AI時代に“人がやるべき仕事”とは何か──一次情報と創造性で価値を生む編集プロダクションの挑戦
アルファブルーム株式会社 代表取締役 平木 昌宏 氏
テクノロジーとエンタメの領域を横断し、一次情報にこだわったコンテンツ制作を手がけるアルファブルーム株式会社。AIの進化によりコンテンツ制作のあり方が大きく変わる中で、同社はどのような価値を提供していくのか。本記事では、創業背景から組織づくり、そして今後の展望まで、代表の平木昌宏氏に伺いました。
目次
一次情報に価値を置く──AI時代における編集プロダクションの役割
――現在の事業内容について教えてください。
私たちは、テクノロジーとエンタメに強みを持つ編集プロダクションとして、記事制作や動画コンテンツ、イベント企画などを幅広く手がけています。ジャンルや媒体にとらわれず、紙・Web・動画といった形式を横断しながらコンテンツを生み出しているのが特徴です。
――理念や大切にしている考え方について教えてください。
理念として掲げているのは「丁寧な取材で感動を信頼に変える」というものです。その中でも特に大切にしているのが、一次情報を生み出すことです。自分たちで体験し、調査し、観察して得た情報こそが、本質的な価値を持つと考えています。
AIが普及した今、過去の情報をもとにした整理や分析は、すでに人間以上の精度とスピードで行われるようになっています。一方で、そのAIが学習するための元となる情報は、人が現場に行き、体験しなければ生まれません。だからこそ、一次情報を取りに行くこと、そしてそれを発信することが、これからの時代における人間の役割だと捉えています。
そのうえで、私たちはロジックとアートを明確に分けて考えています。データ分析や効率化といったロジックの部分はAIを活用し、表現や創造といったアートの部分に人が集中する。この分業によって、クリエイターの価値を最大限に引き出せる体制を構築しています。
事業転換と組織化──個人からチームへ進んだ転機
――これまでのキャリアについて教えてください。
もともとは個人事業主としてビジネスをスタートしました。2018年に高校卒業と同時に事業を始め、中国から商品を輸入して販売する物販事業と、書籍の要約を行うライティング事業の2つに取り組んでいました。当初は物販が主軸でしたが、並行してライティングにも携わる中で、コンテンツを通じて価値を届ける仕事の面白さを感じるようになりました。
――これまでの中で印象的だった出来事や転機について教えてください。
大きな転機となったのはコロナ禍です。輸入が止まり、在庫が届かない状況が続いたことで、物販事業は実質的にストップしてしまいました。そのときに軸を移したのが書籍要約の事業です。ちょうどその分野が広がり始めていたタイミングでもあり、需要の高まりとともに事業として成長させることができました。
そこからさらに仕事が増えていく中で、自分一人のリソースでは限界があると感じるようになりました。ただ、当時は組織運営の経験がなく、どのようにチームをつくればよいのか分からない状態でした。そこで、一度企業に入り、実際の組織の中で運営を学ぶことを選びました。
その経験をもとにチーム化を進めていきましたが、最初は思うようにいかず、試行錯誤の連続でした。それでもトライアンドエラーを重ねながら、自分なりの組織の形を模索し続け、最終的に法人化へと至りました。この一連の流れが、自分にとって最も大きな転換点だったと感じています。
クリエイターの才能を最大化する組織づくり
――組織運営で大切にしていることを教えてください。
重視しているのは、クリエイターの才能を最大限に引き出す環境づくりです。従来の編集プロダクションでは、執筆だけでなく文字起こしや入稿作業など、多くの業務を一人で担うケースが一般的でした。しかし現在は、AIによって代替できる業務も増えています。
そのため、文字起こしやアイデア出しの補助といった部分はAIを活用し、クリエイターが本来集中すべき表現や企画に力を使えるようにしています。一人で考えるのではなく、AIと壁打ちすることで発想の幅も広がると感じています。
もう一つ大切にしているのが、フラットな組織文化です。上下関係を強く意識するのではなく、誰もが率直に意見を言える環境をつくることを意識しています。私自身も「社長」と呼ばせることはせず、全員が対等な立場で関わることを大切にしています。
クリエイターにとって作品は強い思い入れのあるものだからこそ、フィードバックは慎重に行う必要があります。一方で、作品がお客様の利益に繋がるかどうかは別軸で判断しなければなりません。その両方をバランスよく伝えながら、チームとしてより良いアウトプットを目指しています。
認知拡大フェーズへ──組織構築から次の成長段階へ
――今後の展望について教えてください。
これまでは、組織の基盤づくりに力を入れてきました。創業からの1年間は、外に向けた発信よりも、社内の体制を整えることを優先してきた期間です。AIと人の役割を分けた仕組みや、組織文化の構築に時間をかけてきました。
その中で、記事制作や取材のノウハウを蓄積し、イベント運営など新たな領域にも取り組んできました。小さなトライアンドエラーを積み重ねながら、再現性のある形に落とし込めてきた感覚があります。
今後は、その基盤をもとに認知を広げていくフェーズに入ります。これまではあえてメディア露出を抑えていましたが、これからは自社メディアの運用や広告、今回のような取材などを通じて、存在を知ってもらう機会を増やしていきたいと考えています。
組織としての型ができたからこそ、ここからはそれをスケールさせていく段階です。これまで積み上げてきたものを外に広げながら、より多くの企業やクリエイターと関わっていける状態をつくっていきたいと考えています。
仕事が最大の原動力──新しい体験が創造力を広げる
――リフレッシュ方法について教えてください。
正直なところ、仕事そのものが一番のモチベーションになっています。自分が考えたものが記事や動画、イベントとして形になる瞬間は、何よりも楽しいと感じます。その感覚があるからこそ、継続して取り組めているのだと思います。
一方で、それだけでは視野が狭くなってしまうとも感じています。表現の幅を広げるためには、新しい体験やインプットが欠かせません。そのため、旅行には積極的に行くようにしています。
――大切にしている価値観について教えてください。
特に意識しているのは、まだ行ったことのない場所に行くことです。一般的な観光地ではなく、少しニッチな場所や環境に身を置くことで、これまでにない視点やアイデアが生まれると感じています。実際に、自然の中での体験や見たことのない景色が、後の表現に繋がることも多くあります。
こうした体験を通じて得た感覚が、コンテンツ制作にも活きてきます。アウトプットの質はインプットの量と質に左右されるものなので、これからも新しい体験を積み重ねながら、自分自身の表現を広げていきたいと考えています。