「車のことは全部任せて」を形にする――ワンストップで支える神戸川オートサービス
有限会社神戸川オートサービス 代表取締役 梶谷 圭司氏
有限会社神戸川オートサービスは、自動車の販売と整備を軸に、保険、板金塗装までを自社で担う「ワンストップ」体制を整えてきた会社です。創業は昭和53年。梶谷圭司氏は第三者承継で事業を引き継ぎ、代表就任後は販売・リースの強化や店舗づくり、SNS活用など、地域のカーライフを支える仕組みを進化させてきました。本記事では、事業の強み、組織づくり、業界の見通し、そして仕事観を伺いました。
目次
「カーライフを一括管理する」ことが事業の核
――御社の事業内容や理念を教えてください。
弊社は、自動車の販売と整備をメインに行っています。理念は、お客様のカーライフを一括して管理すること。修理や販売はどこでもできますが、「管理」という業務はなかなかできません。車に関しての全てのことをこちらが見ていく、そこが仕事だと思っています。最近はリース販売が多いのですが、車のことをまとめて管理する発想が理念にもつながっています。
――ワンストップだからこそ喜ばれたことはありますか?
販売から保険、整備、板金塗装まで自社で対応しています。事故があったときも、保険の協定や金額の調整まで含めてこちらでやるので、お客様は「こうしてほしい」と言ってくれればいい。全部任せられる点が価値になっていると思います。指定整備工場でもあるので、自社で完結できることもメリットです。
異業種から整備士になり第三者承継で経営の道へ
――この業界に入った経緯を教えてください。
大学は土木系で、建設・建築事務所に入り、CADで道路設計をしていました。ただ当時は公共事業削減の流れがあり、今後厳しくなるかもしれないと感じて専門学校に通い直し、整備士資格を取得しました。
中途だったので就職先が見つかりにくい中、この会社が高齢で辞められるという話を聞き、面接で「車で経営がやりたい」と伝えて入社しました。そこで7〜8年ほど働き、会社を譲ってもらったのが今の形です。
――経営者になるとき、不安はありませんでしたか。
当時、整備士は賃金も安く、整備だけでは食っていけない感覚がありました。自動車業界でやるなら経営しないと、という思いがあったので抵抗は少なかったですね。現在、従業員は7名、外国人技能実習生が2名います。
アットホームで専門性が高い。重視するのは「責任の持ち方」
――社風を教えてください。
アットホームな雰囲気です。一人ひとりが分野ごとにプロで、レベルは高いと思います。ざっくばらんに話せる関係です。
――どんな人と働きたいですか。
受けた仕事に責任を持てるかどうか。ミスする・しないは二の次で、できなければ「できない」と言える、助けが必要なら「やってほしい」と伝えられる人がいいですね。
お客様に対しても同じで、ミスしたときに「ミスしました」と言えるかどうかが信頼につながります。うちはお客様との距離が近く、話すうちに任せてくれる関係になるので、誠実さが大事だと思っています。
女性顧客が増えた理由は「店舗」と「発信」
――お客様の層はどう変わりましたか。
承継前は高齢者中心で、このままだとお客様がいなくなる状況でした。そこで販売とリースを始めた結果、今は20〜40代の女性顧客が非常に多いです。
――なぜ女性が増えたのでしょうか。
整備工場の隣に販売専門の店舗を建て、ジョイカルとしてFCを始めました。建物をカフェっぽい雰囲気にして、広めのキッズスペースを設置、トイレも男女別にするなど、女性好みにこだわりました。
設計には女性スタッフ2名も関わっています。リースが主婦層に響き、紹介で増えていった面もあります。女性は「行きつけの車屋」がないことも多く、一括で相談できる点が選ばれた理由だと思います。
――集客はどのように行っているのでしょうか。
SNS広告に力をいれています。Google、インスタ、YouTubeも。YouTubeは動画配信をしていますが、視聴者がじわじわと増えています。Googleのビジネスプロフィールで経路検索して来られるケースも増えている感覚です。
――便利と言われる取り組みはありますか。
一昨年、タイヤ保管倉庫を建ててタイヤ預かりを始めました。車検やメンテナンスを弊社で利用してくださる方には特別価格でお願いしています。「タイヤを積んで持ってこなくていいから便利」と言われます。Web予約の仕組みも導入し、楽になったという声があります。
業界は「なくならない」が、業態は変わる。次の一手へ
――業界の将来性をどう見ていますか。
田舎は車が1人1台必要なので、業界自体はなくならないと思います。ただ、業態は変わると思います。自分で発信して顧客を取れないと先細りになるかもしれない。車は壊れにくくなり、販売もディーラーやメーカー直販が進めば、新車販売は先細りになる。だから収益の取り方を変え、一括管理で囲い込む必要があると考えています。
法律やDXの変化も速く、コンプラやデジタル対応ができない店は厳しくなります。整備も車がコンピューター化して、できる範囲が変わっていく。さらに海外勢の参入も増えるかもしれません。だからこそ、薄利多売ではなく「1人のお客様を深く支える」方向に切り替えるべきだと思っています。
――今、力を入れ始めたことはありますか。
ワンストップ体制が整ったので、ここからは楽しい仕事も増やしたいです。最近は外車整備を少しずつ始めています。いろんな車を扱えるのはブランディングにもなるし、古い車などが入るとワクワクします。田舎はディーラーも充実していないので、差別化にもなると考えています。ただ、難しいものは外注するなど、線引きはします。
ゼロからではなく3から始める――第三者承継という経営の道
――今感じている課題はありますか。
日本人整備士がいないことです。技能実習生は期限付きなので、人が抜けると大きく影響が出る。日本人を採用していかなければならないと思っています。
――対策はなにかされているのでしょうか。
求人媒体も試しましたが、すぐ辞めることも多いです。だから、SNSやYouTubeで、僕が出て人となりを見てもらうことに力を入れています。今は商品より会社名を売るCMが増えたように、発信は求人にも効いています。そういう使い方をしていきたいと思っています。
――最後に、読者へメッセージをお願いします。
第三者承継はまだ多くないかもしれませんが、事業をやりたいなら「会社を譲ってもらう」のは近道だと思います。ゼロではなく、3や4からスタートできる感覚がありました。
そしてお金について。無借金が正解だと思っていましたが、最近は「やりたいことがあるなら投資した方がいい」と感じています。たまってからやろうとすると、その気を逃す。借り入れしてでも始めるべきタイミングはあると思いますし、補助金もうまく使えばいい。その二つが、いま伝えたいことです。