人事評価を「成長」に変える――一気通貫の制度設計で、働く人を幸せにする
株式会社チームグリーン 代表取締役 前田智宏氏
約30年にわたり一般企業で人事一筋に歩み、50歳を迎える直前に独立を決意した前田智宏氏。株式会社チームグリーンでは、人事評価制度と賃金制度の構築を軸に、制度を「作って終わり」にしない運用支援や研修まで手がけています。
評価が社員の成長につながらない――その悔しさを原点に、働く人がやりがいと報酬の両方を実感できる仕組みづくりに挑む、前田氏の取り組みと考え方を伺いました。
目次
評価と賃金を「成長」に結びつける人事制度づくり
――現在取り組まれている事業内容について教えてください。
人事コンサルとして、人事評価制度と賃金制度を作るコンサルをしています。人事コンサルというと採用や組織活性化のイメージが強いかもしれませんが、もっと基礎的な領域である「評価」と「賃金」の制度設計を中心にやっています。
――どんな思いで今の事業を始められたのでしょうか。
一般企業に約30年勤めて、転職も含めて4社経験し、ずっと人事でした。人事をやっていると評価にも当然関わるのですが、評価をしても「評価した後に何も起きない」ことが、すごく悔しかったんです。人事評価と社員の成長がつながらない。そこがずっと悩みでした。
学校の通知表と同じで、ABCや点数だけ言われても、多くの人は「頑張ろう」とは思いにくい。会社側は毎年給料を上げなくちゃいけないので、上げるからには成長してほしい。でも実際には社員は成長しないのに給料だけ上がっていく。企業側にとっても大きなマイナスポイントになっていました。
評価したからには成長する仕組みを作らないと、人事評価制度は時間の無駄になるし、賃金制度もうまく働かない。そう思って、「人を評価すると社員が成長する」方法として、これだなというものが見つかったので、それをもとに人事コンサルを立ち上げました。
――事業の特徴や、他社にない強みはどんな部分ですか。
私は一般企業出身なので、会社のことも人事のことも知り尽くした人事コンサルが、人事制度・評価制度・賃金制度を一気通貫で、私1人でやっています。全部私がやるんですね。
企業様にとっては何でも答えてくれるコンサルになりますし、机上の空論ではなく、実際に働く人事評価制度になるかどうか、効果があるかが見える形にしていけると思っています。
それから制度は作っただけでは働かない。パソコンと同じで、買ってきただけではただの箱です。動かす、つまり運用することが重要で、そこはプロとして実際に運用するときの手助けをしていきます。さらに運用していくと、社員の弱いところも見えてくる。ご要望があれば研修の講師として入り、研修講師の仕事もします。
「働く人がみんな幸せに」──やりがいというもう一つの報酬
――御社の理念やビジョンに込めた思いを教えてください。
「働く人がみんな幸せに」というのが一つのテーマです。これは単にお金をたくさんもらえるように、という話ではありません。お金ももちろん必要ですが、やりがいというもう一つの報酬を社員さんが感じられれば、もっと幸せになれる。
お金が増えても、つまんない仕事なら幸せじゃないと思うんです。仕事が楽しく感じられて、その結果として給料も増える。そういうことが「感じられる制度」にしようという思いが込められています。
「いつまで練習しているの」──50歳直前に響いた天の声
――経営の道に進まれたきっかけや背景は何だったのでしょうか。
会社員で50歳を迎える直前に、私は「天の声」と呼んでいるのですが、頭の中にポンと言葉が浮かびました。「いつまで練習しているの」という声が響いたんです。最初は意味がわからなかったのですが、2日ぐらい考えて、はっと気づきました。
そうか、自分は自分で会社をやりたかった、事業をやりたかったんだ。だから今まで会社にいたのは練習なんだな、と。もうそういう時期が来たんだと思って独立しました。嘘みたいな本当の話ですね。
大学生のときに「俺は将来社長になる」と言ったことはあります。ただ当時は、どこかに勤めて偉くなって社長になる、という意味だったと思うんです。でも50歳になる直前に、今度は「自分でやらなくちゃ」という方向に変わったのかもしれません。
――経営判断の軸になっている価値観や信条はありますか。
「1人でやりたい」。社員を使わずに1人でやりたいというのが経営方針です。本当は人を雇って、というのが経営の本筋かもしれません。でも50歳を超えて今から誰かを雇って育てる時間はないし、その方が定年を迎えるまで面倒を見られる自信もなかった。だから1人でやれるだけやる。そのやり方は誰かに教えるので、みんながそれぞれ稼いでもらうのは全然OKという考えです。チームグリーンも、もう一つの社団法人も社員は私1人です。
社会の転換点が、制度づくりの原点になった
――これまでのキャリアでターニングポイントだった出来事はありますか。
やっぱりバブルの崩壊とリーマンショックです。未来は見えないけれどひたすら頑張るのが美徳とされた時代から、頑張ってもその先がないかもしれない時代に突入しました。
だからこそ、「先が見える」、つまり予測できる、自分の将来像が見える人事制度が、これから絶対に必要だと感じたんです。昔は、ひたすら頑張れば将来いいことがあると信じて、安月給で激務でも働いた。でも今は激務でもいいから、将来どうなるのかちゃんと知りたい。そこが大きいと思います。
未来がないわけじゃないのに、見えないから「この会社ブラックだ」と言い始める。ラスボスがいるかどうかわからないドラクエをずっとやらされるようなものです。会社として、何をどうやったら行動と結果が数字や給料で見えるのかを、評価制度や賃金制度で組み立てる。そうすると自分の未来がある程度見えて、退職率がドーンと下がるんです。教育コストも減って、結局いいことばかりですね。
――いま向き合っている課題と、それへの取り組みを教えてください。
課題は、仕事が多すぎて回らないことです。時代がすごいスピードで変わって、大企業・中小企業問わず、人事制度を変えなくちゃいけないと切羽詰まっている企業が多い。でも人事コンサルタントが少ないんです。
本来なら人を雇って教育して、というのがやるべきことかもしれません。ただ私は今58才で、一般企業だったらあと2年で定年退職という年齢です。私と同じレベルで人を育てて社員として雇いたい思いはあるものの、その時間もない。手が回らないのが現状ですね。
そこで、もう一つの社団法人で人事コンサルのやり方を有料で教えています。受講料は38万円で、覚えた方が自分で仕事を取れば、安くても80万、普通は150万から300万ぐらいの仕事になる。1件でペイできて利益も出る。そのぐらいの金額にしています。
どうせ私が必死になっても、世の中の「人事制度を作ってくれ」という声には数的に応えられない。だからコンサルを増やさなくちゃいけない。私が儲けるためというより、いろんなお客さんを持っている社労士さんや中小企業人事の方々、時には弁護士や会計士の方も含めて、その人たちがお客さんを幸せにするために動けるように、という発想です。
90分で一つのスキルを身につける「クイックスキル」構想
――今後取り組んでいきたい新しい挑戦はありますか。
研修事業を、独立した一つの事業として立ち上げたいです。普通の研修は丸1日や2日ですが、どうしても忘れちゃう。だから時間をかける必要はなくて、90分だけ、その代わり一つのテーマだけを集中的にやる。そういう研修のシリーズを作ります。名前は「クイックスキル」です。90分で一つのことだけ集中して身につける講座をたくさん作り、「クイックスキル」というシリーズで研修事業を展開する予定です。
これは別会社ではなく、今の会社でやります。ただ私1人で全部できるわけではないので、研修講師として働いてもらう外部の専門家を集めています。資料の人なども含めて、既に数100人の専門家がいます。ビジネススクールの仲間がいて、数で言えば2000名を超えますが、その中で「だいたいわかる」と言えるのが数百人ぐらいですね。
研修の要望は「管理職研修」と一括りにされがちですが、実際は細分化できます。たとえば「人の話を聞かない人が多い」「優しすぎて部下に指導できない」など、課題は小さなスキル単位で完了するケースがある。そこを細分化して売りたいという感覚です。
人事制度を作ると、企業から「こういう先生いない?」「こういう研修やってくれない?」と聞かれる。お客さんの求めがあるので、公式に事業化したほうがいいと考えています。
「やりたいことは全部やる」──譲れないポリシーと、自由な働き方
――経営の中で「これだけは譲れない」という思いはありますか。
「やりたいことは全部やる」というのがポリシーです。これが1人でやっている理由でもあります。社員を抱えていると、訳のわからないことにお金や時間をつぎ込んで、と思われる可能性もある。でも1人なら縛りが一切ない。やってみたい仕事、取り組んでみたい勉強、全部自分で決断してやればいい。
成功も失敗も全部自分の責任です。誰にも迷惑はかけないし、成功すればよかった、失敗しても次は気をつけようで終わる。そんな感覚ですね。
車とバイクがくれる「自由」の感覚
――お休みの日のリフレッシュ方法を教えてください。
車に乗ってるか、バイクに乗ってるかですね。バイクは一度手放したんですが、最近また小さいバイクを買いました。ドライブで遠出もしますし、峠道や山道のクネクネしたところを走りに行くのも好きです。昔から車とバイクが好きですね。