鹿児島発のスパイスカレーで新たな食文化を創る――VOULが追求する再現性とカルチャーづくり
株式会社VOUL 林田 和則氏
株式会社VOULは、鹿児島を拠点にスパイスカレー専門店を展開する企業です。鹿児島産の食材を活用したスパイスカレーを提供し、現在は3店舗を運営しています。小麦粉を使用しない独自のカレーづくりに加え、ストリートカルチャーの空気感を残しながら、アートや音楽、空間づくりにも力を入れる同社。本記事では、林田和則氏に事業へのこだわりや経営の考え方、今後の展望などについて詳しく伺いました。
目次
鹿児島の食材を活かしたスパイスカレーへのこだわり
――現在の事業内容について教えてください。
当社では、スパイスカレー専門店を運営しています。現在は3店舗を展開しており、主なお客様は一般のお客様です。
基本的には店舗に足を運んでくださるお客様に支えられながら事業を続けており、店舗営業が事業の中心ですが、病院向けのお弁当やふるさと納税の返礼品、お歳暮やお中元といった形でご利用いただくこともあります。
――VOULならではの強みはどのような点でしょうか。
鹿児島を拠点としていることから、鹿児島産の食材や黒豚など地域の素材を積極的に使用している点が大きな特徴です。
また、当店のカレーは小麦粉を一切使っていません。スパイス本来の香りや風味を活かしたカレーづくりを行っている点もポイントです。地元の食材とスパイスを組み合わせながら、自分たちらしい価値を提供していることが強みだと思っています。
やりがいを求めて起業、経営の道へ
――起業されたきっかけを教えてください。
私は、もともとは会社員として働いていました。飲食業界ではなく、引越し業界で十数年勤めていましたが、そのなかで、「何のために働いているのだろう」と考えるようになったんです。生活のために働くことはもちろん大切ですが、それだけではなく、もっとやりがいを感じられることに挑戦したいという想いが強くなっていきました。
そうした気持ちが積み重なり、自分で事業を立ち上げる決断をしました。
――創業から現在までを振り返っていかがですか。
当社の創業は、2014年の年末です。これまで、決して順調なことばかりではありませんでした。
オープン当初の勢いが落ち着いたあとは、お客様がほとんど来ない時期もありました。日曜日にもかかわらず来店数が極端に少ない日もあり、非常に苦しい時期があったことも、よく覚えています。
それでも、自分たちのカレーを信じて改善を続けてきました。味を見直しながら試行錯誤を重ね、少しずつ積み上げてきた結果が今につながっていると思います。
再現性を追求する組織づくり
――現在の組織体制について教えてください。
従業員は、非正規雇用を含めて20名弱です。社員が3名おり、そのほかはアルバイトやパートスタッフが各店舗を支えています。
店舗数が増えるほど、自分一人で管理できる範囲には限界があります。そのため、それぞれのスタッフが責任を持って運営できる体制づくりを進めています。
――組織運営で大切にしていることは何ですか。
最も重要なのは、再現性です。本店で食べたカレーと別店舗で食べたカレーの印象が違ってしまうと、お客様の信頼形成につながりません。味や辛さ、盛り付けだけでなく、接客や店舗の雰囲気も含めて一定の品質を保つ必要があります。
店舗運営では、小さな妥協が積み重なりやすいものです。しかし私は、その積み重ねがお店の質を下げてしまうと考えており、だからこそ、細かな部分まで確認しながら運営しています。
成長の鍵を握る小規模店舗モデル
――今後、力を入れていきたいことを教えてください。
現在注力しているのは、福岡の店舗です。2026年2月にオープンした店舗で、約6坪、カウンター8席ほどの小規模な店舗となっています。
小規模店舗として実験的な意味合いもありましたが、ありがたいことに多くのお客様にご来店いただいています。この規模感でも十分に成立するのであれば、今後の出店モデルとして大きな可能性があると考えています。
――今後の展望についてお聞かせください。
まずは、国内で店舗数を増やしていきたいと考えています。現在3店舗ですが、5年後には最低でも5店舗程度まで拡大したいです。県外展開も進めながら、状況が整えば海外出店も視野に入れています。
もちろん、経済状況や為替など外部環境もありますので、無理をせず着実に進めていきたいと思っています。
カレーだけではない――カルチャーを届ける店づくりを
――事業を通じて実現したいことはありますか。
単純に売上だけを追い求めるような経営はしたくありません。もちろん利益は必要ですが、それ以上に店舗を通じてカルチャーを発信したいという想いがあります。
そのため、店内にはローカルアーティストの作品を飾り、知人が制作した楽曲を流しています。また、可能な限り地域の食材も活用しています。
こうした要素は主役ではありませんが、一つひとつが重なることで、お客様の体験価値につながると考えています。
――お客様にどのような体験を提供したいと考えていますか。
料理だけではなく、その時間全体を楽しんでいただくことが理想です。
「美味しいカレーを提供すること」は大前提です。そのうえで、接客や空間、音楽なども含めて、総合的な満足感を提供したいと思っています。食事を終えたときに満足していただけており、「また来たい」と思っていただけるお店でありたいですね。
現場主義を貫きながら未来へ挑戦する
――休日はどのように過ごされていますか。
経営者という立場上、365日仕事のことを考えている感覚があります。平日はほとんど現場に立っていますし、経営やバックオフィス業務も行っています。家族とキャンプやアウトドアに出かけることはありますが、そのあいだも、店舗から連絡が入れば対応しています。
常に店舗の状況を把握しながら動くことが、自分にとっては自然な働き方になっています。
――現場に立ち続ける理由を教えてください。
再現性を確認するためです。実際に現場に立つことで、味やサービス、店舗の雰囲気などを自分の目で確認できます。経営だけでは見えないことも多いため、現場との距離感は大切にしています。
――最後に、経営者や起業を目指す方へメッセージをお願いします。
やりたいことがあるのであれば、覚悟を決めて挑戦するべきだと思います。
経営には保証がありません。売上が厳しい時期もありますし、思うようにいかないこともあります。それでも続ける覚悟がなければ乗り越えることは難しいでしょう。
私自身、お客様がほとんど来ない時期を経験しました。しかし、その状況を変えるためには日々の積み重ねしかありません。自分たちの商品やサービスを信じて改善を続けることが大切です。
根気強く継続していれば、少しずつでも前に進めるはずです。その積み重ねが事業を成長させる力になるのだと思います。