神戸から世界へ、日本の食の価値を届ける――挑戦の先に描く「三方よし」の商社像
神戸通商株式会社 代表取締役 難波 亮氏
日本の少子高齢化による市場縮小が進む中、多くの企業が海外へと活路を見出し始めています。そうした流れの中で、日本の食品や地域の魅力を世界へ届ける役割を担うのが神戸通商株式会社です。2025年に設立された同社は、輸出入事業とインバウンド事業を軸に、日本と世界をつなぐ架け橋として事業を展開しています。本記事では、代表取締役の難波亮氏に、創業の背景や事業の強み、経営における価値観、そして今後の展望について伺いました。
目次
神戸から世界へ――創業に込めた想いと事業の全体像
――会社設立の背景と現在の事業内容について教えてください。
神戸通商株式会社は、2025年9月26日に設立しました。前職では食品の輸出商社にて約8年間、海外営業に携わってきましたが、30歳という節目を迎えるタイミングで新たな挑戦をしたいと考え、起業に至りました。
創業の背景には、日本国内の市場縮小があります。少子高齢化の影響で国内の消費は今後も縮小していく中、多くのメーカーが海外展開に目を向け始めています。5年前は「海外は難しい」という声も多くありましたが、現在では「どうすれば海外に進出できるか」といった前向きな相談が増えてきました。このタイミングで企業とともに海外市場へ挑戦し、日本の価値を世界へ届けたいと考えています。
また、神戸という地名を社名に掲げたのは、国際都市としてのブランド力を高めていきたいという想いからです。自身が姫路出身ということもあり、神戸という港町から日本の魅力を発信していきたいと考えています。
事業は大きく3つに分かれています。1つ目は輸出事業で、日本の食品メーカーの商品を海外のスーパーやコンビニへ販売しています。調味料やお菓子、飲料、冷凍食品など、日本の日常にある商品をそのまま海外に届けるイメージです。2つ目は輸入事業で、海外の商品を日本に取り入れて販売しています。3つ目はインバウンド事業で、日本を訪れる外国人観光客向けに商品を提供するイベント販売や卸を行っています。現在は特に輸出事業に注力しています。
言語力と現場主義が生む独自の強み
――事業の強みや特徴について教えてください。
大きな強みは、海外とのダイレクトなコミュニケーション力です。私自身が日本語・英語・中国語・韓国語を話すことができ、現地のバイヤーや取引先と直接商談が可能です。これにより、現地のニーズや市場の実情を正確に把握しながら販売戦略を立てることができます。
また、社員も多国籍で、台湾や中国出身のスタッフ、海外経験のある日本人スタッフなど、複数言語を扱える人材が揃っています。海外とのコミュニケーションを担える体制は、他社にはない強みだと考えています。
もう一つは、小回りの利く組織体制です。地域のメーカーや小規模な事業者を訪問し、まだ海外に知られていない商品を発掘することに力を入れています。お菓子屋や味噌・醤油の製造者など、地域に根ざした魅力ある商品をスピーディーに見つけ出し、海外展開を提案できる点が特徴です。
「三方よし」に基づく経営判断の軸
――経営において大切にしている価値観を教えてください。
最も大切にしているのは「三方よし」の考え方です。売り手、買い手、そして世間すべてにとって良い状態であるかどうかを判断軸にしています。
たとえば、自社だけが利益を得ても、取引先が継続できないような状況では意味がありません。逆に仕入れ先が無理をして成り立っているビジネスも長続きしません。すべての関係者が健全に利益を得られる形こそが、持続可能な商売だと考えています。
時代が変化し、ビジネスモデルが進化しても、この考え方は普遍的なものだと思っています。社員にもこの価値観を共有し、事業を通じて社会に価値を届けることを意識しています。
挑戦を楽しむ組織づくりと人材観
――組織運営や採用で大切にしていることは何ですか。
設立間もない会社であるため、安定性という点では大手企業には及びません。そのため、採用時にはその点を正直に伝えています。その上で、不安ではなく「挑戦したい」「成長したい」と感じられる方と一緒に働きたいと考えています。
当社では「忙しい」という言葉を使わず、「大変」という言葉で表現するようにしています。忙しいは「心を亡くす」と書きますが、大変は「大きく変わる」と書きます。会社が成長している過程にいるからこそ大変であり、それは前向きな変化の証だと捉えています。
また、採用においては経験よりも想いを重視しています。貿易業務は専門性が求められますが、未経験でも海外に関わる仕事をしたい、日本と世界をつなぎたいという気持ちがあれば、入社後にしっかりと育成していきます。実際に新卒を含め未経験者も採用しており、意欲ある人材が活躍できる環境を整えています。
自社ブランドで切り拓く新たな価値創出
――今後の展望と取り組みについて教えてください。
今後は自社ブランド「神戸New Life」の展開に力を入れていきます。商社でありながら自社商品を開発することで、より強い価値提供が可能になると考えています。
このブランドでは、日本各地の魅力ある食材や商品に加え、神戸という地域のストーリーを掛け合わせて発信していきます。調味料や梅干し、おつまみなど、さまざまな商品開発を進めています。
「New Life」という名前には、自分たちの新たな挑戦という意味と、商品を手に取ったお客様に新しい価値や生活を提供したいという想いを込めています。
課題としては、今後の競争激化が挙げられます。海外展開を目指す企業が増える中で、価格競争に陥らないためには、独自性のある商品や販売チャネルを確立することが重要です。そのため、メーカー様との関係性を深め、特定の市場における独占的な流通を構築していきたいと考えています。また、自社ブランドの強化も重要な戦略の一つです。
支えられてきた経験と、これからの決意
――影響を受けた人物や今後の在り方について教えてください。
前職の社長の存在が大きな影響を与えています。その方は長年にわたり事業を続けており、その根底には常に「三方よし」の考え方がありました。この姿勢が多くの人からの信頼につながっていると感じています。
自分自身も、関わるすべての人から応援される存在でありたいと考えています。そのためにも、誠実に事業と向き合い、価値を届け続けていきたいと思います。
また、プライベートではサウナで思考を整理する時間を大切にしています。さらに家族との時間も重視しており、社員にも仕事と生活のバランスを大切にしてほしいと考えています。年間休日を多く設けるなど、働きやすい環境づくりにも取り組んでいます。