「自分の人生を自分で選ぶ」教育を。学生起業家が仕掛ける、自走する力を育む新たな学びの場
合同会社WhyLab 代表社員 金沢 旺央氏
「自らの意思で人生を選び、情熱とこだわりを持って熱中して生きてほしい」。そんな熱いビジョンを掲げ、現役大学生でありながら教育事業を立ち上げたのが合同会社WhyLabの金沢旺央氏です。同社が展開する個別指導塾、そして2026年4月に開校を控える「Study Room by WhyLab」は、単なる成績向上や合格実績を追う場所ではありません。競争や外部評価に振り回されるのではなく、「学び方を学び」、自己調整力を養うことで、生徒たちが自ら未来を切り拓く力を育むことを真の目的としています。かつて自身のアイデンティティに悩み、教育に救われた経験を持つ金沢氏が、なぜ「学生」という枠を超えて起業の道を選んだのか。駅前で夢を語り歩いた泥臭い創業期から、100倍以上の成長を見据える未来の展望まで、その情熱の源泉に迫ります。
目次
「競争」ではなく「自己肯定」を。教育の常識を覆すStudy Roomの挑戦
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
合同会社WhyLabでは、「自らの意思で自分の人生を選び、情熱とこだわりを持って熱中して生きていける人生を」というテーマのもと、教育事業を展開しています。現在は個別指導塾の運営に加え、2026年4月からは新たに「Study Room by WhyLab」という場所をスタートさせます。
多くの塾は、成績や順位といった「外部的な実績」を重視し、競争を煽ることで生徒を伸ばそうとします。しかし私たちのStudy Roomでは、思春期の繊細な時期に、順位や偏差値だけで自分の価値を決めてほしくないと考えています。「今日頑張ったこと」を自分自身で認め、比較ではなく「自分は自分でいいんだ」と思える自己肯定感を育む場所を目指しています。
――個別指導塾の方では、どのような指導を大切にされているのでしょうか。
「学び方を学ぶ」というコンセプトを非常に大切にしています。中学生や高校生を対象に、ただ問題を解かせるのではなく、考え方や計画の立て方、目標設定の方法など、自走するためのスキルを身につけてもらいます。どちらの事業も根底にあるのは、生徒たちが「自分の人生を、自分の足で歩んでいけるように」という強い願いです。現在は実店舗での指導のほか、全国から受講可能なオンライン指導も受け付けています。
「自己表現を閉ざした過去」と「恩師との出会い」が起業の原点
――教育の道に進もうと思ったきっかけや、起業の背景を教えてください。
実は僕自身、教育によって人生が救われた経験があります。韓国で生まれ、日本での生活の中でいじめに遭った時期がありました。「自分を表現すると叩かれる」という恐怖から、心を閉ざしてしまったんです。そんな僕を救ってくれたのが、小学5年生の時の担任の先生でした。「ありのままの君でいいんだよ」と認めてくれたことで、再び自己表現ができるようになった。その時から、「いつか自分も教育の道へ進み、誰かの力になりたい」という思いが芽生えました。
――大学入学後に、何か心境の変化があったのでしょうか?
大学1、2年生の時、中学・高校時代のように何かに全力になれていない自分に直面し、強い違和感を覚えました。また、アルバイトで個別指導塾の講師を経験しましたが、既存の塾のあり方そのものに疑問を感じるようになったんです。「僕がやりたい教育はこれじゃない。今の生き方で胸を張って教育者になれるのか」と。そこから、「それなら自分で理想の道を作ってみよう」と決意し、大学在学中に起業することにしました。
駅前で「夢」を語り、道を切り拓いた泥臭い創業期
――起業されてから現在4期目を迎えられていますが、最大のターニングポイントは何でしたか?
創業当初、家庭教師事業から始めたのですが、全く集客ができませんでした。塾講師としての指導力には自信があったのですが、経営は別物でした。1年間、ひたすら訪問営業やビラ配りをしましたが、資金は底をつき、自分の生活費のためにバイトをしては会社に貸し付けるという苦しい日々でした。
そんな時、メンターとなる先輩経営者との出会いがありました。毎週、経営者が集まって数字とビジョンを報告し合う会議に参加させてもらうようになったんです。そこで「結果が出ていない事実から目をそらすな」「思いがあるならボランティアでいいじゃないか。なぜ会社をやっているんだ」と厳しく詰められました。
――そこからどのように行動が変わったのでしょうか?
自分のビジョンや売上に対するこだわりが、いかに甘かったかを痛感しました。そこから、「本当に自分がやりたいことは何か」を自分に叩き込むために、ホワイトボードを持って駅前に立ち、通行人に「夢を語らせてください」と声をかけ続けました。怪しまれたり拒絶されたりすることも多かったですが、必死に語り続けるうちに、ブラッシュアップされた僕の思いに共感してくれる人が現れ始めました。
その繋がりからお仕事をいただいたり、以前の塾のオーナーから「場所を貸すから一緒にやろう」と声をかけてもらったりと、状況が劇的に好転しました。あの時、逃げずに人前で夢を語り続けたことが、現在の多店舗展開への足がかりになったと確信しています。
松本から全国、そして世界へ。「熱中できる社会」をデザインする
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
WhyLabのビジョンである「情熱と熱中」は、学生だけでなく大人にも必要なものだと思っています。今後は、僕たちが持つ「動機付け」や「自己調整学習」の知見を、広く社会全体、特に大人の層にも届けていきたいです。
まずは長野県松本市という地に根を張り、「人生に悩み、本気になりたいと思った時に、真っ先に頼りたくなる場所」としての地位を確立します。そこから規模を拡大し、日本中の人が自分の人生にこだわりを持てるような価値提供をしていきたい。さらに長期的には、僕自身のルーツである韓国や、得意な英語を活かし、世界の知見を取り入れながらグローバルに展開していくことも視野に入れています。
――3年後には売上50倍という非常に高い目標を掲げていらっしゃいますね。
それくらいのインパクトを与えられる存在になりたいと考えています。そのための課題は「仲間」です。これまでは僕一人のマンパワーで動いてきましたが、同じビジョンを持って経営を担ってくれるフルコミットのパートナーが必要です。学生起業という枠を飛び出し、本気で社会を変えようとする熱いチームを作っていきたいですね。
将棋と運動、そして夢を語る酒場。大学生起業家のリフレッシュ法
――学業と経営の両立で多忙を極めていると思いますが、休日はどのように過ごされていますか?。
「丸一日何もしない日」というのはほとんどありませんが、心身を壊さないよう適度に休暇は取っています。趣味で言うと将棋が大好きですね。あとは水泳やランニングで体を動かすことも。一番のリフレッシュは、仲間と飲みに行って「俺はこれがやりたいんだ!」と夢を語り合うことかもしれません。結局、仕事も趣味も「熱中すること」に繋がっている気がします。
――起業を目指す方、そして経営者の皆様へのメッセージをお願いします。
振り返ってみて一番大事だったのは、「決断」です。決断とは「断つものを決める」ことだと思います。僕は大学在学中に起業しましたが、途中で「最悪、学生に戻って就職すればいいや」という甘い考えを完全に捨てました。退路を断ち、「WhyLabで生きていく」と決めた瞬間から、運命が動き出しました。
何かを成し遂げたいなら、「やらないこと」を決めて、エネルギーを一点に集中させる。これは学生であっても、ベテランの経営者であっても共通する本質ではないでしょうか。僕もまだまだ走り始めたばかりです。皆さんと一緒に、情熱を持って高みを目指していければ嬉しいです。