木と向き合い、人と向き合う――有限会社吉田木工所が目指す“100年企業”への挑戦
有限会社吉田木工所 代表取締役 石井庸介氏
有限会社吉田木工所は、オーダー家具の製造販売を中心に、建具やキッチン、ウッドデッキなど木工製品全般を手がける会社です。創業は昭和37年。さらにその母体となる事業は1947年に始まり、長年にわたり地域に根差したものづくりを続けてきました。現在は家具製作だけでなく、現場での加工や設置工事まで一貫して対応し、多様なニーズに応えています。本記事では、代表取締役の石井庸介氏に、会社の強みや経営への想い、今後の展望について伺いました。
目次
木工全般に対応する“何でも相談できる”存在
――現在の事業内容について教えてください。
当社はオーダー家具を中心に、建具やキッチン、ウッドデッキなど、木工製品全般を手がけています。家具がメインではありますが、扉や引き戸、開き戸といった建具関係も多く扱っています。さらに、表面に化粧材を貼った家具やシステムキッチンのような製品など、木工に関わるものは幅広く対応しています。
木工業界では「建具専門」「家具専門」などジャンルを分けている会社も多いのですが、当社はあまり区切っていません。木に関することで困っている方がいれば、できる限り力になりたいという想いでやっています。
――御社ならではの強みはどのような点でしょうか。
家具を作るだけでなく、現場での加工や設置工事まで対応できる点ですね。例えば特注家具の場合、現場に合わせて微調整しないと収まらないケースがあります。そうした時に、現場加工や取り付けまで一貫してできる会社は意外と少ないんです。
大工さんは大工さん、家具屋は家具屋と分かれていることが多く、その間を誰が担うのか困っている現場も少なくありません。当社はその両方の役割を担えるので、「どこに頼めばいいか分からない」と相談をいただくことが多いです。都内の業者さんから依頼をいただくこともあり、こうした対応ができる会社は珍しいのだと思います。
幼少期から身近にあった“吉田木工所”
――会社を継ごうと思われたきっかけを教えてください。
祖父はもともと木型職人で、そこから家具づくりを始め、製造と小売の両方を展開していきました。
私は子どもの頃から工場や店舗で遊んで育ちました。配達用のトラックに勝手に乗り込んで現場まで行ってしまったり、工場の屋根を走り回ったり、本当にやんちゃでしたね。高校生になるとアルバイトとして手伝うようになり、大学時代も土日に会社を手伝っていました。
住宅関係の会社で4年ほど働いた後、父から「戻ってこい」と言われて28歳で入社しました。直感的に、いずれ吉田木工所で働くことになるだろうとは感じていました。
その後、東日本大震災の頃を含め会社としてさまざまな出来事があり、母が代表を引き継ぐ形になりました。そして現在は、私が代表として会社を担っています。
“人として正しいか”を経営判断の軸に
――経営する上で大切にしている価値観を教えてください。
経営について教わる環境があったわけではなく、手探りで学んできました。そんな中で、自分の軸になっているのが「倫理」です。
「倫理法人会」で学ぶ中で、「企業に倫理を、職場に心を、家庭に愛を」という考え方に強く影響を受けました。また、「稲盛和夫」氏の『生き方』という本も大切にしています。
もちろんお金は大事ですし、利益を出さなければ会社は続きません。ただ、迷った時には「人として正しいか」を基準にしたいと思っています。どちらの道を選ぶべきか悩んだ時に、人が喜ぶ方、人として誠実な方を選ぶ。そのためには経営の勉強だけでなく、心の勉強も必要だと思っています。
コミュニケーションを深めるために本社を工場へ
――社内コミュニケーションで大切にしていることは何でしょうか。
当社には小売部門と製造部門があります。これまでは本社が店舗側にあり、工場とは離れていたため、コミュニケーションが業務的になりがちでした。
そこで現在は、本社機能を工場側へ移しています。ものづくりの中心は現場ですし、職人との距離をもっと近づけたいと思ったからです。職人3名は親族ではなく、店舗側は親族中心なので、なおさら日々のコミュニケーションが重要だと感じています。
忙しくてなかなか実現できていませんが、みんなで食事に行く時間なども大切にしたいですね。現場で一緒にご飯を食べるだけでも、良いコミュニケーションになります。
――どのような人と一緒に働きたいと考えていますか。
やはり素直でガッツのある人ですね。今は特に現場で家具を設置したり加工したりする人材を求めています。
技術があるに越したことはありませんが、若くて元気があれば後から学べます。それよりも、「この会社で早く貢献できるようになりたい」という意欲が大事だと思っています。結局、最後は内面なんですよね。
地域と未来へつなぐものづくり
――今後の展望について教えてください。
経営理念の中に「心のこもったものづくりを通して人々の笑顔づくりに貢献する」という言葉があります。その前提には、地球環境を大切にするという考えがあります。
例えば、樹齢30年の木を使った家具なら30年以上使ってほしい。樹齢100年の木なら100年使ってほしい。代々受け継いでいけるようなものづくりをしたいと思っています。
また、地域貢献としてワークショップにも積極的に参加しています。子どもたちにものづくりの楽しさを知ってもらいたいんです。IT化が進む時代ですが、手作業のものづくりは簡単にはなくならない仕事だと思っています。
今年も芸術系のイベントと連携し、ワークショップを行う予定です。そうした活動を通して、地域の子どもたちの視野を広げたり、「ものづくりって面白い」と感じてもらえたら嬉しいですね。
現在は会社の体制を見直しながら、特注家具や現場対応をより強化しているところです。ショールーム販売を続けながらも、時代に合わせた形へ変化していきたいと考えています。そして最終的には100年企業を目指したいです。
“覚悟”を持って未来へ進む
――最後に、経営の中で譲れない想いを教えてください。
私は4代目になります。これまで先代たちが残してくれたものを大切にしながらも、会社のあり方は変えていかなければいけないと感じています。
その中で一歩踏み出せずにいた時期もありました。でも今は、自分が代表として覚悟を持って決めた道を進まなければいけないと思っています。
反対されることがあっても、「こちらの道の方が会社や人の幸せにつながる」と信じたなら進む。その覚悟を持たないと、100年企業にはなれないと思うんです。
人のため、そして自分たちのためになる道を考えながら、これからも前に進んでいきたいです。