地方の魅力とインターネットの力で、「地方に楽しい」を増やす。加藤氏が語る、ローカル事業とWeb事業の今
株式会社アフリクション 代表取締役 加藤 雅大 氏
地方の魅力とインターネットの力を掛け合わせ、地方に新しい活力をつくる——。加藤氏は、この思いを軸に、ローカル事業・言葉を形にする事業・共創事業の3つを展開しています。現在は1人で事業を運営しながら、必要に応じてプロジェクト単位で外部のパートナーと協働。足柄のテントサウナをはじめとするリアルな体験づくりと、地方の中小企業・個人事業主に向けたWeb/DX支援を両輪に、独自のスタイルで事業を育てています。今回は、事業の考え方、これまでのキャリア、今後の展望について伺いました。
目次
地方の魅力を「楽しい」に変える、現在の事業のかたち
——まず、会社として大切にしていることを教えてください。
私たちが何を大切にしているかをお話しすると、まずパーパスは「地方の魅力とインターネットの力で、地方に新しい活力を作る」です。
そのためのビジョンとして、「地方に楽しいを増やす」と掲げています。
私自身、東京で15年ほど働いて、結婚を気にUターンしてきました。人材やWebの仕事をしてきた中で、地方には情報格差があると感じていました。
一方で、地元にはリアルな楽しさがある。そこにWebを使えば、田舎からでも発信できるし、新しい価値をつくれる。そう考えたことが、今の事業の土台になっています。
——現在の事業は、どのような構成になっていますか?
大きく3つあります。1つ目がローカル事業、2つ目がコトバ・カタチ事業、3つ目が共創事業です。
ローカル事業は、言い換えるとリアル事業です。足柄でしか体験できないものやサービスを扱っています。
コトバ・カタチ事業は、WebやSNS、サイト制作の前に、まず言語化を行う事業です。地方企業やスモールビジネスのDXを進めたいと思っているのですが、パーパスやビジョン、価値観の言語化ができていないまま「Webを作りたい」「SNSをやりたい」となるケースが多いので、まずはそこを整えることを重視しています。
共創事業は、経営者層のパートナーとして伴走する位置づけです。私自身は「コンサルティング」という言葉をあえて使っていませんが、分類としてはそう見える部分もあると思います。
——ローカル事業の代表例である「足柄のテントサウナ」について教えてください。
「足柄のテントサウナ」は、一番ご好評いただいているローカル事業です。足柄には自由に入っていい滝があって、その近くでテントサウナを運営しています。川にも入れるし、水を浴びることもできる。いわゆる滝浴びができる場所です。
私たちの調べでは、自由に入れる滝の近くでこうした体験ができる場所はかなり珍しいです。
法人利用もあり、福利厚生やレクリエーションのような形で使っていただくことが多いです。今後もBtoB利用は強化していきたいと考えています。
東京での経験を逆算し、地元での挑戦につなげたキャリア
——これまでのキャリアについて教えてください。
キャリアは人材業界から始まりました。その後、Web制作やマーケティングなどへ移っていきました。もともと、いつか地元に戻りたいという思いがあって、そのためにも東京で10年は勝負しようと決めていたんです。
そのとき、定量的な目標も決めようと考えました。たとえば年収の目標などです。そこから逆算して、「最速で達成するにはどうするか」「社長に会うにはどの業界がいいか」と考え、人材業界を選びました。
ただ、その後、「このままでは地元に戻れない」と感じてWeb系に転じた、という流れです。
——経営者になったきっかけは、もともと独立志向だったからですか?
いえ、独立したいと思って独立したわけではないです。コロナの時期に、心と体がかなりきつくなって、人間関係も含めて限界がきたことが大きかったです。ベンチャーにいたので、会社側から「辞める人はいませんか」という流れがあり、早期退職で辞めたのがきっかけでした。
そのとき、独立志向はほぼゼロでした。ただ、組織に戻るとまた人間関係で苦しくなるかもしれないと思ったときに、最初にお話しした「大切にしていること」はずっと自分の中にあったんです。だったら、この機会にやってみようと思って始めました。
なので、正直申し上げると、私自身、前向きな独立ではありませんでした。それでも、やってみたら形にはなっていった。そういう実感があります。
「雇わない」と決めた組織運営。上下ではなく、対等な協働へ
——現在の組織体制について教えてください。
私一人で事業を回しています。これは最初から決めていたことであって、今後も誰も雇わない方針です。必要なときは、プロジェクトごとにパートナーとつながって進めます。業務委託という形もありますし、会社同士で持ち合いのように協力することもあります。
——なぜ「雇わない」という方針にしているのでしょうか?
コロナの時期に心と体を壊した背景として、会社組織でマネージャーや中核管理職を担い、やったことのない部署のマネージャーになったこともありました。その中で限界がきたんです。そこで、自分が思っていることと相手が思っていることは違うと強く感じました。
だから自分で会社をやるときは、「自分はこうです」ということは言うけれど、やりたいことを実現するためには、自分だけではできない。だったら、得意な仲間とプロジェクトを組み、対等な立場で進めたほうがいいと考えました。
社員という形で上下関係が生まれると、どうしても忖度が生まれる部分がある。そこを避けたい思いがあります。
——1人でローカル事業まで回しているのは、かなり大変ではないですか?
よく驚かれますが、それは私にとっては最大の褒め言葉です。たとえばテントサウナも、運営は基本的に私1人でやっています。Webで効率化できるところは徹底的に効率化して、3年間で自分の体内で回せる形をつくってきました。
テントも倉庫には5〜6個ありますが、私が対応できる範囲を考えて、夏でも最大3個までにしています。天候のこともあるので、毎回たたんでいます。最初はテントを張るのも難しかったですが、商品選びも含めてトライアンドエラーを繰り返して、1人でも回せるようにしてきました。
労働集約型からの脱却へ。Web事業を強化し、地方企業の伴走者になる
——現在の主力事業と、今後注力したい事業を教えてください。
売上や利益の面でいうと、今のメインはローカル事業です。次がコトバ・カタチ事業です。共創事業は「こういうこともできますよ」という位置づけで、事業インパクトとしては大きくありません。
今後の注力先としては、ローカル事業も別サービスをつくりながら続けつつ、一番力を入れたいのはコトバ・カタチ事業、つまりWeb系の事業です。ローカルだと届けられる範囲に限りがありますが、Webなら私たちが届けたいことをより広く届けられると考えています。
——現在の課題はどのような点にありますか?
大きく2つあります。1つは、労働集約型のサービスに依存していること。もう1つは、Web系サービスを提供できる一方で、地方の中小企業や個人事業主との間にあるバジェットのギャップと知識の格差です。
知識の格差というのは、たとえばAIひとつ取っても、都市部と地方では理解度が違うことです。地方では「AIって何なの?」という段階の方もいます。
そこをどうこじ開けるかがまず課題です。こちらが持っている知識をそのまま伝えるのではなく、相手に届く形にしないといけないと感じています。
——今後、Web事業はどのように展開していきたいですか?
地方の中小企業や個人事業主、スモールビジネスの経営者に対して、Webの中にあるDX、SNS、公式サイトなどを含めて、パッケージのような形で提供したいと考えています。
言い方によってはコンサルに見えるかもしれませんが、裏ではAIツールを活用しているので、私としてはコストを大きくかけずに提供したい。
まずは信頼してもらい、その先で「Webの事業部長を代行しますよ」というような世界観に持っていきたいんです。相談もできて、実務もやってくれる存在として、地方企業の伴走者になっていきたいと思っています。
3年後の売上イメージとしては5000万円を挙げましたが、私が本当に求めているのは額そのものよりも率です。売上高だけを追うというより、どういう事業構造で成り立っているかを大事にしたいです。
仕事と地続きの暮らしの中で、意識してつくる「家族の時間」とサウナ時間
——お休みの日の過ごし方や、リフレッシュ方法を教えてください。
独立すると、公私があまりきれいに分かれない感覚はありますが、あえて言うなら家族の時間と、サウナに入ることです。
実はサウナは15年くらいずっと好きでした。サウナブームがあったから始めたわけではなく、もともと好きだったんです。
私にとってサウナはあくまで手段で、地元に帰ってきたときに自由に入れる滝と川があったから、「ここでサウナができたら最高だな」となって事業につながりました。
——サウナを事業にしてみて、ご自身のサウナとの向き合い方に変化はありましたか?
そうですね。サウナ事業を始めたら、逆に自分が全然サウナに入れていないことに気づいたんです。
これはまずいなと思って、最近はちゃんと時間をつくってサウナに入るようにしています。好きなものを仕事にしたからこそ、意識して自分のための時間を確保するようになりました。
——最後に、これから起業したい人や中小企業の経営者にメッセージをお願いします。
「なんとでもなるし、やってみて駄目だったら別で転職すればいいし、起業って別にハードル高くない」ということです。明確な目標がなくても、やり始めたら自然と目標は出てくるし、形にもなっていくと思います。
私は40歳で独立しました。若くても、何歳でもいいと思います。「踏み込む勇気だけ」が大事なのではないかと感じています。