誰もが「ヒーロー」になれる地域をつくる――E-LINKが育む、学びと関わりのコミュニティ

特定非営利活動法人E-LINK 代表理事 日向 洋喜 氏 

学童保育、フリースクール、寺子屋地域食堂、学習塾、プレーパーク、地域イベント。特定非営利活動法人E-LINKは、子ども向けの支援を個別に提供するだけでなく、地域の大人や事業者、寺院、学校まで巻き込んだ「関わりの場」を重ねながら、独自の実践を続けています。掲げるのは「誰もがヒーローになれる地域社会」。子どもが大人に支えられるだけでなく、大人もまた子どもに支えられている――そんな相互性に光を当てる取り組みは、札幌の一地域から着実に広がり始めています。創業期の苦労、組織運営で大切にしている姿勢、そしてこれからの展望について伺いました。

「誰もがヒーロー」の実装として、複合的な地域事業を運営する

——現在の事業内容と、理念について教えてください。

特定非営利活動法人E-LINKは、誰もがヒーローになれる地域社会を目指しています。活動の中心は、学童保育、フリースクール、寺子屋地域食堂、学習塾、プレーパーク、そしてハロウィンなどの地域イベントです。

私たちが大事にしているのは、子どもと大人が「支える側/支えられる側」に固定されないことです。大人は子どもにとってヒーローになれるし、子どももまた大人の力になれます。

大人にできること、子どもにできることを持ち寄って、地域全体で「自分にもできることがある」と気づける状態をつくりたいと考えています。

——同業との違いはどこにありますか。

学童保育やフリースクールなどを単体で行う取り組みはありますが、これらを複合的に運営し、同じ地域コミュニティの中で安心できる関係性まで含めて設計している例は多くないと感じています。

私たちは、単発のサービス提供ではなく、日常的な接点を重ねる中で「この地域で育つ」「この地域で関わる」実感を育てることを重視しています。そこが特定非営利活動法人E-LINKの特徴です。

教員志望から起業へ――「教える」より「出会いをつくる」道を選んだ理由

——起業に至った経緯を教えてください。

もともとは小学校教員を目指していました。大学時代には「どんな教師になるか」を考え続け、休学して1年間、さまざまな場所を旅して多くの人に会いました。

その中で、私が一方的に教えられることには限界があると感じるようになりました。むしろ、この1年で得た「多様な人との出会い」こそが大きな財産でした。だったら、地元・札幌の子どもたちがそうした出会いを体感できる場をつくりたい。そう思ったのが大きな転機です。

当時はゲストハウスの魅力にも強く惹かれていて、子どもたちが自然に国内外の人と出会える場所をつくれないかと考えました。札幌で立ち上がったばかりのゲストハウスの若手経営者と出会い、後押しを受けて、最初は共同事業の形でスタートしました。

——8年間で、最も印象に残るターニングポイントは何ですか。

創業直後です。オープンまでに子ども10人を集める目標がありましたが、実際の申し込みは1人でした。約束を果たせなかったので辞めるべきだと思い、そう伝えたこともあります。

その時、共同事業の側から「1人でも申し込みがあるなら、その1人のためにやった方がいい」と言ってもらいました。この言葉がなければ、始められていなかったと思います。

ゲストハウス内で学童を行う試みは当時珍しく、札幌でメディアにも取り上げられました。最初の半年ほどは利用が少ない時期が続きましたが、翌4月から利用者が増え、継続できる形になりました。いま振り返ると、あの時に諦めなかったことが、現在につながっています。

「縁を切らない」組織運営――関わり方を変えても、関係は続ける

——現在の組織体制はどのようになっていますか。

NPO法人なので、名簿上のメンバーと、雇用として現場に関わるスタッフは分けて考えています。雇用人数としては10人前後です。現場での関わり方や役割は多様で、ボランティアの力も大きいです。

立ち上げ当初は個人で始め、2年ほど経ってから協力者が集まり、NPO化を進めました。今に至るまで、協力してくださる方々との関係が活動の基盤になっています。

——人材や組織運営で大切にしていることは何ですか。

関わるスタッフが、幸せな形で関われることを重視しています。社員としての関わりが難しくなったとしても、業務委託やパートなど別の形で関係を続ける道を探ります。

私が大事にしているのは、「関わった人との縁を切らない」ということです。人も組織も状況が変わるので、関わり方は変わって当然です。

だからこそ、ひずみが生じた時に切って終わるのではなく、どうすれば前向きに関わり続けられるかを考え、着地させる姿勢を持ち続けたいと考えています。

次の挑戦は「拠点の展開」――寺をハブに、学びと食のコミュニティを広げる

——今後の展望について教えてください。

学童やフリースクールは補助金の構造も含めて、数を単純に増やすのが簡単ではありません。その中で、手応えを感じているのが「地域食堂」を軸にした取り組みです。

私たちはお寺と連携して、子ども100円・大人500円の食堂を毎週運営しています。0歳の子どもから80代のボランティアまで関わり、毎週40~60人規模で食事づくりと交流が生まれています。月曜は食堂、火曜~金曜は同じお寺で学習支援、自習は無料利用可能という形で、地域に開かれた拠点になっています。

お寺には場所があり、地域に開きたい思いがある。私たちには活動したい意思があるが、場所の確保は容易ではない。地域にも「何かしたい」人がいる。こうした要素がかみ合う形で、学びと食のコミュニティを育てるのが現実的な拡大モデルだと考えています。
なので、いずれは札幌でのモデルを磨き、お寺をハブにした拠点を増やしていきたいです。

——事業成長に向けた課題はどこにありますか。

3年後の売上は1.5~2倍を目指したいと考えています。そのための課題は、集客と組織です。これまでは受け入れキャパシティの都合もあり、集客を強く回さなくても埋まる状態がありました。

しかし、拠点の変化や定員拡大に伴い、利用者を呼び込む動きが必要になっています。人的リソースや予算が限られる中で、営業や募集の仕組みを整える局面に入っています。

同時に、私が現場にいなくても回る運営体制づくりも必要です。職員のスキルアップ、組織編成の見直し、役割設計の再構築は、今後の展開に不可欠だと捉えています。

地域に開く実践と、日々を整える時間

——地域イベントの取り組みで、象徴的なものはありますか。

ハロウィンイベントは、地域との接点を広げる大きな取り組みです。子どもたちが「トリック・オア・トリート」で街を回り、地域の店や人の温かさに触れることを第一にしています。

参加制限は設けず、協力事業者には無理のない範囲でお菓子提供をお願いする運営です。小学校、PTA、ボランティアとも連携し、今年は子ども約1100人、大人600~700人、合計1700人規模になりました。協力事業者は45、ボランティアは60~70人規模です。地域全体で子どもを迎える実感を育てる機会になっています。

——ご自身のリフレッシュ方法を教えてください。

休日は0歳と3歳の娘と過ごす時間を優先しています。趣味は漫画とゲームで、アニメを見ることも多いです。漫画のストーリーやメッセージは子どもたちとの対話にもつながるので、活動にも通じるものがあると感じています。

——最後に、読者へのメッセージをお願いします。

これから起業する方や経営者の方にお伝えしたいのは、どこでどんなご縁が生まれるかわからないということです。ありきたりに聞こえるかもしれませんが、一つひとつの縁を切らずに関わり続けることが、結果としてお互いにとって良い形につながると思います。

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