「社会企業家」を育て、地方創生を前に進める――大塩裕史の挑戦と展望

NPO法人地方創生協会 理事長 大塩 裕史氏

地域の経済をどう活性化させるか。空き家問題のように、終わりの見えにくい課題とどう向き合うか。その問いに、「社会企業家を育てる」というアプローチで挑んでいるのが、NPO法人地方創生協会です。設立から数年で、現時点の構成メンバーは約15名。全員が本業を持ちながら、知人の紹介を中心に「長く関わり合えそうな仲間」とともに、少しずつ土壌を整えています。目指すのは、福祉寄りの支援というよりも、あくまで「経済活性化につながる地方創生」をぶらさずに続けていくこと。本記事では、学生や行政機関との接点づくり、そして地域の課題に伴走できる体制づくりまで伺いました。

地方創生協会の事業と、二つの軸

――まず、事業内容について教えてください。

当協会は、名前の通り「地方創生」を目的に活動しているNPOです。根底にあるのは、地域の経済を活性化させたいという意図です。設立からまだ数年ということもあり、現時点で大規模な事業を運営しているわけではありません。

ただし、目線としては明確で、私個人としては社会企業家を育てていきたいという思いがあります。学生の方々と一緒に取り組んだり、今後は行政機関とのつながりを強めたりしながら、地域のプレーヤーや制度と「うまくマッチング」させていきたい。事業を起こす際の伴走もできたら、という構想を持っています。

一方で、協会内には空き家問題にフォーカスしたい会員もいます。現状としては、「社会企業家の育成」と「空き家問題」ーーこの二つをそれぞれ走らせている段階です。

なお、当協会の活動は非収益の考え方を前提にしています。私たち自身が収益を生む形ではなく、たとえば「商店街がさびれてしまったので知恵を借りたい」といった相談があれば呼んでいただく、あるいは空き家に困っている自治体に対して何らかのアプローチができないかを考える、といった形です。

ただ、現状は「こちらにフルコミットできるメンバー」がいるわけではなく、動ける時間が限られる中で、少しずつ人脈や進め方を組み立てている感覚です。

「続けたい」という思いから始まった団体化

――この取り組みを始められた背景を教えてください。

私の原点は、JC(日本青年会議所)での経験です。街の社会貢献や街づくりを推進していく組織で、所属していた地域では、その地域に向けた事業はできる。けれど私には「実家が別の場所にある」という感覚もあり、もっと地方のほうでも、社会企業的な事業や街づくりができたらいいのに、という思いがありました。

JCは40歳で卒業する決まりがあります。だからこそ、卒業後も「せっかくなら続けていきたい」と思ったんです。30代後半の頃に、「こういうことをやりたい」と仲間に声をかけ、同じ気持ちの人が集まってきて、団体化した――そんなイメージです。

当初は「構成メンバーが40前後」といった話もありましたが、現時点では15名程度です。ただ、数の多さよりも、長く続けられる関係性を大事にしてきました。紹介でつながる形が中心で、関係値のある中で「長期的に付き合いそうな方」を招き入れている。だから、活発に動けているかと言われれば課題もある一方で、すぐに解散するような状態ではない、という感覚があります。

「経済活性化につながるか」を判断軸にする

――運営の判断軸になっている価値観を教えてください。

最初のスタートラインはシンプルで、「地方創生をしたい」ということです。そこから手法の話になりますが、私が大事にしているのは、ぶれずに続けること。そして、当協会が目指す地方創生は、あくまで経済活性化に寄与する形で進めたい、という立ち位置です。

もちろん、事業を行うことによって、困っている人を助けたいという気持ちはあるのですが、一方で「その事業を通じて本当に経済の活性化につながるか」という問いが私の中に出てくることがあります。

紹介を受けて一緒に取り組むとしても、相手のやりたいことを理解したうえで、私たちがコミットする以上は、地域の経済活性化という最終ゴールが一緒に見えるかを確認する。そこは判断の軸として大切にしています。

組織として、目的・やり方が統一できなければ、同じ場でやるよりも、それぞれ別で進めるべきかもしれない。そう考えることもあります。やりたい気持ちは間違いではないからこそ、協会としての軸と丁寧に照らし合わせていく姿勢を、誠実に持ち続けたいと思っています。

組織づくりと「プレーヤー不足」への向き合い方

――現在の組織体制と、コミュニケーションの工夫を教えてください。

当協会のメンバーは、個人事業主の集まりが中心で、サラリーマンの方もいます。常に同じ場所にいる組織ではないので、行動が見えづらい部分はあります。だからこそ、情報共有の場づくりを意識していて、2カ月に1回の定例会を開き、そこで状況共有をしています。グループのLINEなどで「今こんなことをやっている」とアナウンスする形も取っています。

課題として大きいのは、NPOとして向き合うべきテーマが多い中で、どうしてもプレーヤーが不足してしまうことです。理事メンバーも本業があり、手が空くまでには年数がかかる。だから、今のメンバーに無理をさせるよりも、新しくプレーヤーになりたい人が入って成長していく仕組みや、別の支援NPOと組んで動ける力を補う形をつくれたらいいと考えています。

一緒に取り組む人材像としては、私の関心領域で言えば、特に若い世代です。年上の方に私が助言をするのは、おこがましいと感じる部分もありますし、個人的には「これから頑張りたい人を応援できる体制」を作りたい。20代のうちから挑戦したい人に、積極的に機会や支援を届ける方向に力を入れていきたいと思っています。

行政との連携、マッチング、そして持続可能性

――今後、取り組んでいきたい挑戦や展開を教えてください。

私がいま思い描いていて、まだ実装に至っていないのは、行政機関とのつながりを増やすことです。地域おこし協力隊のような制度も含めて、行政側と早めに連携し、マッチングのポジションを担えるような場が持てれば、確率は上がる。よりスムーズに、プレーヤーや制度の接続ができると思っています。

入口としては学校などで私が伝えていく役割もあり、出口としては行政機関との連携が重要になる。市役所の担当者、議員の方、場合によっては市長と話す機会も含め、制限を設けず協力関係を広げていきたいというスタンスです。

――業界全体を見たときの課題感はありますか。

また、業界という言い方が難しい領域ではありますが、見ていて感じるのは、気持ちは強いのに、お金がついてこないというパターンが起こりやすいことです。困っていることを解決することと、それを持続可能な事業として回すこと。この両輪を走らせる難しさを抱えている団体は多いのではないかと思います。

だからこそ、資金調達や事業展開の考え方など、「持続可能性」に寄り添った支援や助言を届けられれば、と考えています。

リフレッシュと、次世代へのメッセージ

――お休みの日のリフレッシュ方法を教えてください。

リフレッシュは、シンプルに寝ることもありますし、旅行も好きです。家でYouTubeやアマプラを見ながら、何も考えずにぼーっとする時間を作ることも多いですね。最近は、お寺に行っています。伊勢神宮から入って、西国三十三所のお寺巡りのようなものを始めていて、いまはそれがマイブームです。

海外にも本当は行きたいのですが、私は基本的に日本食がすきなので、旅行は国内に寄りがちです。ただ、カンボジアに行ったときは言語が通じにくい中で、Google翻訳も使いながら現地の方と会話した経験もあります。

そして、地方創生の観点では、日本のメイドインジャパンのものは海外で売れる、という認識を持っています。地域の特産品を海外に輸出するルートづくりも価値があると思いますし、既に国の仕組みもあります。たとえばJETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)のように支援してくれるところがあるなら、ゼロから作るより連携した方が早い。そういう協力関係も、今後強めていけたらと考えています。

――最後に、読者へ伝えたいことがあればお願いします。

読者の方、とくに経営者やこれから目指す方へ伝えたいのは、「挑戦してほしい」という気持ちです。私自身、今の生活に後悔はありませんが、もし戻れるなら20歳くらいから挑戦しても面白かったかもしれない、と思うことがあります。若いって、それだけで大きな力です。

お金も必要な場面はあるけれど、ある程度整ったら、自分のやりたいことに突き進んでほしい――立場は分からないですが、そんな気持ちで、これから挑戦する方々を応援していきたいと思います。

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