地域に物語を生み出す観光拠点へ――芦別スターライトホテルが描く新たな挑戦
株式会社芦別スターライトホテル 代表取締役 田中 慎二氏
北海道・芦別市で宿泊施設や温泉施設を運営する株式会社芦別スターライトホテル。コロナ禍での分社化を機に誕生した同社は、新たな顧客層の開拓に取り組んできました。本記事では、代表取締役の田中慎二氏に、創業の経緯や経営への想い、組織づくり、そして今後の展望について伺いました。
コロナ禍を乗り越えるために生まれた新会社
――現在の事業内容や会社設立の経緯について教えてください。
当社は宿泊事業を中心に、温泉施設やグランピング施設などの運営を行っています。もともとはグループ会社の一施設として運営されていましたが、2020年のコロナ禍をきっかけに分社化され、新たな会社としてスタートしました。
観光業界全体が大きな影響を受ける中で、「先が見えないコロナ禍で生き残る形をつくろう」という判断から、それぞれの施設を独立させる方針が取られたんです。私は当時、芦別スターライトホテルの支配人を務めており、「社長を引き受けてほしい」と声を掛けていただきました。
先行きが見えない状況ではありましたが、まずは目の前の困難を乗り越えようという思いで引き受けました。
――会社として掲げている理念やビジョンについて教えてください。
現在グループ全体で掲げているビジョンは「多彩ならしさで北海道を沸かす」ことです。地域の文化・資源など各施設がもっている「らしさ」を生かしながら、スタッフの魅力を発信し、多くのお客様に届けていきたいと考えています。
また、ミッションとして掲げているのが「地域に物語をつくる」という考え方です。人口減少が進む中でも、地域とお客様、地域住民と施設、お客様同士など、さまざまな人のつながりを生み出すことで、新しい価値や交流を生み出していきたいと思っています。
実際に移住して働くスタッフも増えており、地域との新たなつながりが少しずつ生まれていると感じています。
巡ってきたチャンスを逃したくなかった
――代表に就任した経緯を教えてください。
私は、自ら起業して社長になったわけではありません。分社化のタイミングで、オーナーから直接声を掛けていただいたんです。「力を貸してほしい」と言われた時、こんな機会はそう何度もないと思いました。
せっかくいただいたチャンスなら挑戦してみようと考えたんです。会社の力になりたいという思いもあり、代表就任を引き受けました。
――経営者として大切にしている価値観を教えてください。
経営判断で最も重視しているのは、お客様にとってプラスになるかどうかです。宿泊施設ですので、修繕や設備投資、新サービスの導入など判断を求められる場面は多くあります。その際に最初に考えるのは、「お客様が喜んでくださるか」という一点です。
もちろん新しい取り組みにはリスクもあります。しかし、お客様に価値を提供できると感じたものについては、まず挑戦してみるという姿勢を大切にしています。お客様にとってプラスになることであれば、これからも積極的に取り入れていきたいですね。
若いスタッフの挑戦を後押しする組織づくり
――組織運営で大切にしていることを教えてください。
社長という立場になると話しかけづらい雰囲気が出てしまうことがありますが、私はできるだけそうならないよう意識しています。実際に当社は20代のスタッフが多く働いている職場です。若いスタッフが気軽に意見を言える環境をつくることが大切だと思っています。
私自身が細かく指示を出すタイプではありません。「これをやりなさい」「あれをやりなさい」と管理するのではなく、スタッフが自分で考えて行動することを重視しています。お客様のためになる提案であれば、まずやってみようというスタンスですね。スタッフの意見はできる限り尊重したいと考えています。
――採用で重視していることを教えてください。
ホテルのリニューアル後は若い世代やファミリー層をターゲットにしているため、若いスタッフの存在は欠かせません。
採用で重視しているのは、新しいことに挑戦したい気持ちです。 ホテル業界の中で新しいサービスを考えたい、新しい集客方法に取り組みたいという人には大きなチャンスがある職場だと思います。
現在は地元だけでなく、北海道外からも仲間を迎えたいと考えながら採用活動を進めています。さまざまな経験や発想を持つ人材とともに、これからも新しい挑戦を続けていきたいですね。
観光の中心となり、地域全体を盛り上げたい
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
ありがたいことに、今ではさまざまな地域からお客様に来ていただけるようになりました。ホテルを目的に足を運んでくださる方も増えています。
ただ一方で、芦別という地域全体の観光目的をさらに増やしていきたいという思いがあります。ホテルに宿泊した後、別のエリアへ移動される方も少なくありません。 だからこそ、地域の中にもっと魅力的な目的地を増やしていきたいと思っています。
例えば新たな飲食店の展開や、地域施設の運営などにも挑戦してみたいですね。将来的には、観光協会や商工会議所など地域のさまざまな団体とも連携しながら、観光の中心となる企業を目指していきたいと考えています。
――その実現に向けて、どのような課題や取り組みを考えていますか。
実現には課題もあります。新しい施設運営には繁忙期と閑散期の両方を見据えた戦略が必要であり、地域からの信頼も欠かせません。
地域の観光に関わる取り組みは、私たちだけで完結するものではありません。観光協会や行政、地域の事業者の皆さまなど、多くの方々との連携が必要になります。
そのためにも日々学び続けながら、ホテル運営だけでなく地域全体の活性化に貢献できる存在を目指していきたいですね。そして将来的には、「観光に関することなら芦別スターライトホテルに任せたい」と思っていただける環境をつくっていきたいと考えています。
自分らしい学びを続けながら、次の挑戦へ
――これまで影響を受けた人物や、大切にしている考え方を教えてください。
私が大きな影響を受けたのは、これまでお世話になったオーナーの方々です。以前の私はどちらかというとネガティブな性格でしたが、前職のオーナーから多くのことを学び、考え方が大きく変わりました。物事を前向きに捉える姿勢や困難への向き合い方など、経営者としてだけでなく人としても大きな影響を受けています。
現在のオーナーも尊敬する存在で、発想力や行動力には今も学ぶことが多くあります。
――休日の過ごし方やリフレッシュ方法を教えてください。
休日も観光業から完全に離れることはあまりありません。温泉やホテル、飲食店などを利用し、お客様の立場でさまざまな施設を体験しています。良いと感じたことは、自社のサービス改善のヒントとして持ち帰ります。
新しい体験そのものが楽しく、それが結果的に仕事にも活きています。最近は以前ほど乗れていませんが、スポーツバイクで景色を眺めながら走る時間も好きです。何も考えず自然の中を走ると気持ちがすっきりします。
これからも学びを重ね、お客様に喜ばれるサービスづくりや地域の魅力向上につなげていきたいですね。