クラシック音楽を、知的好奇心が交わる社会への入口に

一般社団法人VariOrchestra 代表理事 佐藤 瑛吾 氏

武蔵野市を拠点に活動する一般社団法人VariOrchestra。代表理事の佐藤瑛吾氏は、指揮者・ヴァイオリニストとして自ら舞台に立ちながら、平日は戦略コンサルタントとして働く異色の経歴を持ちます。約5年間の任意団体としての活動を経て、昨年10月31日に法人化。若手演奏家を中心とした約50名のコアメンバーを擁し、演奏の質と柔軟な発想力、そしてビジネスコンサルタントとしての課題起点の視点を強みに活動しています。佐藤氏が見据えるのは、演奏会の開催だけではありません。クラシック音楽を入口に、文化や芸術、語学、金融などへの知的好奇心を育み、人生を楽しむ余裕のある人を日本社会に増やすことです。

武蔵野市から、クラシック音楽を日常へ

――現在の事業内容について教えてください。

当法人は、オーケストラとして演奏活動を行っています。現在は約50名のコアメンバーを中心に、定期演奏会の開催や企業イベントの受託などに取り組んでいます。

事務所は武蔵野市に置き、主催する演奏会も武蔵野市民文化会館を拠点にしています。地域との関係も大切にしており、地元の教育機関や音楽教室などとの連携も進めているところです。幼児や児童を含む若い世代に音楽に触れる機会を届けることも、取り組みの一つです。

課題から考え、音楽の価値を設計する

――企業イベントでは、どのような価値を提供していますか。

単に演奏を届けるのではなく、依頼主のブランディング、関係者への訴求、参加者同士の関係構築まで含めて価値を設計しています。依頼された曲をそのまま演奏するのではなく、イベントの目的や参加者、与えたい印象を確認し、選曲や編成を提案します。

必要に応じて、予算とのバランスを見ながら編成人数を増やすことも少なくありません。演奏によってどのような効果が生まれ、投じた費用に対してどのような価値を得られるかを考え、顧客の課題を起点に最適な形を組み立てています。

――他のオーケストラや演奏派遣サービスとの違いは何でしょうか。

まず、国内外でのコンクール実績を持つ若手や一流の音楽大学の学生・卒業生を起用し、高水準の演奏を比較的抑えた費用で提供できることです。

また、クラシックやオペラ作品からテレビドラマのテーマ曲まで幅広く対応でき、編曲家が演奏時間に合わせて再構成する柔軟性もあります。

依頼内容をそのまま受けるのではなく、コンサルティングの視点から顧客の目的や課題を捉え、解決につながる選曲や演奏内容を提案できる点も強みです。

構想を形にするための法人化

――オーケストラを立ち上げたきっかけを教えてください。

昔から、多様性のあるオーケストラを組織したいという思いを持っていました。特定の人だけが決定的なリーダーシップを取るのではなく、誰もがリーダーになり得る組織を目指していたのです。

異なる組織から、それぞれリーダーとなるような人を集め、誰が中心になっても演奏が成り立つ状態を目指していました。活動を続ける中で、自分が以前取り組んでいたオンライン英語塾などとのつながりも含め、音楽を起点に教育や教養の領域を循環させるという構想が明確になっていきました。

――経営判断で大切にしている価値観を教えてください。

自分たちが目指す世界観や、本質的に追求したいものを崩さないことです。そのため、むやみに外部へ業務を委託せず、法人の価値観を深く理解しているメンバーに営業などを任せています。

大衆に迎合するのではなく、自分たちから価値を発信し、それに共感する人を少しずつ増やしていくことが理想です。アニメやゲーム音楽と安易に連携するのではなく、クラシック音楽の本質を追求します。それは演奏だけでなく、経営においても一貫しています。

協賛やスポンサーについても、資金を提供してくれるのであれば誰でもよいとは考えていません。価値観に合わない提案や干渉を受けるくらいなら、自分の資金を投入する。合わなければ断るというのは、経営の中で譲れない部分です。

権限を渡し、価値観でつながる組織

――組織はどのように運営していますか。

演奏メンバーにはコアとなる人がいる一方で、全員が固定されているわけではなく、少しずつ循環しています。5年ほど付き合いのある人もいれば、数年、半年という人もいます。

演奏会のたびにコアメンバーから意見を聞き、演奏の水準や法人の方向性に合っているかを確認しています。その積み重ねによって、価値観に合う人を少しずつ増やし、組織を大きくしています。

――メンバーとのコミュニケーションで意識していることはありますか。

最終的な判断は私が行いますが、コアメンバーには一定の権限を渡しています。演奏家との連絡や出演料の交渉なども任せ、それぞれが判断できるようにしています。

権限があることで、メンバーはオーナーシップを持ち、自分のこととして動いてくれます。集客、演奏家の調整、スポンサーとの関係づくり、デザイナーの紹介など、役職を明確に決めるよりも、それぞれができることを担う形です。組織全体がアメーバのように動いている感覚があります。

演奏会を、知的好奇心が交わる場所へ

――オーケストラを起点に、どのような事業を構想していますか。

演奏会は数百人から千人ほどが一つの場所に集まり、約2時間を共有するイベントです。そのため、リアルな接点として大きな可能性があります。

将来的には、演奏会に集まる方々へ、語学教育や金融・投資の講座、ビジネス、デザイン、アートに関する情報を届けることも考えています。語学に興味はあっても音楽には接点がなかった人など、異なる関心を持つ人たちを同じ場につなげたいのです。

既存のクラシック音楽市場だけを対象にするのではなく、文化や教養全般に関心を持ち、そこに価値を感じてお金を払う人へ届けていきます。オーケストラを中心に、さまざまな知的関心が循環するプラットフォームをつくることが、大きな構想です。

休みを区切らず、複数の仕事に向き合う

――普段は、オーケストラの運営に専念しているのでしょうか。

平日はコンサルティングファームで働きながら、法人を経営しています。それに加えて、外部での指揮やヴァイオリンの仕事も行っています。そのため基本的に休みはなく、そもそも休みをどう定義するか、という感覚に近いかもしれません。

時間ができたときには、ジムで筋力トレーニングをしたり、プールで泳いだり、サウナへ行ったりしています。また、人と話すことも好きなので、飲みに行くことも多いです。

お酒は幅広く飲みます。ビール、ワイン、ウイスキー、日本酒、焼酎、ジン、カクテルなど、特定の種類に限らず楽しんでいます。

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