ファッション×ユニフォームで企業価値を再定義――SHUTTLE WORKSが描くブランディング・採用戦略
SHUTTLE WORKS株式会社 代表 遠藤 能元氏
SHUTTLE WORKS株式会社は、ユニフォームを単なる作業着ではなく、企業のブランディング戦略として位置付け、組織文化や採用力などを高めるために制作・提供する企業です。オリジナルユニフォームを通じて企業のミッションやビジョンを具現化し、社員の一体感の向上や、接客場面での体験価値を高めるような設計を行っています。本記事では、代表の遠藤能元氏に、事業への想いや経営の考え方、今後の展望などについて伺いました。
ユニフォームを「経営課題解決のツール」に
――現在取り組まれている事業の特徴について教えてください。
当社は、ホテルや飲食店、建設会社、運送会社など、スタッフが着用する企業向けユニフォームの企画・制作を行う会社です。「ただ言われたものを作る」という受託型のスタンスではなく、ユニフォームを通じて企業ブランディングを行い、経営課題を解決するという提案をしている点が特徴です。
ユニフォームは、企業を体現する重要な要素の一つです。コンセプトを明確に定め、それをデザインに落とし込むことで、単なる制服ではなく「企業の価値を可視化する存在」になり得ます。
――具体的にはどのような価値を提供しているのでしょうか。
大きく3つのブランディング向上を提案しています。
1つ目は「カルチャーブランディング」、いわゆるインナーブランディングの側面です。社員のモチベーション向上というよりも、「意識醸成」というニュアンスが強く、会社としてどのように働いてほしいのか、どういった振る舞いが相応しいのか、ミッションやビジョン、企業アイデンティティをどのように浸透させていくのか――そういったところでユニフォームを活用するものです。
制作過程では、企業の想いや社員が感じていること、やりがいなどを丁寧に言語化します。そのうえでデザインに落とし込むことで、結果として「着るだけで仕事のスイッチが入る」「企業の一員としてふさわしい行動を。というマインドセットを促す」ユニフォームを目指します。
2つ目は、「エクスペリエンスブランディング」で、これはお客様に対するアウターブランディングの観点です。
施設やブランドのコンセプトが研ぎ澄まされているほど、スタッフの装いは重要な要素になります。ユニフォームは、見た目を通じて行われるコミュニケーションです。ここを徹底的に作り込むことで、施設価値を最大化し、顧客体験を高めることができます。
3つ目が「リクルートブランディング」で、採用につながるユニフォームです。単純に「かっこいい・かわいいから働きたい」という憧れを創出する意味もありますが、それ以上に、今の時代だからこそ「共感されるユニフォーム」を作ることは、採用力の強化にもつながる意味があると考えています。
たとえば人手不足の業界では、固定観念としての“3K”イメージが採用に悪影響を与えているケースがあります。私は、そうしたイメージを変えるものこそ、ユニフォームだと思っています。従来的な固定概念にとらわれない、ファッションの感性とデザインをもったユニフォームを纏うことで、働く社員の映り方が変わり、ひいては企業の見られ方が変わります。
現代の若い世代は、SDGsやジェンダーレスなど、教育環境も昔とは大きく異なり、今の時代のある種の自由度を受容できる環境であるかは、企業選びの一つの選択肢になっています。
企業を体現する、かっこよいユニフォームは、今の時代に即したチャレンジできるフィールドや、若い世代が活躍するイメージを彷彿とさせることにつながります。
主体性をもった人を採用することにもつながり、ミスマッチを防ぐことにもなり、採用を大きく強化することができます。
事業に込めた想いと起業のきっかけ
――この事業を始められたきっかけは何ですか。
専門商社での8年間のものづくり経験を通じて感じたことがきっかけとなっています。アパレル業界全体が原価積み上げ型の世界で、誰もが儲からない構造になっているように感じたんです。ブランド側も作り手側も儲からない実態を見る中で、「付加価値を生み出し、適正な利益を取れるビジネスが必要だ」と強く思ったのが起業の原点です。
日本のものづくりは世界的に優れた部分がある一方で、業界構造として疲弊し、後継者不足などの課題もあります。そんな中、ユニフォームを入り口に企業のブランド価値を引き上げ、企業が本来持つ価値を発信していくというアプローチを確立したいと思いました。
――これまでのキャリアの中で、特に転機になった出来事はありますか。
商社時代に生地と徹底的に向き合った期間があり、これが私にとっての大きな転機となりました。
営業の数字を上げるためには、生地提案の精度を上げるしかないと考え、ほぼ毎週のようにアウトレットや商業施設を回りました。気になる商品をすべて自分の手で触って買い、自分で生地を切って分析したんです。10倍の顕微鏡で組織を見て、中国の工場に送って再現を試みる――そういうことを3年ほど続けました。
その結果、生地を触っただけで糸の太さや打ち込み本数が感覚的にわかるようになってきたんです。縦糸と横糸が1インチの中に何本入っているか、その規格感が触感でイメージできるようになりました。そこから営業成績も大きく伸びましたし、ものづくりのスキームを自分の中で構築できた感覚がありました。
――その経験は、今の事業にもつながっていますか。
間違いなくつながっています。ブランディングに寄与するユニフォームはデザインだけではなく、生地も非常に重要な要素となります。例えば、お客様に、スタイリッシュで信頼感を得るような装いにしたいようであれば、合繊繊維のマットライクに見える糸で、フラットに織り上げた生地にすることで、シックで洗練された印象へと昇華します。
このように、生地に精通していることで、お客様のご要望をダイレクトに具現化できること、それがSHUTTLE WORKSの強みの一つでもあります。
また、中国の工場が4社ついてくれているので、ダイレクトにものづくりができる体制がある点もポイントです。商社時代に築いたネットワークが今も生きており、何でも外注するのではなく、自社で構築できるというメリットがあります。
経営判断の基盤と独自性
――経営判断として大切にしている価値観は何ですか。
安かろう悪かろうではなく、お客様から「価値がある」と納得していただけるものを提供することです。高価なユニフォームでも、それによって採用力が高まるなど企業に利益を生み出すなら、価値のある投資になるでしょう。そして、ユニフォーム業界にファッションの感性を持ち込むことで、他社にはない視点で事業展開ができると考えています。
ユニフォームとファッションはまるで異なる世界でして、たとえば、感性的な部分が全く異なります。ユニフォーム業界はどうしても商習慣が古いこともあり、デザインの進歩が全くなく、固定概念がたくさんある世界となります。
やや私の偏見も入りいますが、そういった業界的なブランディングから、洋服が好きな人、ファッション感性がある人は、ユニフォーム業界に行こう!とは中々思わないため、このような分断された世界となっていると思っています。
私は運よく、ファッション出身でありながら、ユニフォームビジネスと出会い、その魅力に気づいた一人ですが、まさにアパレルとユニフォーム両方の知見とスキームで、これまでに無いユニフォーム製作ができることが強みです。
――社員が主体的に動く組織づくりのための工夫はありますか。
私は、自分が一番動き、その姿勢を見せることを大切にしています。事業にはメンバーの力が不可欠ですので、自分自身が先に動くことで、その熱量や姿勢を見てもらうことを重視しています。マイクロマネジメントではなく、背中を見せながら自主性を育てるスタイルですね。また、現場ではフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを重視しており、オンラインよりも対面の方が伝わるものが多いと感じています。
――採用や育成で重視するポイントは何ですか。
スキルよりもパッションです。私は、スキルはあとからついてくると考えていますので、それよりも自分で考えて行動できる主体性、価値観への共感がある方と一緒に働きたいと思っています。
「ユニフォームといえばSHUTTLE WORKS」と言われるレベルを目指して
――お休みの日の過ごし方を教えてください。
週に2回の筋トレとサウナは欠かせません。リフレッシュは脳内物質の活性化にもつながり、仕事のパフォーマンス向上にも役立っています。
――影響を受けた人物はいますか。
特定の一人ではなく、前職で出会った多様な経歴の方々から、数字やロジックで説明する力を学んだことが大きいと思っています。ファッションというクリエイティブ寄りの世界と、数字や言語化が求められる経営の世界を行き来した経験により、大きく成長できたように感じています。
――今後の展望や、事業場の課題をお聞かせください。
デザイン性の高いユニフォームのカテゴリーで、「ユニフォームといえばSHUTTLE WORKS」と言われるレベルを目指したいです。市場は大きいため、そこで存在感を出しながら、一定規模の事業成長とチームづくりに努めていきたいと思っています。
パッションを軸にしたユニフォームというのは、まだ世の中に多くはありません。だからこそ、企業の文化や思想まで表現できるユニフォームを広げていきたいんです。数字目標も掲げていますが、それ以上に、自分たちのやり方で業界に証明したいという想いのほうが強いです。原価積み上げの世界ではなく、付加価値で勝負できる世界を作る――その実例を示す存在になりたいと考えています。
一方で、AIの進歩によってデザインのアウトプットが同質化していく点は課題です。その中で差別化を図るためには、ものづくりの強みを生かし、当社でしかできない要素を持つことが重要です。たとえば特許取得にもつながるプロダクト開発など、モノポリ的な価値創出への取り組みも続けていきたいと思います。