木に関わる仕事を通じて、挑戦と思いを形に――株式会社ABiLiTYが描くこれから

株式会社ABiLiTY 代表取締役 伊藤 貢氏

山へ入り、木を伐り出し、丸太として街へ届ける――。 秋田県秋田市に拠点を置く株式会社ABiLiTYは、林業を中心に、未来の森を育む植林や下草刈り、街中・企業敷地内における特殊伐採まで、木にまつわるあらゆる事業を幅広く手掛ける企業です。20代を中心とした若いメンバーによるチームワークを強みに、「挑戦思考をリードする」という考え方を大切にしています。本記事では代表取締役の伊藤貢氏に、起業の原点、人の「強み」を引き出す独自の組織論、そして秋田の林業の未来を拓く熱い挑戦について伺いました。

若さとチームワークを武器に、林業の「新しい風」になる

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

主軸となっているのは、山で木を伐採して丸太として下ろしてくる林業の現場です。それに加え、木を伐る前段階としての森づくり――苗木を植えたり、草を刈ったりする作業も行っています。

さらには「街中や企業の敷地内にある木が大きくなりすぎて困っている」といったご要望に応える伐採事業まで、木に関わることなら幅広く手広くて手掛けています。

――業界内での強みはどのような点にありますか。

創業5年目とまだ若い会社ではありますが、その「新しさ」こそが最大の強みです。メンバーの平均年齢は20代と非常に若く、だからこそ業界の固定観念に捉われず、新しい技術や考え方を柔軟に取り入れることができます。

そしてもう1つ、絶対に負けないと言えるのが「チームワークの良さ」です。日頃からコミュニケーションが活発で、現場での息の合い方は抜群ですね。

――会社として大切にしている理念や考え方について教えてください。

激変する現代において、「変化しない安定」は、実質的な停滞だと考えています。目まぐるしく変化する社会や自然環境の中で、現状維持に甘んじることなく、成長していける自分たちでありたい。

だからこそ、変わりゆく時代をリードし、現状を更新し続ける「挑戦思考をリードする」存在でありたいと考えています。伝統を守るだけでなく、新たな技術や視点を積極的に学び、未知の領域へ一歩を踏み出す姿勢こそが、これからの林業を切り拓く力になると思います。

そして、その挑戦のプロセスにあるのが「成長を通じて豊かさを知る」という価値観です。

現場での技術や知識を高めることはもちろん、困難を乗り越える中で人間として成長すること。その歩みを通じて得られるものは、単なる経済的な価値だけでなく、自然と対峙しながら命を育む誇り、仲間とともに大きな成果を遂げた喜び、そして自らの手で地域や未来の山々を豊かにしているという実感です。

社員一人ひとりが挑戦によって自らを高め、その成長の先にある「真の豊かさ」を自覚し分かち合える組織へ。私たちは挑戦を恐れず、進化のスピードとともに歩み続けます。

「自分でやってみたい」から始まった経営への道

――経営者になられた経緯を教えてください。

正直にお話しすると、かっこいいストーリーがあるわけではないんです(笑)。20代の頃に会社員として働いていたのですが、昔から根強くあった「自分の力を試したい、自分で事業を動かしてみたい」という思いがピークに達してしまって。

当時はどこか若気の至りで「自分でやったほうが絶対にうまくいく」なんて思っていたのですが……実際に独立してみたら、もう本当に大変で(笑)。経営の厳しさを身をもって知ることになりました。

ただ、どれほど壁にぶつかっても、一度も後悔したことはありません。苦労が大きい分、それ以上に手応えとやりがいを感じています。

――独立後、会社を設立されたのはどのような流れだったのでしょうか。

林業の現場で5年間経験を積んだ後、まずは個人事業主としてスタートを切りました。するとありがたいことに、「一緒に仕事がしたい」と言ってくれる仲間が一人、また一人と集まってきてくれたんです。

仲間が増えるにつれて、社会保険などの環境をしっかり整え、彼らを責任持って守っていく必要性を強く感じるようになり、法人化を決断しました。それが株式会社ABiLiTYの始まりです。

――仕事をする上で大切にしている価値観は何でしょうか。

人は誰しも、絶対に何かしらの優れた能力や才能(Ability)を持っていると信じています。その人の中に眠る能力を見つけ出し、最も輝ける場所で活かすことこそが、経営者である私の最大の役割です。

人はどうしても、相手の欠点や短所といった「黒い部分」に目が向きがちですよね。ですが、私はその人の強みや人柄の良さといった「白い部分」を徹底的に見つけることを意識しています。短所を責めるのではなく、長所を最大限に伸ばしたいんです。

尊重を前提に、何でも言える関係をつくる

――組織運営で意識していることを教えてください。

現在は社員5名に加え、業務委託のメンバーと共に現場を動かしています。組織づくりで何より前提にしているのは「相手への絶対的な尊重」です。そのうえで、立場を超えて対等に意見をぶつけ合える関係性を目指しています。

「社長と社員」という壁があると、どうしても現場の本音が上がりにくくなりますよね。だからこそ、日頃から「何でも口にできるフラットな空気感」をつくることには、強いこだわりを持っています。

――社員に求める姿勢はどのようなものですか。

一言で言うなら、「仕事に対して100%の情熱を捧げられる姿勢」ですね。林業という仕事、そしてABiLiTYという組織に本気で向き合ってほしい。それくらいの熱量を持って汗を流せる人と一緒に、会社を大きくしていきたいと思っています。

秋田から世界へ。安全と技術を極め、描く夢

――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

ビジネス面では、現在の主流である森林組合さまからの仕事にとどまらず、山主(やまぬし)さんと直接つながり、私たちが直接山を買い取って運用していくスタイルを増やしていきたいと考えています。

そしてもう1つ、個人的にも会社としても情熱を注いでいるのが「チェンソー競技」への挑戦です。

「世界伐木チャンピオンシップ(WLC)」という世界大会につながる国内予選として「日本伐木チャンピオンシップ(JLC)」があり、私自身も出場経験があります。

競技は「安全性・正確性・スピード」の3要素を競う5つの種目で構成されており、特に正確性はミリ単位の精度が求められます。しかし、何より厳しい基準が設けられているのが「安全性」です。少しでも安全を怠ると大幅な減点対象になります。事故と隣り合わせの日常の現場でも「安全」が最優先であるのと全く同じなんですよね。

今後は自身の技術を磨いて結果を出すことはもちろん、いつか「秋田県内でこの大会を主催すること」が私の大きな夢です。地域の林業全体を盛り上げるきっかけにしたいと考えています。

――現在向き合っている課題についてはいかがでしょうか。

技術の向上と、さらなるチームワークの強化です。大会で上位を目指すには、日々の仕事だけでなくプライベートの時間も削って練習を重ねる必要があります。

チーム全体で高い意識を持ち、切磋琢磨できる環境を整えていきたいですね。

新しいことを取り入れながら、自分自身も学び続ける

――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

休日は、ほぼ100%家族と過ごしています。5歳と1歳の子どもがいるのですが、一緒に遊んでいるだけで日々の疲れや悩みが吹き飛びますね。

妻もいつも笑顔で笑ってくれる人なので、家族とたわいもない会話を楽しむ時間が、自分にとって一番のエネルギー充電になっています。

――経営において、これだけは譲れないという思いを教えてください。

どれほど会社が安定しても、決して現状維持に満足せず「新しいもの」を貪欲に取り入れ続けることです。時代の変化スピードは年々増しています。その変化を置き去りにしないよう、私自身が誰よりも学び続けなければならないと思っています。

社員一人ひとりの強みを見つけ、それを仕事の力に変えながら、全員が楽しく働き、全員で成長していく――。それこそが、私が目指し続ける「ABiLiTY」の理想の姿です。

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