音楽とアートで「生きづらさ」に寄り添う――Birth神戸がつくる表現型就労支援の場

NPO法人Birth神戸 理事長 萩原 護氏

NPO法人Birth神戸は、障害のある人たちが社会とつながり、自分らしい役割を発揮できるよう支援する団体です。音楽やアートといった「表現」を就労支援の柱に据え、ライブや作品制作、デザイン業務などを通して自己肯定感を育む場づくりに取り組んでいます。本記事では、理事長の萩原護氏に、Birth神戸の現在の取り組みやこれからについて伺いました。

障害のある人の「偏り」を力に変える就労支援

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

当法人では、障害のある方が「表現すること」を通じて自分の力を発揮できるような就労支援に取り組んでいます。一般的な就労支援のように企業で働くことを目指すことももちろん大切ですが、それだけではどうしてもカバーしきれない方も多いと感じてきました。

利用される方の中には、毎日時間通りに通うことが難しかったり、朝起きるのが苦手だったり、いわゆる「一般的な働き方」にフィットしにくい方がたくさんいらっしゃいます。その一方で、絵がものすごく上手だったり、音楽に対する感性が突出していたりと、クリエイティブな面で健常者以上の力を発揮できる方も多いんです。

その「偏り」をマイナスではなくプラスとして社会につなげたいという思いから、音楽ライブの開催やCD制作、アート作品の展示・グッズ化、デザイン業務などを就労支援の一部として行っています。パソコンを使った実務的な作業や、ポスティングなどの仕事も組み合わせながら、一人ひとりが自分の強みを生かせる場面をつくるのが法人としての大きな特徴です。

――Birth神戸ならではの強みはどのような点にありますか。

「表現の場」と「社会との接点」をきちんとつなげていることです。単なる趣味活動ではなく、収益にもつながる仕事として成立させることで、「自分の表現が誰かの役に立っている」「仕事として認められている」という実感を持っていただけるようにしています。

阪神・淡路大震災が導いた福祉の道

――ご自身のキャリアや、Birth神戸を立ち上げられた経緯を教えてください。

若い頃は、福祉の仕事をするつもりはまったくありませんでした。ロックバンドをやっていて、その道で食べていきたいと思っていたんです。ところが阪神・淡路大震災が起きて、状況が大きく変わりました。

テレビで多くのボランティアの姿を見て、「かっこいいな」と強く心を動かされました。そして翌日にはアルバイトを辞め、被災地支援の活動に身を投じたんです。そのなかでたまたま出会ったのが、障害者施設の方々でした。

自分自身も生きづらさを抱えて学生時代を過ごしてきた人間ですので、障害のある方たちの世界観や空気感に、不思議としっくりくるものがありました。そこから福祉の仕事に携わるようになり、約20年ほどは就労支援の現場でサラリーマンとして働きました。

しかし、一般就労につなげても続かない人が多かったり、働き始めたものの潰れてしまって戻ってきたりする現実を、何度も目の当たりにしました。競争社会の中でがんばることが難しい人が、どんどん苦しくなっていくのを見て、「もっと根っこの部分から支えられる場が必要なんじゃないか」と感じるようになったんです。

もともと音楽が好きでライブなどもやっていたこともあって、「自分の趣味で続けてきた音楽やアートを軸にした就労支援ができるんじゃないか」と考えるようになりました。地元の地域が大好きだったこともあり、「この地域で自分の納得できる形の施設をつくりたい」と思ったのが、独立を決めたきっかけです。

――仕事をする上で大切にしている軸は何でしょうか。

「目先のお金にとらわれない」ということです。福祉は補助金で成り立つ業界なので、どうしても短期的な収益だけを追いかけてしまうと、本来の目的からずれてしまう危険があります。5年、10年先に、障害のある人たちが本当に幸せになれる選択なのかどうか――その視点を忘れないようにしながら、日々の判断をしています。

“就労支援”から“本物の仕事”へ

――今後の展望を教えてください。

まず、2~3年のスパンで「クリエイティブな就労支援を本物の仕事として確立すること」が目標です。音楽レッスン教室を開いたり、アート作品をTシャツやバッグ、缶バッジなどのプロダクトにして販売したりと、収益モデルをしっかりつくっていきたいと考えています。将来的には、企業のオフィスや施設で作品をレンタルしていただくような事業にも挑戦してみたいです。

10年くらい先を見据えると、利用者の高齢化も大きなテーマになってきます。今40代の方が20年後には60代になりますし、親御さんが亡くなられて一人で暮らすのが難しくなるケースも増えていきます。そうした方々の生活を支えるグループホームや居住の場をどう整えていくかは、これから本気で向き合っていきたい課題です。

これからも、音楽やアートを通じて、「自分はここにいていい」と感じられる人が一人でも増えていくように、地道に歩みを進めていきたいです。

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