印刷事業から宇宙事業──Space-21代表・中上晶子が語る現在地
株式会社Space-21 代表取締役 中上 晶子氏
1993年、ラフォーレ原宿にてオンデマンド印刷ショップ「Happy Print」を創業。FC店舗開発や企業デザイン 事業を展開してきた株式会社ハッピープリントは、 2026年2月に株式会社Space-21へ社名変更。現在は、宇宙旅行に関わる事前訓練プログラムの開発や、日本と海外の宇宙開発企業を結ぶ「Japan Space Bridge Initiative」など、宇宙産業に関わる事業に力を入れている。本記事では、代表取締役の中上晶子氏に、同社の現在の事業内容と、宇宙産業に取り組む背景について話を伺いました。
現在の事業内容と、会社の取り組み
――現在の事業内容について教えてください。
現在、最も力を入れているのは宇宙産業に関わる事業です。これは、昨年採択された経済産業省の事業再構築補助金をきっかけに本格的にスタートしました。新しい宇宙ビジネスとして、現在は立ち上げと拡大に集中している段階です。
私自身、JAXA広報部参事として月探査機「かぐや」打ち上げの海外PRを担当した経験があります。その経験を基に立ち上げた「Japan Space Bridge Initiative」 は、2026年1月29日付でJAXAから正式な後援をいただきました。
2026年3月28日には、目黒区祐天寺にて「APAC Space Capital Summit」キックオフイベントを開催。NASAアジア担当レベッカ・レヴィ氏、ESA東京事務所代表ジャン=シャルル・ビゴ氏に参加いただき、有形文化財である本堂で成功祈願も行いました。
現在は、宇宙旅行者向けの事前訓練プログラムも開発しています。宇宙飛行士であっても予期せぬトラブルが発生する可能性があります。リスクを未然に防ぐための訓練を提供することが、この事業の大きな役割です。身体的訓練にはAI搭載トレーニングマシンを活用し、3か月で21歳の身体状態を目指すプログラムを構築しています。
――Happy PrintやHappy Trump Tourについても教えてください。
現在はSpace-21事業に注力しているため、Happy Print については既存顧客を中心に対応しています。今後余裕ができれば、宇宙ビジネスに関する電子書籍を出版し、国際宇宙ビジネスのビジョンリーダーを目指していきたいと考えています。
2013年に開始した「Happy Trump Tour」は、ヨーロッパ向けアウトバウンド旅行を中心に展開してきました。トランプホテルのエリートパートナーとして選ばれて以降、ハイエンド向け旅行デザイナーとしてグローバルに活動しています。
2021年4月には東京都に旅行業登録を行い、インバウンド事業も開始。特にインドからの訪日旅行者向けにサービスを展開しています。
――会社としての主軸はどこに置かれていますか。
現在は明確に、Space-21が中の事業です。「宇宙も地球も含めた旅行」というコンセプトで、これまでの旅行 業やFC展開の経験を活かしながら、新しい宇宙ビジネスに取り組んでいます。
宇宙事業へ踏み出した背景
――ターニングポイントとなった出来事はありますか。
旅行業がコロナの影響を受け、送客は完全に止まり、売上が立たない状況に陥りました。
そうした状況の中で、事業の将来と向き合う時間が生まれたのです。以前から関わっていた宇宙教育やJAXA広報の経験を生かし、宇宙分野へ本格的に踏み出す決断に至りました。
現在、宇宙産業は急速に民間主導へと移行しています。ヨーロッパの宇宙機関であるEuropean Space Agencyは、昨年8回の打ち上げを成功させました。さらにアメリカでは、民間企業のSpaceXが2日に1回のペースで打ち上げを行い、宇宙輸送の主要企業として世界的に認知されています。世界ではコスト効率を重視し、グローバルに宇宙開発が進んでいます。
日本も海外から積極的に学び、国際協力を拡大すべき時期にあると感じています。宇宙産業は内向きではなく、グローバルなネットワークの中で発展していくものです。
ESAの地球観測プログラム「コペルニクス」はデータを無料提供し、SpaceXは衛星打ち上げ費用を従来の100分の1にまで削減しました。こうした流れを踏まえると、日本の宇宙開発も政府・自治体・民間企業が連携して進めていく必要があります。
――宇宙ビジネスに取り組む背景となった経験はありますか。
JAXA広報部に在籍していたほか、留学先のヒューストン大学近くにあるNASAでアルバイトをした経験があります。宇宙産業は米国を中心に民間ビジネスとして急速に拡大していますが、宇宙旅行も広い意味では「旅」です。これまでの経験と宇宙産業の流れが重なり、現在の事業へとつながっています。
多様なメンバーと支え合う、組織のかたち
――現在の組織体制について教えてください。
経営陣は4名、社員・アルバイト・パートを含めて約21名の体制です。旅行業の特性上、空港での送迎業務などもあるため、必要に応じてアルバイトスタッフにも参加してもらっています。多様な働き方のメンバーが関わる組織です。
そのため、固定的な働き方に縛られず、柔軟な関係性を重視しています。AIを活用することで、事務作業は従来の100分の1の時間で処理できるようになりました。現場対応が多い仕事だからこそ、それぞれが役割を理解し、主体的に動くことを大切にしています。
宇宙ビジネスの流れを見据え、ソフト面で価値をつくる
――宇宙ビジネスは、今後どのようになると考えていますか。
日本はこれまでロケットなどハード面に大きく投資してきました。一方で、打ち上げ回数では米国との差は大きい。そのため、日本は宇宙での滞在体験やサービスなどソフト分野で価値を生み出す可能性があると考えています。宇宙ホテルや宇宙食などの開発も進んでいます。
――そうした流れの中で、御社が目指す役割について教えてください。
当社は打ち上げ企業ではありませんが、宇宙旅行の体験価値を支えるソフト分野で貢献できると考えています。JAXA後援のJapan Space Bridge Initiativeを通じて、宇宙企業・研究機関・投資家が連携するコミュニティ形成にも取り組んでいます。宇宙産業は今、大企業も中小企業も同じスタートラインに立っている状況です。
――今後数年を見据えたとき、どのような未来像を描いていますか。
宇宙産業はまだ未知の分野ですが、すでに現実化が進んでいます。Space-21としてもスピード感を持って事業を形にしていきたいと考えています。
2026年5月には、シンガポールのマリーナベイサンズで開催されるアジア最大の宇宙コンベンションGSTCEにも参加予定です。
自分を整える時間と、次の一歩を踏み出す人へ
――お休みの日や、仕事から少し離れる時間は、どのように過ごされていますか。
休日はAIトレーニングマシンを使った運動を週2回行っています。また趣味としてバイオリンを演奏することもあります。音楽は気持ちを整える大切な時間です。
――最後に、これから起業を考えている方や中小企業の経営者に向けて、メッセージをお願いします。
日常生活の中で感じる小さな不便やアイデアは、ビジネスの種になります。大切なのは、考え込むことよりもまず行動すること。特に女性には起業のチャンスがあります。従来の製品やサービスを女性視点で見直すことで、新しい価値が生まれる可能性も広がります。
米ビジネス誌Forbes Japanの起業家特集に掲載された女性起業家として、伝えたいことは一つです。事業を進める中で、女性は男性以上に厳しい状況に直面することもあります。そんな時は、強い心を持って乗り越えてほしいと思います。
女性創業企業への投資は、世界的に約2%にとどまると言われています。しかし、その状況の中で知恵を集め、成功を目指すプロセスこそが、人生で最も面白い挑戦だと感じています。