信用こそが零細企業の「命」。小回りと適材適所のネットワークで鋳物の未来を繋ぐ

有限会社光泉 取締役 加々美貴春氏

「鋳物(いもの)」という言葉から、何を連想されるでしょうか。古くから日本の産業を支えてきたこの技術は、今もなお多くの製造現場で不可欠な存在です。静岡県に拠点を構える有限会社光泉は、アルミ砂型鋳造を主軸に、多品種少量生産のニーズに応え続けています。

取締役の加々美貴春氏は、祖父の代から続く家業を継承し、現在は「お一人様経営」という独自のスタイルで、営業から現場管理、顧客対応までを一手に引き受けています。大規模な工場には真似できない圧倒的な「小回り」の良さと、長年築き上げた協力会社とのネットワーク。そして何より、加々美氏が最も重んじる「信用」という哲学。インフレやコスト高騰という荒波の中、謙虚に、かつ着実に顧客の信頼を勝ち取っていく加々美氏の経営の真髄に迫りました。

「適材適所」のネットワークで応える。最小組織だからこそできる柔軟な提案

――まず、現在の会社の現状と事業の特徴について教えてください。

当社はアルミ砂型鋳造による鋳物の製造を行っています。砂型鋳造とは、砂で型を作り、そこに溶けた金属を流し込む手法です。現在の最大の特徴は、何と言っても「小回りが利くこと」ですね。というのも、基本的には私一人で運営しています。私自身が営業としてお客様のご要望を伺い、自ら判断を下すため、意思決定のスピードと柔軟性には自信があります。

もちろん、一人では対応しきれない量のご注文をいただくこともあります。その際は、信頼できるグループ会社や協力会社に製造をお願いする形をとっています。会社案内にも掲げているのですが、私の役割は「適材適所」を見極めることです。お客様のお話をじっくり聞き、その案件に最も適した手法や協力先をつなげていきます。

――顧客へのフィードバックや、強みとして意識されていることはありますか?

新規のお客様、既存のお客様問わず、新しい案件を通じて得た知見や考え方は、必ず別の仕事にも活かすようにしています。「あの時のお客様はこう考えていたな」という気づきを、別のお客様へ提案し、そうした情報の循環を大切にしています。

また、小規模だからこそ、ロット数についても柔軟に対応しています。「合金の種類が、今メインで流れているものと同じであれば、10個でも5個でも問題ありません」とお伝えしています。大手では対応が難しいような細かな案件を、無理のない範囲で丁寧に拾い上げていく。それが当社の生きる道だと思っています。

家業を継ぐ決意と、根底にある「信用の哲学」

――加々美さんが経営の道に進まれたきっかけを教えてください。

これは、家業を営む家庭に生まれた者には共通する話かもしれませんが、元々祖父が鋳物屋をやっておりまして、父もその道を歩んでいました。自然な流れとして「次はお前が入ってくれ」という話になり、引き継ぐことになりました。

――経営において、絶対に譲れない価値観や心情はどのようなものでしょうか。

一言で言ってしまうと、やはり「信用」に尽きます。当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、これが一番難しいと感じますね。お互いに信用がなければ、仕事は成立しません。「この人とだったら一緒に組める」「光泉さんが言うならしょうがないね」と言っていただける関係性を築けるかどうか。それがすべてです。

かつては私も若さゆえに、配慮に欠けてしまったりすることもありました。しかし、お客様や協力会社様の方々とのやり取りの中で、自分なりに勉強し、反省しながら、「これはいけない」と自分を律するようになりました。特に当社のように社外の方々の力を借りて仕事をする場合、相手の要望もしっかり聞き、すり合わせを行うことが不可欠です。信用とは、日々の誠実な対応の積み重ねでしか得られないものだと痛感しています。

謙虚な姿勢が信頼を生む。トラブルへの向き合い方と今後の展望

――お一人で運営される中で、コミュニケーションや「人」のどこを見ていらっしゃいますか。

お客様や協力会社様とやり取りする際、図面には見えない「要望」を言葉にしてくださる方は、非常に仕事がしやすいですね。お互いに腹を割って話をすることで、立ち上げ後のクレームも減りますし、結果的にコストも抑えられる。極力、どのようなご要望もお聞きするようにしていますが、最後に「それは聞いていないよ」とならないように会話を大切にすることを心がけております。

――最近はコスト高騰などの課題も多いかと思いますが、どのように向き合っていますか。

確かに、原材料費やエネルギーコストの押し上げは非常に厳しいものがあります。特に今年の春先などは驚くほどの値動きでした。これに関しては、既存のお客様にも正直に現状をお話しし、価格の改定をお願いしています。

――今後の展望や、挑戦していきたいことはありますか。

劇的に何かを変えるというよりは、困った案件が舞い込んできたときに、ひとつひとつ門前払いをせずに検討し、解決していく。そうした姿勢を貫きたいですね。最近は世の中全体でインフレが起きていることもあり、以前に比べればお話を聞いていただけるようにはなってきたと感じます。お互いに無理のない範囲で、納得できる着地点を見つける努力をしています。

他社さんが撤退した案件や、動かしにくい木型の移管案件などの相談も増えています。もちろん単価の問題はありますが、ひとつひとつ「落とし物」を拾うように丁寧に対応していければ、必ず次へと繋がっていくと信じています。

朝の散歩が育む活力。謙虚な心を持ち続ける秘訣

――お仕事以外の、リフレッシュ方法などはございますか。

愛犬と遊ぶことですね。室内で飼っている8歳の柴犬です。もう「おじさん」ですが、今でもとても元気で毎朝、Ⅰ時間近く散歩に行きます。人が大好き、犬が大好きで、近所の散歩友達の柴犬の飼い主さん、犬達に会うたびにクルクルと回って喜びを全身で伝えているユニークな可愛い犬です。動物には本当に癒されますし、毎朝のルーティンが心のリフレッシュになっています。

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