声を拾い、課題を解決し、笑顔の花を咲かせる。「八方よし」で築く、必要な瞬間に、必要な支援が届く社会
ヒトアンド株式会社 代表取締役 板垣奏穂氏
24時間365日、多言語対応の対話型音声ヒアリングAIを活用し、組織内の「見えない声」を可視化するヒトアンド株式会社。代表の板垣奏穂氏が歩んできた道は、決して平坦なものではありませんでした。自身が経験した「ひとり親予備軍」という苦境、そして冷蔵庫が空になるほどの絶望。その原体験から生まれたのは、「困りごとが深刻化する前に声を拾い上げる」という、テクノロジーと優しさを融合させた新しい支援の形でした。本インタビューでは、AI事業と、家族問題のインフラを目指す「じりつドットコム 」という2つの軸、そして板垣氏が描く未来の社会像について話を伺いました。
目次
「声を拾い上げ、課題解決の花を咲かせる」対話型音声ヒアリングAIの可能性
――まずは、ヒトアンド株式会社の現在の事業内容と、掲げられているビジョンについてお聞かせください。
私たちは、多言語対応の対話型音声ヒアリングAIを活用した、組織課題解決につながるサービスを提供しています。これは、従来のアンケートやチャットボットとは異なり、AI側から音声で能動的に話しかけ、相手の回答に対して深掘りしていくものです。
例えば、従業員の方々とのコミュニケーション不足に悩む経営者様や、顧客の本音を可視化したいサービス業の方々にご活用いただいております。また最近では、営業担当者の日報代わりにAIと対話していただき、文字起こしされたものを要約したり、カレンダー連携するなどして業務効率化につなげるといった取り組みも始まっています。
弊社のロゴは、8つの「吹き出し」が集まって一つの「花」を形作っています。「声が集まって、課題を解決し、そこに笑顔の花が咲く」という想いを込めています。24時間365日、誰にも言えない悩みや、顕在化していない課題をいち早くキャッチできるインフラでありたいと考えています。
「もやしを食べて生き延びた」原体験が経営者への道を拓いた
――板垣様が経営を志したきっかけ、そしてこれまでのキャリアについて教えていただけますか。
きっかけは、私自身の「ひとり親予備軍」としての経験です。元々は仙台で管理栄養士をしていましたが、結婚後の転勤で東京へ来ました。そのわずか半年後、夫が一時失踪したことをきっかけに、突然ひとりで子供を育てることになったんです。
当時は、書面上は「ひとり親」ではないため、行政の支援も保育園の入所点数も足りない。仕事を探すにも預け先がなく、預け先を確保するには内定が必要という、まさに「鶏が先か卵が先か」の負のループに陥りました。貯金も底をつき、1歳の子供が食べ残したもやしを食べて生き延びるような日々を過ごしました。
この時、「本当に困ってから声を上げるのでは遅すぎる。困る前段階で声を拾い上げる仕組みが必要だ」と痛感しました。その後、一般社団法人で無料相談窓口を運営する中で、お勤めされている老若男女の多くが、悩みや課題が深刻化して初めて声を上げるケースを多く見てきました。問題が大きくなる前に早期介入できる仕組みをビジネスとして持続可能なものにしたい。その想いが創業の原動力です。
多言語対応AIで「言葉の壁」を越え、八方よしの組織運営へ
――組織の運営や、今後の展望についてはどのようにお考えでしょうか。
来年度から技能実習制度が大きく変わり、外国人労働者の方々が転職しやすくなります。ここで懸念されるのが、言語の壁によるコミュニケーション不足から、理由が分からないまま離職してしまうケースです。
弊社のAIは多言語に対応しており、母国語で本音をヒアリングできます。また、各企業のマニュアルを読み込ませ、対話形式で教育を行うことも可能です。日本人従業員だけでなく、外国籍の方々の声も大切に拾い上げることで、「離職が起きにくい構造」を当たり前にしていきたいですね。
私が大切にしているのは「八方よし」という概念です。お客様、従業員、そのご家族、自社、未来、環境、子どもたち、そしてステークホルダー。この8方向すべてが幸せになる経営を目指しています。3年後には上場準備に入る規模まで成長させ、社会的な信用をさらに高めていきたいと考えています。
家族問題のインフラ「離婚の窓口」への挑戦
――AI事業とは別に、新たにメディアプラットフォームも立ち上げられるそうですね。
「じりつドットコム 」というプラットフォームを作っています。これは、離婚を推奨する場所でも、無理に止める場所でもありません。「離婚が頭をよぎった時」にまず訪れる場所です。
これまでは支援者側にならないと繋がれなかったNPOや行政サービス、専門家の方々と、当事者がダイレクトに繋がれる場を目指しています。ここにヒアリングAIを掛け合わせることで、ユーザーが抱える言語化できない不安を整理し、最適な解決策へ導く仕組みを構築中です。衣食住に「職」と「預け先」のソリューションを加えた総合的なサポートインフラとして、家庭問題における安心のネットワークを広げていきたいです。
バレエと子供たちの時間が、次なる挑戦へのエネルギー
――お忙しい日々の中でのリフレッシュ方法や、趣味などはありますか。
週末はできるだけ子供たちと過ごしています。小学3年生の長女がバレエ(踊る方のバレエ)を習っているのですが、実は私も触発されて一緒にバレエを始めました。土曜日の午前中はレッスンに通って体を動かしています。
あの「もやし時代」を共に乗り越えた娘と一緒に成長できる時間は、私にとって何よりの癒やしであり、エネルギーの源です。
――読者の方へメッセージをお願いいたします。
私は、離職や家庭崩壊が起きにくい構造を「当たり前」にすることを目指しています。 経営において、売上や利益はもちろん重要ですが、それだけでは人はついてきません。 「八方よし」——お客様、従業員、そしてその先にいる子どもたちまで。 すべての声に耳を傾け、課題解決の花を咲かせていきましょう。 もし、組織の中の「小さな声」に不安を感じているなら、私たちが力になります。