210室の自主管理から生まれた賃貸管理システム――エンジニア採用ゼロ、代表1人で開発
ウルスタ株式会社 代表取締役 馬場 生悦氏
不動産会社・賃貸管理会社向けに、賃貸管理クラウド「ウルスタくん」を提供するウルスタ株式会社。代表の馬場氏自身が210室の賃貸住宅を保有し、その約半分を東京から自主管理する中で、市販のシステムが自社の現場に合わないと感じ、自分で作り直したのが始まりです。エンジニアの採用も外注もせず、AIを使って5か月で開発しました。本記事では、起業に至った背景やAIを活用した事業づくり、今後の展望について伺いました。
自分たちの現場に合わないから、作り直した
――現在の事業内容について教えてください。
不動産会社として売買仲介などを行いつつ、不動産会社や賃貸管理会社向けに、賃貸管理クラウド「ウルスタくん」を提供しています。
以前、自分自身が賃貸管理会社を経営していたのですが、賃貸管理は家賃の5%程度が売り上げになる事業なので、毎月の売り上げはそれほど大きくありません。その一方で、不動産会社向けのSaaSは、安くても月額3万~5万円ほどするものが多く、管理会社をやっていた当時は「3万円のシステムを導入するのは結構重いな」と感じていました。
そこで、もっと入り口が入りやすい賃貸管理システムを自分で作ろうと思ったのが、現在の事業につながっています。料金は管理戸数で決まる4プランにして、99戸までなら月額980円(税抜)から使えるようにしています。機能はどのプランも同じで、プランによる機能差はありません。
富裕層の資産形成を見て、不動産業界へ
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
不動産会社を始める前は、サラリーマンとしてデロイト トーマツ税理士法人で働いていました。外資系向けのタックスアドバイザリーの仕事をしていて、いろいろな会社や個人事業主の決算書を見る機会がありました。
そこで、不動産を運用している富裕層の方々を見ていると、僕自身が寝ずに働いていたり、徹夜が当たり前の環境で働いていたりする一方で、不動産を運用しているだけで自分の年収を軽く超えている人がいるんです。「このままではお金持ちになれないな」と思ったことが、不動産投資や宅建業を目指すきっかけになりました。
その後、宅建の勉強をする時間をつくるために自動車メーカーへ転職、仕事が終わってから不動産投資や宅建の勉強をして不動産業界に進みました。
――そこから、現在のSaaS事業につながった理由は何でしょうか。
以前の不動産会社を経営する中で、SaaSの価格が高いと感じていたことが大きいです。「もっと安く提供できるものをつくりたい」と考え、現在の事業を立ち上げました。
以前の会社は5名ほどで運営していましたが、仲介業は自転車操業のようなところもあり、毎月黒字を目指さなければならないプレッシャーがありましたが、その会社をM&Aで売却し、事業責任者としてしばらく携わった後、新しい挑戦としてウルスタを立ち上げました。
一人だからこそ、AIを徹底的に活用する
――現在はどのような組織体制で運営されていますか。
現在は完全に一人です。自分自身、エンジニア経験はまったくありません。それでもAIを使いながらシステムを自作しています。ただ、AIで速く作ることと、業務に預けられる品質であることは別の話です。コードを変えるたびに自動で走る検査を643本用意して、壊れていないことを毎回確かめています。インフラ環境についても、Google Cloudなどを使っていて、かなり本格的につくっています。
不動産仲介についても、ポータルサイトへの掲載から契約書の作成、顧客とのコミュニケーションまで、AIを使って進めています。
営業という「地上戦」が今後の課題
――今後の展望について教えてください。
自社で事業をスケールさせていきます。より多くの不動産会社・賃貸管理会社に使っていただけるようにしたいと考えています。
ウルスタくんは、いま自社が保有・自主管理する210室の業務にそのまま使っています。作って売って終わりではなく、自分たちが毎日いちばん長く触るユーザーなので、使いにくい場所は自分たちが最初に困ります。この形は今後も変えません。
賃貸管理は乗り換えの負担が大きい業務なので、長く使える形で提供し続けることを優先します。
――事業を広げる上で、現在感じている課題は何でしょうか。
営業です。YouTubeやコラムなどのウェブマーケティングにも取り組んでいますが、そうした「空中戦」だけではSaaSを広めるのは難しいと感じています。これからは「地上戦」、つまり営業をしっかりやっていかないといけないと思っています。
もともと会社員時代は、法人営業の経験はありません。だからこそ、ここは今後取り組んでいきたい課題です。
まずはキャッシュを守り、着実に事業を育てる
――経営において、ここだけは譲れないという考え方はありますか。
やはり、キャッシュが枯渇しないように、しっかりマネジメントしていくことです。ウルスタの事業は固定費がほとんどかからない構造なので、すぐにキャッシュが枯渇するような規模ではありません。ただ、別で不動産賃貸業の会社も経営していて、そちらでは金融機関から大きな融資を受けて不動産を運用しています。
不動産賃貸業の会社も自分一人で運営していて、210室を保有しています。そのうち約110室は地元の管理会社に委託し、残り約100室を東京から自分で管理しています。規模が大きくなっても、入出金などのマネジメントは手を抜かずにやっていきたいと思っています。
――休日はどのようにリフレッシュされていますか。
趣味はランニングです。体を動かすとポジティブになれるので、そういう時間を大切にしています。
最近は爬虫類も飼い始めました。レオパードゲッコーというトカゲで、ケージの中を実際の生息環境に近づけることにこだわっています。そういう環境をつくっていくのが、最近は楽しいですね。
これまでの経験を生かしながら、不動産業界で本当に使いやすいサービスを追求し、AIも積極的に取り入れていきます。新しい技術を活用しながら、より多くの不動産会社・賃貸管理会社に使ってもらえるサービスを目指していきたいと考えています。