工、販売まで一連の仕事があります。一連の工程を見ていくなかで、障がいのある方にも担える仕事があるとわかってきたのです。

例えば、虫取りが挙げられます。私の息子は虫取りが好きで、障がいのある方のなかには同じ作業を繰り返すことが得意な人もいます。そうした強みとオリーブ栽培を組み合わせられないかと考えました。

――農福連携を、どのような事業モデルにしていきたいと考えていますか。

私は無農薬栽培に取り組んでいます。無農薬で栽培する上では、虫対策と草対策が大きなポイントになります。

虫を取る、草を刈るといった仕事を、単なる補助作業にはしたくありません。無農薬の商品を成立させるために欠かせない役割として位置づけたいと考えています。

目指しているのは、「障がい者がつくったから買ってください」という商品ではありません。無農薬の国産エクストラバージンオリーブオイルとして、それ自体に価値があり、適正な価格で選ばれる商品をつくることです。

その品質を支える仕事を障がいのある方が担います。その結果として工賃を上げていくことが、私の目標です。農福連携を商品の価値そのものにつなげたいと考えています。

オリビアスメソッドを磨き、次世代へ受け継ぐ

――現在、オリビアスではどのような展開を進めていますか。

現在は「オリビアスメソッド」という技術を中心に、農福連携やソーラーシェアリング、都市型オリーブ地域活性化モデルなど、複数の成功モデルをつくろうとしています。技術やサービスを説明するだけでは、なかなか信用してもらえません。重要なのは、実際の成功事例を積み上げることです。

これまでの実績から、実をつけるための方法論はかなり確立できてきました。ただ、農業は自然が相手であり、地域によって気候も土壌も違います。

そのため、オリビアスメソッドに完成形はありません。毎年ブラッシュアップし、学術的な知見も取り入れながら、地域にあわせて進化させていく必要があります。

その1つが、オリーブの「わい化栽培」です。わい化栽培そのものは、リンゴなどではすでに行われています。ただ、オリーブで体系的に取り組んでいる例はほとんどありません。

一般的には大きな木に育てますが、私たちは樹高を約2メートルに抑え、より効率的、合理的に栽培する方法を進めています。

従来の栽培方法を否定するつもりはありません。大きな木で育てたい人は、従来の方法を選べばよいでしょう。一方で、新規就農者や小さな農地から始めたい人にとって、わい化栽培が新しい選択肢になればいいと考えています。

――今後、特に挑戦していきたいことを教えてください。

業界では珍しい部屋の中で育てる観賞用の「実付きプチオリーブ」を開発、約3年かけて量産技術を体系化しました。2027年に横浜で開催される世界的な花のイベントへの出展も決まっています。ここでこの「実付きプチオリーブ」を展示します。

海外から来る方々がこの商品を見てどのような反応をするのか、確認したいと思います。将来的には、「実付きプチオリーブ」の生産技術を海外へ展開することも考えています。

「養成講座」という新たな取り組みで後継者をつくる

――次世代を担う後継者についてはどう考えていますか。

弊社のなかだけで後継者をつくる必要はないと考えていて、2026年から1年コースの養成講座を始めました。クライアントや受講者のなかから、この技術を次の時代にあわせて発展させてくれる人が現れることを期待しています。

そして、私は70歳頃までに、成功モデルをしっかりと形にすることが目標です。その後は若い人たちが技術を引き継ぎ、さらにスケールアップしていく姿を思い描いています。

その先で、オリーブのわい化栽培が1つのスタンダードになり、「オリーブでもこういう栽培ができる」と当たり前に認識されるようになれば嬉しいです。自分がいなくなった後も技術が残り、次の世代によって進化していく。そこまでつながる事業にすることが、私の目標であり、願いです。

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