人生の“終わり”を、もっと自分らしく――ワタセリカが描く新しいエンディングのかたち
株式会社WataSelica 代表取締役 赤羽 真聡氏
株式会社WataSelicaは、いわゆる「エンディング」の領域で、生前から死後までのサポートを一気通貫で提供する会社です。人生の終わりに向き合うことが、結果として“いま”を豊かにすることにもつながるという視点から、正しい情報を、必要な人に、必要な形で届けるための準備に寄り添っています。本記事では、代表の赤羽真聡氏に、事業立ち上げの背景から経営判断の軸、これからの挑戦などについて伺いました。
生前から亡くなったあとまでを一気通貫で支えるエンディングサポート事業
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当社が提供しているのは、いわゆる「ライフエンディング」の総合サポート窓口です。自分でできることから誰かが担うことまで、人生の終盤にはさまざまなタイムラインがあります。それを生前から死後まで一気通貫で提供します。
ビジネスの柱としては、お墓じまい(お墓の引っ越し)や埋葬先のご提案が中心です。従来の「お墓に入る」という固定的な考え方を時代に合った形に変換し、海洋散骨などの新しい選択肢を提案しています。今後は樹木葬や納骨堂といった埋葬先も含め、一つの窓口で提案できる体制を整えていきたいと考えています。
さらに、新たな取り組みとして「遺骨真珠」というサービスも展開しています。これは、遺骨を核とした真珠を製作し、世界に一つだけの手元供養品として残すものです。大切な人を身近に感じられる形として提案しています。
自社で提供するサービスだけでなく、提携先の企業と連携する形も含めて、終活のプラットフォームとして機能することを目指しています。
――この事業を始められた背景や想いを教えてください。
私は、もともとは終活関連の上場企業で仕事をしており、グループ会社の社長も約3年ほど務めました。
前職で多くのお客様と接する中で、終活の選択肢は増えているにもかかわらず、正しい情報が十分に届いていないことを肌で感じてきました。
日本は超高齢社会に入り、年間約160万人近くの方が亡くなっています。今後も2040年まで、この数字は増え続けるといわれています。こうした現実がある中で、いまだ強く存在していると感じるのが、「亡くなったらお墓に入らなければいけない」という固定概念です。
先ほどもお話ししたように、散骨や樹木葬など、多種多様な選択肢が存在しています。いま、適切な情報をしっかり届けることこそが自分の役割だと考え、この事業を始めました。
会社名のWataSelicaも、「未来は自分で決めましょう」という想いからつくった造語です。その人らしいエンディングを選べるようにすることをコンセプトに、サービスを提供しています。
また、終活には亡くなったあとの手続きや埋葬関連のこと以外にも、元気なうちから考えられることが多くあります。しかし現実には、「何から始めればいいのか分からない」という声が多いのも事実です。だからこそ、個別のサービスを提供するだけでなく、元気なうちから亡くなったあとまで全体を整理しながら伴走することが重要だと考えています。
経営の軸は「継続」と「前例にとらわれない挑戦」
――経営判断の軸になっている価値観は何ですか。
新しい価値を生み出し続ける――その両立が、経営者として常に意識している点です。
まず大前提として、会社は継続していかなければなりません。継続には利益が必要で、利益が会社を支えます。
その上で大切にしているのは、固定概念にとらわれないことです。前例がないものでも、新しい切り口でも、どんどん生み出していきたいと考えています。遺骨真珠のような取り組みも、その一つです。新しい価値を届け続けられるかどうかが、経営判断の軸になっています。
――組織運営で意識していることはありますか。
当社では、雇用形態に関係なく、さまざまな形でいろいろな人に関わってもらっています。そこで重要となるのは、一人ひとりが会社の目指す方向性を理解していることです。
私がみなさんによく伝えているのは、「やりたいことをやってください」ということです。ただし、自分のやりたいことを口にして、責任を持ってやり抜くことを前提としています。
とりあえずチャレンジしてみることを大切にし、否定から入ることはあまりありません。
一方で、必ず問いかけるのは「主語がお客様になっているか」という点です。自分がやりたいという視点だけでなく、お客様が求めていることかどうかは、常に確認するようにしています。
視野を広げるためのインプット時間を持つ
――休日の過ごし方を教えてください。
リフレッシュというよりは、インプットに充てています。旅行や映画、スポーツ観戦などを通じて第三者の視点で物事を見ることで、視野を広げる時間にしています。
好きな食べ物を食べることもありますが、基本は「自分の世界を広げること」に費やしており、それが結果として、仕事にもつながっていくと感じています。
――影響を受けた言葉はありますか。
新卒で入社した楽天時代に三木谷浩史さんが話された「10年後に紙幣やコインのお金はなくなる」という言葉です。当時は実感がありませんでしたが、先を見る力に衝撃を受けました。
また、「やれない理由を話すのではなく、やれる方法をトコトン考えなさい」という言葉も心に残っています。今でも、自分に問いかけている言葉です。「前例がないからやらない、ではなく、やれる方法を考える」という今の考え方にも通じてます
さらに、楽天時代の上司からは「ビジネスはストーリーだ」と教わりました。商品を売ること自体が目的ではなく、お客様の課題の先にあるゴールまで描くことが大切だという考え方です。
そして、もう一つは「人とのご縁を大切にすること」で、出会いが次のタイミングをつくっていくと実感しています。
終活が「当たり前」の社会へ
――今後の展望について教えてください。
お客様への提案やサポートだけでなく、業界のプロの方々にも価値を提供できるサービスを増やしていきたいと思っています。既存サービスを大切にしながらも、新しいものを取り入れ、必要な方に必要なサービスを届ける――自社でできることは自社で、必要なら外部と提携しながら、「お客様一人ひとりの価値観やライフプランに合った選択肢」を広げていきたいです。
――現在感じている課題は何でしょうか。
「終活」という言葉は広がっていますが、何から始めればいいのかがわからないという方も多いでしょう。どのようにきっかけづくりを行っていくかが大きな課題です。
例えば、亡くなったときにご葬儀に誰を呼ぶのかというリストを作成し、家族の中で共有できているような状態が当たり前になればいいと考えています。「終活」といったキーワードだけで終わらず、中身が伴って当たり前になっている社会にしたいんです。それが結果として、豊かな人生のエンディングにつながるはずだと思っています。
――どのような人と一緒に働きたいと考えていますか。
エンディングの仕事は、身近な人での経験がないと理解しづらい領域です。
人は、いつ何が起こるかわかりません。だからこそ、自分の家族や大切な人の最期がどうあったらよいかを想像できる人や、その人がどんな形で感謝を伝えたいと希望しているのかといったことを考えられる人と一緒に働きたいと思っています。
私はよく、「エンディングの仕事は、ブライダルプランナーの逆だ」と話します。結婚式が華やかな門出を演出するものなら、エンディングは最後のお別れをどう設計するかという仕事です。その想像力を持てる人と、価値をつくっていきたいと考えています。