融資の裏側を知るからこそできる伴走支援──「失敗しない経営」を増やすために
株式会社Success arts Consulting 代表取締役 篠原 啓祐氏
日本政策金融公庫で約20年にわたり中小企業の融資判断に携わってきた篠原氏。融資する側として数多くの経営判断を見つめてきた経験をもとに、現在は中小企業の資金調達や経営支援に取り組んでいます。なぜ独立という道を選び、どのような思いで経営者と向き合っているのか。本記事では、篠原氏自身の言葉を通して、その原点と現在地、そしてこれからの挑戦について伺いました。
融資の視点を生かした「失敗しない経営」への支援
━━ 現在の事業内容と、他社にはない特徴を教えてください。
主な業務は、経営数字の分析を通じた将来予測と、その予測から逆算した経営アドバイス、そして資金調達の支援です。数字をもとに会社の未来をシミュレーションし、「今、何をすべきか」を一緒に考えていきます。また、金融機関との交渉や、事業計画書・創業計画書の作成支援も行っています。
特徴として挙げるとすれば、融資だけでなく債権回収の現場も経験してきた点です。企業がうまくいくケースだけでなく、厳しい局面や失敗に至る過程も、お金を通じて見てきました。その経験から、創業期に経営の考え方やお金の扱い方を身につけることが、将来の失敗リスクを下げると感じ、自然と創業支援に力を入れるようになりました。
━━ 理念やビジョンについてはどのように考えていますか。
明確な理念やビジョンを言葉として掲げているわけではありません。ただ、一貫して思っているのは、「些細なミスで失敗する企業を一社でも減らしたい」ということです。成功する企業が増えれば、長期的には日本経済全体にも良い影響があると考えています。経営状況が厳しい企業であっても、困っている人を見捨てない姿勢を大切にしています。
無力感が原点──経営者の意思決定に寄り添う理由
━━ 独立しようと思ったきっかけを教えてください。
金融機関で多くの経営者を見てきた中で、「こう考えればうまくいくのに」「こうすれば資金繰りは改善するのに」と感じる場面がたくさんありました。しかし、金融機関の立場では一社一社に深く入り込むことが難しい。だからこそ、経営者の近くで、失敗しないためのアドバイスをしたいと思ったことが独立のきっかけです。
━━ キャリアの中で印象に残っている出来事はありますか。
地方でスタートアップ企業を担当した際、資金調達やマーケティングの支援を行いましたが、結果としてその企業は1年後に事業を終えることになりました。原因を振り返ると、資金は確保できたものの、使い方や経営判断に課題があったと感じています。そのときに強い無力感を覚え、表面的な支援ではなく、経営者の意思決定そのものに関わる必要があると考えるようになりました。これが、経営コンサルタントを志す原点です。
言葉を明確にすることで組織は動く
━━ 組織運営について、大切にしていることは何ですか。
自社に従業員はいませんが、顧問先の企業に対しては必ず「経営理念を見える化しましょう」と伝えています。中小企業では、社長の言葉が曖昧なまま伝わり、誤解が生じる場面を多く見てきました。社長自身の考えや思いを言語化し、共通認識として共有することが重要だと考えています。
━━ コミュニケーションで意識している点はありますか。
一つ一つの言葉の意味を明確にすることです。「忙しい」という一言でも、人によって捉え方は違います。その言葉が何を指しているのかを丁寧に確認することで、認識のズレを防ぎます。社長の言葉は重みがあるからこそ、正確に伝える必要があると感じています。
創業期にこそ届けたい学びと支援
━━ 今後、挑戦していきたいことを教えてください。
若手やこれから事業を始める方を対象にしたオンラインの起業塾・経営塾を立ち上げました。創業のどのタイミングで支援を行えば失敗の可能性を下げられるのかに焦点を当て、集中的に学べる内容にしています。今後は、情報発信を強化し、孤独に悩む経営者を一人でも減らしていきたいと考えています。
━━ 経営環境の変化について、どのように見ていますか。
AIなどの技術によって効率化が進む一方で、人と話す時間は減っていくかもしれません。しかし、どれだけ理念があっても、手元の資金がなければ会社は続きません。これからは、キャッシュフローを含めたお金の管理や予測を、より重視する時代になると感じています。
「迷ったらやる」──行動を支える価値観
━━ 経営や人生で大切にしている考え方は何ですか。
「迷ったらやってみる」という姿勢です。考えても答えが出ないなら、行動してみる。失敗から得られる情報は多く、その経験が次につながると考えています。
━━ リフレッシュ方法や趣味について教えてください。
剣道を続けており、国内外の大会や交流を通じて多くの人と出会っています。また、アニメもよく見ます。作品の中の印象的な言葉をメモし、仕事の場面で活用することもあります。固いイメージを持たれがちなコンサルタントだからこそ、親しみやすさも大切にしたいと思っています。
これからも私は、経営者が一人で悩みを抱え込まないよう、意思決定のそばに立ち続け、失敗を未然に防ぐ支援を通じて、中小企業が前を向いて歩み続けられる環境をつくっていきたいと考えています。