「命を作品に変える」――AIと音楽で人生の一歩を後押しする Re-Soul Music Project の挑戦
Re-Soul Music Project 代表 森 茂氏
Re-Soul Music Projectは、AIを活用しながら音楽と映像を制作・発信するプロジェクトです。歌詞づくりから楽曲、ミュージックビデオの制作までを手がけるのは、代表の森茂氏。かつてカウンセリングの仕事に携わり、50歳を過ぎて改めて音楽への思いと向き合いました。自身の経験を作品へと変え、誰かが人生の一歩を踏み出すきっかけを届けたい。森氏に、活動の背景と今後の展望を伺いました。
AIを力に、長年の思いを音楽と映像へ
――現在の事業内容について教えてください。
以前はカウンセリングサロンを運営し、約6年間この仕事に携わっていました。ただ、利用する方が減り、サロンを開いていた場所も閉鎖され、事業を続けることが難しくなったんです。当時はChatGPTなどのAIが広がり、人が相談に応じる仕事の役割も変わってきたのではないかと感じていました。
一方で、私自身もAIを使い続けるうちに、本当にしたいことがはっきりしてきました。それが、以前取り組んでいた音楽です。
現在はRe-Soul Music Projectを立ち上げ、アーティスト名「cigel」としてオリジナル楽曲を制作・配信しています。自ら歌詞を書き、AIを活用した楽曲制作から、ジャケット、ミュージックビデオの制作まで手がけ、音楽と映像を一体とした作品づくりに取り組んでいます。
――制作における特徴や強みは何でしょうか。
楽曲のテーマを考えるところから、歌詞、曲の方向性、ジャケットのデザイン、ミュージックビデオ、リリースまで、一連の工程を自分で進めていることです。
作品のテーマは、自分自身の経験や、出会った人の人生、社会の中で感じた疑問などから生まれます。一つひとつのテーマを掘り下げ、歌詞や音楽、映像として表現しています。
さまざまなAIを組み合わせることで、従来は多くの時間や人員を必要とした工程も、個人で進められるようになりました。
これまでに150曲以上のオリジナル楽曲を配信し、40本以上のミュージックビデオを公開しています。
また、外部からの依頼によるテーマソングの納入実績は10本以上、ミュージックビデオの納入実績は5本、プロモーションビデオの納入実績も5本あります。
こうした制作実績を積み重ねながら、AIを活用した個人制作の可能性を広げています。
ただし、AIが作ったものをそのまま出せばいいとは考えていません。作品をどう仕上げるかを決めるのは、あくまで人間です。私自身がプロデューサーとして全体を見ながら、より良い表現を探しています。
好きなことに正直になる「人生の再起動」
――現在の活動を始めた背景には、どのような思いがあったのでしょうか。
これまで起業や副業など、いろいろなことに挑戦してきました。自分に合わなかったり、結果が出なかったりしたこともあります。お金や名誉を目標にすると、一時的には頑張れても、どこかで続かなくなるんです。
振り返ると、私はずっと「宿題を終えてから遊ぶ」という考え方で生きてきたように思います。でも、やりたいことを後回しにし続ける必要はないのではないか。そう考えて、昔から好きだった音楽をもう一度始めました。好きだからこそ、壁にぶつかっても逃げずに取り組める。今はその手応えがあります。
――プロジェクトに込めている理念を教えてください。
私は就職氷河期の時代を経験し、社会が求める価値観になかなか合わせられない苦しさも味わってきました。自分の人生でつまずいた経験を、著書『就職氷河期世代、50歳からの人生再起動』にもまとめています。
これまで人が自分自身の人生を取り戻すための支援をしてきましたが、自分自身も、やりたいことを後回しにしてきた部分がありました。
だからこそ今は、自分の意思で選んだ音楽に取り組んでいます。これまで学んだことや経験を作品に変え、それに触れた人が自分自身の人生を考えるきっかけになればと思っています。
自分が生きてきた時間や、出会った人たちの人生、そこで得た経験を音楽や映像にしていく。私にとって、それが「命を作品に変える」ということなんです。
失敗から学び、調べたらすぐに動く
――経営判断で大切にしていることは何ですか。
これまで失敗して痛い思いをした経験が、判断の土台になっています。ただ、自分の経験だけで決めるのではありません。わからないことがあれば、その分野で成果を出している人に話を聞きます。相談できる相手がいなければ、書店へ行ったり、インターネットやAIで調べたりして情報を集めます。
そして、少しでも答えが見えたらすぐ行動することです。調べて満足してしまっては意味がないですからね。実際にやってみて、うまくいけば続ける。違えば方法を変える。そうやって一つずつ確かめています。
――現在の制作体制と、人の役割についてお聞かせください。
今は私一人で活動していますが、AIがさまざまな作業を支えてくれています。いわばAIが社員のような存在ですね。
ただし、これから人が必要なくなるとは思っていません。AIが見た目には完成した作品を出しても、本当に良いものかを判断し、調整するには人の経験が欠かせません。
また、実際の歌い手や演奏家には、その人の人生経験や技術から生まれる表現があります。AIの可能性を活用しながら、人間の表現と組み合わせることで、新しい作品づくりにつなげていきたいと考えています。
人の「好き」を活かし、次のステージへ
――今後、一緒に働きたいのはどのような方ですか。
何より、その仕事を本当に好きで、やりたいと思っている人ですね。誰かに勧められたからではなく、自分の意思で「これが好きだ」と言える人と仕事がしたいです。
収入のために働くことを否定するわけではありません。ただ、創作の仕事では、好きという気持ちが困難を乗り越える力になります。自分の表現を通じて前向きになれたり、「生きていて良かった」と感じられたりする。そうした思いを持つ人たちと、一緒に作品を生み出していきたいと考えています。
――これから挑戦したいことを教えてください。
AIの登場は、これまでの技術革新と同じくらい大きな転換点だと捉えています。私はこの変化の中で、音楽と映像を軸に、新しいエンターテインメントの形をつくっていきたいんです。
現在はオリジナル楽曲の制作・配信を中心に活動していますが、今後はミュージックビデオなどの映像作品を充実させ、作品の世界観をより広く届けていきたいと考えています。
また、歌い手や演奏家との協業にも可能性を感じています。AIによる制作と人間の表現を組み合わせながら、Re-Soul Music Projectの作品を長く育てていきたいですね。
作品を生み出し、届け続けるために
――今後の課題をどのように考えていますか。
今後の課題は、作品を作ることと、それを多くの人に届けることの両立です。
AIを活用することで、個人でも継続的に楽曲や映像を制作できる環境が整ってきました。一方で、作品を発表するだけで認知が広がるわけではありません。
現在は音楽配信やYouTubeなどを通じて作品を公開していますが、今後はそれぞれの作品がより多くの人に届き、継続的な収益につながる仕組みを育てていくことが課題です。
また、将来的には音楽業界の営業やマーケティングに詳しい方、制作面で協力できる専門家との出会いも必要になると考えています。
ただし、今すぐ組織を大きくすることが目的ではありません。まずは自分自身が作品を生み出し続け、その価値を高めていくことを大切にしています。
――普段はどのようにリフレッシュされていますか。
まとまった休みはほとんどありません。休むとしたら寝ることですね。出張先で少し時間ができたときに、行ってみたかった飲食店や喫茶店に立ち寄ることもあります。移動中は休んだり、自分の楽曲や公開したミュージックビデオを見直したりしています。
それから、頭の中にたまった思いや気になることが、曲になる瞬間も大きなリフレッシュなんです。「ああ、曲が生まれた」と感じられることがうれしい。
今は好きなことに時間を注げています。自分の作品を通じて、誰かが人生をもう一歩前へ進めたらいいですね。