エクストリームと日常をつなぐ架け橋――X-FLYが創る“体験価値”という事業
有限会社エックスフライ 代表 松永 文也氏
カイトボードやウィングフォイルといった、まだ一般的とは言いがたいエクストリームスポーツの分野で事業を展開する有限会社エックスフライ。海外からの輸入卸を軸にしながら、単なる物販にとどまらず「体験」や「文化」そのものを提供する独自のスタイルを築いてきました。本記事では、代表の松永文也氏に、事業の成り立ちや経営の考え方、そして今後の展望について伺いました。
エクストリームスポーツを広げるという事業
――現在の事業内容について教えてください。
カイトボードやウィングフォイルといった新しいスポーツの用品を海外から輸入し、日本国内の販売店へ卸しています。いわゆる輸入卸販売が主な事業です。
ただし、当社の特徴は単に商品を仕入れて販売するだけではありません。カイトボードを取り扱い始めた当時、日本ではまだそのスポーツ自体がほとんど知られていませんでした。そのため、商品を売るだけでなく、スポーツを楽しむ環境そのものを整備することと並行して事業を進めてきました。
――顧客層について教えてください。
法人もありますが、実際には個人事業主の店舗が多いのが特徴です。近年はECを通じたBtoCも増えてきていますが、事業の中心はBtoBです。
「好き」が人生を変えたキャリアの転機
――経営者になられたきっかけを教えてください。
大学卒業後は神奈川県の職員として6年ほど働いていましたが、パラグライダーに出会ったことが大きな転機になりました。このスポーツの世界では、学歴や年齢、社会的地位といったものと関係なく、誰もが同じ立場で楽しんでいる。その空気に触れて、自分の価値観が大きく変わりました。
その後、パラグライダー業界に入り、さらに新しく伸び始めていたカイトボードの事業に携わるようになります。そして、前職の会社からその部門を引き継ぐ形で独立し、2006年に創業しました。創業当初は一人でのスタートでしたが、現在は3名体制で運営しています。
――経営の軸となる考え方は何でしょうか。
もともと「経営者になりたい」という意識があったわけではありません。好きなことに関わり続けた結果、今の形になったというのが正直なところです。だからこそ、自分が本当に面白いと思えることに向き合い続けることを大切にしています。
体験価値へのシフトと今後の展望
――今後の展望について教えてください。
これまで扱ってきたスポーツは、どうしてもエクストリーム寄りで敷居が高い側面があります。長年取り組む中で、一般の方が求めている体験との間に少しギャップがあることも感じてきました。
そこで現在は、「ミスティックリバーズ」という別事業として、スタンドアップパドルボードや川下りといった、より参加しやすい体験型サービスを展開しています。今後はこの体験事業に大きな成長の可能性を見ています。
もちろん、カイトボードなどのエクストリームスポーツは自分のアイデンティティでもあるため継続していきますが、より多くの人に届く体験の提供に力を入れていきたいと考えています。
――数値的な目標はありますか。
大きな市場ではないため、急激な成長は見込んでいません。3年後に売上30%増を最低ラインとして設定し、堅実に伸ばしていく方針です。爆発的な拡大よりも、持続可能な成長を重視しています。
市場を広げるという発想と課題
――現在の課題について教えてください。
日々の業務の中でオーバーワークになりがちな部分があり、業務の仕組み化を進めています。JANコードによる商品管理などを導入し、ルーチン業務を整理することでミスを減らし、その分のリソースを営業活動に振り向けたいと考えています。
――営業戦略についての考え方を教えてください。
同業他社とのシェア争いにはあまり関心がありません。それよりも市場そのものを広げることに価値を感じています。カイトボードも、ほぼゼロの状態から市場を作ってきました。新しい分野であれば、シェアを奪い合わなくても収益は伸ばせると考えています。
人生を豊かにする「体験」を届ける
――事業を通じて実現したい社会像を教えてください。
パラグライダーの選手として海外を回った経験から、ヨーロッパの人々のワークライフバランスの良さに強い影響を受けました。仕事だけでなく、スポーツや趣味を軸に人生を楽しんでいる。その結果として視野が広がり、人生が豊かになっていると感じました。
当社は商品を販売していますが、本質的に提供している価値はその先にある体験です。スポーツを通じて新しい世界に触れたり、旅に出たり、人と出会ったりする。そのきっかけを提供することが自分たちの役割だと考えています。
好きを貫くという選択
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
自分自身、成功しているとは言えませんが、好きなことを続けてきた結果、20年以上会社を続けることができました。子どもを育てながら、事業も継続できている。それだけでも十分に価値のあることだと思っています。
本当に好きなことに向き合い続けることで、結果的に人生は豊かになるのではないでしょうか。無理に何かに合わせるのではなく、自分の軸を大切にすることが重要だと感じています。