子どもが子どもの声を受け止める。特定非営利活動法人CTFが育てる「居場所」と「未来」
特定非営利活動法人CTF 理事長 横山 シシファ美麗 氏
特定非営利活動法人CTFは、子ども達が直面している様々な問題に子ども達自身が問題解決を試みることを目的とし、子ども達が主体となって運営しています。子ども同士だからこそ生まれる近い距離感を大切にしながら、目指しているのは、学校や家庭だけではない居場所をつくり、そして笑顔と挑戦の輪を広げていくことです。
目次
学校でも家でもない、もう一つの居場所をつくるために
――現在の活動内容について教えてください。
現在行っている活動は、不登校の子どもや障害のある子ども達、そして普通に学校に通っている子どもが半分半分くらいで集まり、スポーツアクティビティやさまざまなイベントを通して交流するものです。その全ての企画運営は、子ども達が行っています。
活動に参加した事をきっかけに、学校に戻れたり、社会とつながることを目指して活動しています。
――どのような思いを込めて活動を続けているのでしょうか。
海外生活を約9年送り日本に戻った時、日本国内の年々増え続ける35万人以上の不登校や1週間に10人という小中高生の自殺の数にショックを受けました。
そんな現状の原因を真剣に考えると共に、少しでも変えたいと思いこの活動を始め、手探りですが、子ども達の生の声を聞きながら活動を続けています。
――他の支援との違いはどこにありますか。
一番大きいのは、子ども達だけで運営しているところだと思います。大人が与えた環境の中ではなく、子ども達自らが考え、行動する。最初から決まった活動があるわけではありません。
子ども達が素直に発する「SOSや経験してみたい、挑戦してみたい、学びたい」という気持ちを聞きながら、いろいろな活動内容を計画しています。子ども目線で、子どもの気持ちをそのまま受け止めながら進められることが特徴です。
出会いが変えたもの。目の前の一人から始まった挑戦
――活動を始めるきっかけになった出来事はありましたか。
最初は、子ども達の声をリサーチする事を目的としたNPO法人の計画でした。しかし、ある日地元の児童館で出会った小学4年生の子どもの存在が大きく方向性を変えました。その子は、人と目を合わせるのが苦手で、人と関わること自体怖い様子でした。
でも、一緒に遊び始めると少しずつ話すようになって、気づけば笑っていました。最初は「こんにちは」も言えなかった子が、「おはよう」「今日も遊ぼうね」と言ってくれるようになったのです。そこで、やはりスポーツなどを通して顔を見ながら取り組む活動の大切さを感じました。
――そこから見えてきたことは何でしたか。
その児童館の2階には自立支援センターがあり、不登校や障害のある子どもたちとも沢山出会い、そこでリアルな問題を耳にする事になりました。
多くの子ども達が、いじめや家庭問題、障害を受け入れてもらえない環境など個々の努力でどうにもならないことが見えてきました。それなら、自分たちで望む環境を作ってしまえば良い!それをきっかけに毎週2回の活動を始め、そこでは皆んなが人との距離にも抵抗がなくなり、色々なことにチャレンジできると分かり、この活動をもっと広げたいと思うようになりました。
――活動を続けるうえで大事にしていることは何ですか。
私たちの活動は、ただの子ども達の逃げ場にしたいわけではありません。子どもたちの将来を考え、夢ややりたいことに対して、どんな経験を積めば良いか、またどんな資格を取れば良いのかなどを一緒に話し合ったりもします。
大人もアドバイザーという形で関わっていて、多様なお仕事の方々が集まっています。子どもたちにはまだ見えにくい世界を紹介してもらい、興味に合わせて「こんな世界もあるよ」「こういう資格もあるよ」とアドバイスをもらうことも活動の一部としていて、子ども達の未来に繋がる事をとても大事にしています。
子ども同士だからこそ届く声がある
――子どもだけで団体を運営するなかで、壁にぶつかることはありましたか。
子どもだけのNPOで、全員が未成年なので、「子どもにはできないよ」と言われることもたくさんありました。
銀行口座を開くまでにもすごく時間がかかりましたし、そういう意味ではつらい思いもしました。でも、自分がやらなくてはいけないと心から感じた事なので、諦めずに頑張りたいと思って続けています。
――判断の軸としているものはありますか。
一つは、参加してくれる子どもたちの安心できる居場所をつくることです。周りに合わせるのではなく、自分らしくいても受け入れてもらえる場所にしたいです。そして、みんなの将来につながる活動でありたいと考えています。
活動の中で子どもたちが興味を持ったことを大切にして、その「やりたい」を現実に近づけていくことをとても意識しています。
――絶対に譲れない思いを挙げるとしたら何でしょうか。
笑顔ができるまで諦めないことだと思います。色々なバックグラウンドを持つ子ども達が集まっています。なかなか信頼できる関係を築くことは簡単ではありませんし、活動の中でつらいこともあります。でも、そこで止まらずに、自分も周りも笑顔になるまで諦めない。それが一番大事にしていることです。
離れていても、思いは近くにある
――組織の運営やメンバーとの関係で大切にしていることを教えてください。
今は岩手県から沖縄県まで、15人の子どもたちが集まっています。
メンバー同士では、自分の思いや悩み、変えたいと思っていることを遠慮なく言える場所をつくりたいと、ずっと思っています。
県外のメンバーとの関わりは、離れての活動なので皆んなが無理のない範囲で繋がり、でも、いつでも相談できたり、チャレンジしたいことを一緒に応援してくれる仲間がいるという安心感と関係性を大切にしています。
――コミュニケーションはどのように取っているのでしょうか。
年齢も住んでいる場所もそれぞれ違うので、時間が合うときにやり取りをしています。沖縄のメンバーは、できる限り対面でミーティングを行っています。そして、大きなイベントがあるときはLINEなどで「この活動をやりました」「これをやってみたい」と共有しています。
県外のみんなとは、予定が合うときZoomで話しています。
――新しいメンバーに求めることはありますか。
そこまで厳しい条件はありません。不登校だった経験がある子もメンバーに含まれています。自分の辛い経験を誰かを笑顔に変える活動につながるかもしれませんし、何かを変えたいという意識やみんなが「楽しい」「やってみたい」という気持ちを持っていて、さらに自分だけではなく他の子どもたちのことを考えられるなら、入ってくれたらとても嬉しいです。
より多くの子どもの声を受け取れる仕組みへ
――今後、挑戦していきたいことは何ですか。
現在は沖縄での活動が中心なので、もっと広いエリアの多くの子どもたちの声を聞きたいと思っています。そのために、子どもたちの声を統計や数字として表せるシステムづくりをしたいです。
アプリのような形を考えていて、不登校の子どもたちは学校のアンケートでは声が届きにくいこともあるので、今の子どもたちが関わりやすいSNSのような形で、全国の子どもの声を集められる仕組みをつくりたいです。
――その構想には、どんな意味がありますか。
なかなか、少数の子どもの声は大人に届きません。もし、多くの子ども達の声が数字で見え、統計化できたら今の現状を打開できる可能性が出てくるのではないかと信じています。そして、今ある活動を広げながら、学校や行政とも協力体制を築き、より多くの子どもたちが参加しやすい形を整えていきたいと思っています。
実際に今も学校や支援センターから「こういう子がいるのですが、参加してもいいですか」と連絡をいただくこともあります。
――ご自身のリフレッシュ方法についても教えてください。
お散歩や、自然に関わるアクティビティです。悩みやストレスがあっても、そうした時間で全部リセットしています。沖縄は自然が多いので、泳ぎに行ったりしながら、自然と関わることが一番のリフレッシュ方法になっています。