株式会社Numéro Neuf 代表取締役 崎濱カオリ氏
ファッションの世界からワイン業界へ――異業種からの転身を果たした株式会社Numéro Neuf代表・崎濱氏。コロナ禍でのキャリア転換を機に、食用ぶどう品種を活かした日本発のプレミアムワインづくりに挑んでいます。日本ワインへの情熱と、組織運営のこだわり、そして未来への展望を伺いました。
異業種からの挑戦者がどのように日本ワインの新しい可能性を切り拓こうとしているのか、その歩みに迫ります。
日本ワインの新しい可能性を切り拓く
――会社の現状と経営方針について教えてください。
当社は2023年に創業し、食用ぶどう品種を活かしたワインの製造・販売を中心に事業を展開しています。主力商品である「NUMÉRO(ヌメロ)」シリーズは、フルーティーで飲みやすく、初心者から愛好家まで幅広く楽しめる設計です。特に新商品のロゼスパークリングは、フランス人アーティストによるエチケットデザインと高級品種・長野パープルを使用し、華やかさと上質さを兼ね備えています。小容量ボトルで展開することで、気軽に手に取りやすく、日常から特別な場面まで幅広く楽しめる工夫も凝らしています。
私たちの方針は「唯一無二のプレミアム日本ワインを、日本から世界へ発信する」ことです。大量生産・薄利多売ではなく、物語と品質とユニークさで勝負するブランドを築きたいと考えています。
異業種からワイン業界へ飛び込んだ理由
――ワインづくりを始められたきっかけは何だったのでしょうか。
きっかけはコロナ禍でした。私は長年ヘアメイクアップアーティストとして、パリやドイツ、香港などで活動してきました。しかし、感染症の影響で海外渡航や撮影が不可能になり、これまでの仕事のやり方が大きく変わりました。そのとき改めて「自分が次にやりたいことは何か」と考え、長年、大好きだったワインの道に飛び込む決意をしました。
ワイナリーを巡る中で、生産者と出会い、食用ぶどうを用いたユニークなワインの可能性、日本人が持つ繊細な感性と卓越した技術へのリスペクトが、ワイン事業の方向性を決定づけ、さらにナイアガラ種のワインが持つ独特の個性は、世界に通用する魅力があると感じ、そこから本格的にワイン製造へと踏み出しました。
小さな組織だからこそ生まれる柔軟性
――組織運営や社員との関係について意識されていることはありますか。
現在はデザイナーと私の二人を中心に、アルバイトスタッフを含めた小さな体制と外部スタッフで運営しています。大企業のような分業制ではなく、一人が複数の役割を担うこと、そして、その道のプロとお仕事をする事で柔軟な発想とスピード感を大切にしています。
また、ワインの世界にとどまらず、ファッションやアート、スポーツなど異なる分野と積極的にコラボレーションすることを意識しています。既存のワイン流通の枠に縛られず、新しいファン層を獲得することでブランドを育てていきたいと考えています。
世界市場を視野に挑む未来
――今後の展望について教えてください。
直近では、アジア市場への展開を考えています。特にベトナムの食文化と日本ワインとの相性が良く、ワイン需要が広がる可能性が高いと見ています。さらに将来的には、アメリカやヨーロッパ市場でも「日本ワイン」を確立したい。日本のウイスキーが世界で評価されてきたように、日本ワインも同じ地位を築けると信じています。
また、新進気鋭のアーティストとのブランド展開や環境負荷を減らす小容量ボトルや缶ワインの普及など、新しい取り組みにも挑戦していきます。これらの試みは単なる販路拡大にとどまらず、日本ワインの文化的価値を次世代に引き継ぐための重要な布石だと考えています。
経営者としての素顔
――プライベートでのリフレッシュ方法を教えてください。
一番の楽しみは、人と集まって美味しい食事とお酒を囲む時間です。海外や遠方からのオンラインでのやり取りが多く、リアルに人と会う機会が減るとストレスを感じます。そのため、仲間とワイワイ語らいながら食事をすることが最高のリフレッシュになります。
――最後に、経営者として今後大切にしていきたい思いを教えてください。
こだわらないことが、私のこだわりです。既存のワイン業界の常識にとらわれず、柔軟に発想し続けたい。日本独自の食用ぶどう品種から生まれるワインと自身のグローバル性を武器に、世界中の人々に「こんなワインがあったのか」と驚いてもらいたいと思っています。必ず日本ワインの未来を広げていきます。