自然の息吹を、永遠の価値へ。流木が紡ぐ「再生」と「感性」の物語

株式会社ゴールデンエッグ 代表取締役 児玉昌彦氏

世界中から海を渡って流れ着く流木。その中から質が良く魅力的な素材を見極め、唯一無二の作品へと昇華させる株式会社ゴールデンエッグ。自然が長い時間をかけて生み出した形に新たな価値を与え、国内外への発信を視野に入れながら挑戦を続けています。本記事では代表取締役・児玉昌彦氏に、事業の原点、これまでの転機、組織のあり方、未来への展望、そして自身の生き方について伺いました。

自然の造形美を「アート」として次世代へ

――御社の事業内容について、教えていただけますか?

私の事業は、世界中から日本の海岸に流れ着いた流木の中から、質が良く魅力的なものを自らの目と足で探し出し、それを「作品」へと昇華させて再び世界へ送り出すことを目的としています。流木は、山で伐採され運搬製材された木とは違い、自然の力で川や海を流れ、波に揉まれながら形を変えてきた木なんです。水に削られ、弱い部分が削れ落ち、強い芯だけが残る。その過程を経た独特の風合いは、人間が計算して作れるものではありません。

私たちが大切にしているのは、単なるブームで終わるようなものではなく、何十年、何百年というスパンで愛される作品にすること。空間に余裕のあるホテルや旅館、リゾート施設や百貨店、飲食店といった法人様から、別荘やマンション、邸宅をお持ちの個人様まで、その空間に「いい空気」を流すための装飾を手掛けています。

――流木を扱う上で、大切にされている「理念」は何でしょうか。

一番は「意味価値」の創造です。かつては環境美化の一環だった流木を、高圧洗浄や煮沸処理を経て「芸術」へと昇華させています。手にした人が癒しや勇気をもらえるような、魂の入った作品作りが私の理想です。

資源が枯渇する現代、誰もが見向きもしなかったものに価値を見出すリジェネラティブで、サスティナブルな姿勢は事業の根幹です。向き合っているのは単なる「モノ」ではありません。扱っている多くは、日本一深い駿河湾と日本一高い富士山。その日本一高低差のある中間に打ち上げられる流木には、自然の力が刻まれていると感じています。

最近は、その個性を活かした「流木キャットタワー」など実用性のあるアート制作にも取り組んでいます。自然を暮らしに取り入れることで、忙しい現代人が安らぎを感じられる時間を生み出したいとも考えています。

人間本来の豊かさを取り戻す。そのきっかけを、作品というかたちで届け続けていきます。

リゾートでの気づきと転機のターニングポイント

――児玉様が経営の道に進まれたきっかけを教えてください。

私のキャリアは少し変わっていて、20代前半はサファリパークでキリンやゾウなどの飼育員をしていました。そこからリゾート業界に興味を持ち、運営や経営を学ぶ中で流木に出会ったんです。都会から遊びに来られるお客様が、リゾート地に飾られた流木を見て、非常にリラックスされている。その空気感を見て「これは都会にはない、人の心を動かす力がある」と直感したのが始まりでした。

30歳で独立を志した矢先に大怪我をして1年間まともに動けない時期もありましたが、その間に「食べていくために何でもやる」という覚悟が決まりました。流木を本格的に事業としてスタートさせたのは11年ほど前。最初は全く注文が入らず不安な日々もありましたが、仲間と「世界に行くぞ」と意気込んだ翌朝に最初の注文が入り、そこから有名旅館や大手建設会社とのご縁が次々と繋がっていきました。

――これまでの11年間で、特に印象的だった変化は何ですか?

「売りたい」という欲を捨てた時に、道が開けました。当初はイベントに出店しても全く売れず苦い思いをしましたが、「まずは驚き、楽しんでもらう装飾をメインにしよう」と方針を変えた途端、人々の反応が劇的に変わったんです。テレビ取材をきっかけに、インテリア会社の会長が横浜から訪ねてきてくださるなど、良きご縁が次々と繋がるようになりました。

この11年で痛感したのは、「正解のない世界」だからこそ走り続ける大切さです。流木という価値が伝わりにくい分野で、SNS発信やHPの整備といった泥臭いアクションを積み重ねた結果、大手建設会社様が手掛けるホテルのフロント装飾といった大きな舞台へ道が開けました。

注文が入らない時期があっても足を止めず、「自分たちの仕事は素晴らしい」という自負を持ち続ける。ドバイ進出を模索する中でのコロナ禍も一つの経験とし、挑戦を止めない意気込みこそが、熱心なファンやパートナーを呼び寄せる原動力になったのだと確信しています。

感性で繋がる「プロ」の形

――現在の組織構成と、メンバーとの関係性についてお聞かせください。

現在は、私ともう一人のパートナーである土屋の2名が中心です。土屋は別会社を経営していますが、流木部門においては私の最強のパートナーとして動いています。私たちの仕事はアーティストとしての「感性」と「行動力」がすべて。ですから、単に決められた時間を労働に充てるという考え方の人とは一緒に仕事ができません。

世の中の基準に無理に合わせるのではなく、お互いが経営者としての視点を持ち、自立したプロとして参画する。基本的には成果報酬に近い形ですが、自分の目利きと体力、そして感性と技で作ったものが評価され、収益に繋がるという喜びを共有しています。

――外部の営業担当の方とも、非常に良い関係を築かれているそうですね。

ええ、特に「流木キャットタワー」を広めてくれているチームは、元々私のお客様でした。作品に惚れ込み、横浜から静岡へ移住してまで力を貸してくれています。彼らは自らブランドを立ち上げ、全国のイベント出展も自分たちの経費で行うなど、深い信頼で結ばれた理想的なパートナーです。

特筆すべきは、単なる委託を超えた「共鳴」です。彼らはお客様からのオーダーが決まると制作費用をすぐにこちらへ振り込み、「制作をお願いします」と私たちのクリエイティビティを真っ先に尊重してくれます。この揺るぎない敬意があるからこそ、私たちは雑念なく最高の一品を生み出すことに没頭できるのです。

組織を大きくすることが正解だとは思いません。アーティストの魂を共有できる少数のプロが、それぞれの持ち場で力を発揮する今の形こそが、流木を確かな価値へ変える最短距離です。一つの作品が世に出る喜びを分かち合う自立した関係性が、キャットタワー事業の伸びを支えていると感じています。

人間ならではの「感性」を世界へ戻す

――今後、挑戦していきたい「新規事業」や「目標」を教えてください。

3年後には今の8倍から10倍の規模を目指して、日々邁進しています。具体的には、私の飼育員時代の経験を活かした「動物関連」の分野を強化したいですね。今はキャットタワーが中心ですが、爬虫類用のケージやバードタワーなど、流木の素材感を活かした実用的なアートをさらに増やしていく予定です。

また、「世界」への発信も加速させます。まずはアクセサリーやかんざしといった小物から始め、日本人の流木アーティストが作った作品として、世界中から流れてきた流木を「作品」として元の世界へ戻していく。この「循環」と「繋がり」をひとつの形にしたいと考えています。

――児玉様が考える、最終的な会社の「あるべき姿」とは何でしょうか。

巨大な会社にすることが目的ではありません。提供する「意味価値」と、そこから生まれる「経済価値」がイコールになるような、健全でアーティスト気質な会社であり続けたい。ゆくゆくは、関係した人たちが「児玉の作品に出会えて本当に良かった」と言ってくれるような足跡を残すことが理想です。

120歳までは現役で作り続けるつもりですから(笑)、挑戦は終わりません。AIが進化する時代だからこそ、人間にしかできない「感性」の領域を追求したい。自然の力で旅をしてきた流木に、人間が新たな意味を添える。その営みを、次世代へ繋がる価値として確立させていくことが私の使命です。

現在は制作拠点や保管場所の拡充を見据えていますが、これは「価値をストックする」という前向きな攻めの姿勢です。財務面も含めて強化を検討しながら、より大きな挑戦ができる土台を整えていきます。目指すのは、モノではなく自然からの「驚き」や「感動」を作品としてご提供する会社。世界中の方々が「この作品を置くことがステータスだ」と感じる唯一無二のブランドを築き上げたいと強く決意しています。

自然と共生する「海底清掃」と「秘密基地」

――お休みの日などのリフレッシュ方法について教えてください。

私は根っからのアウトドア派で、自分をリセットするには自然の中に入るのが一番だと思っています。特にお伝えしたいのが、20年以上続けている「海底清掃」です。私が生まれ育った沼津の海底が汚れているのを見て、脚を怪我した時のリハビリを兼ねて潜り始めたのがきっかけでした。海底に沈んだゴミを引き上げるのは、ビジネスではなく、地球に暮らす一人の人間としての義務だと思ってやっています。今ではサンゴが戻ってくるほど海底が綺麗になり、孫にも誇れる活動になっています。

――「秘密基地」をお持ちだというお話も、非常に興味深いです。

実家の山の中に、江戸〜明治時代に石を切り出していた跡地があるんです。そこが四角い洞窟のようになっていて、私の「秘密基地」になっています。猪や鹿も近くにいるような場所ですが、そこでお茶やコーヒーを淹れて過ごす時間は格別です。外の世界のノイズが届きにくいので、一人で思考を整理するには最高の場所ですね。

――本もよく読まれるそうですが、どのようなジャンルが多いですか?

歴史書や、新しい気づきを与えてくれるビジネス書が多いですね。小説はあまり読みません。本というのは、わずか数千円で他人の「脳みそ(思考)」を覗かせてもらえる最高のツールだと思っています。自分一人の脳みそでは限界がありますが、先人や優れた経営者の知恵を借りることで、自分の事業にも新しい視点を取り入れることができる。自然に触れて感性を研ぎ澄まし、本を読んで知性を磨く。このバランスが、私の作品作りの源泉になっています。

これからも、この豊かな循環を大切にしながら、世界を驚かせる作品を世に送り出し続けていきたいです。

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